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【実話】私はパン君の母親でもなければチンパンジーの飼育係でもない

私が変わらないといけないと思ったきっかけのひとつ

【パン君事変】

パン君登場

私は3人チームの仕事のリーダーをやっている。
3人のうち1人の有能なメンバーが異動でいなくなった。
代わりに入ってきたのが
チンパンジーおじさんのパン君だった。

このパン君は一見、真面目に一生懸命仕事をする。
もの覚えも要領もあまりよくないものの
真面目にやっていればいずれ仕事は
マスターするだろうと思っていた。
単純な手作業が多くて簡単な仕事内容だからだ。

天才チンパンジーパン君と私


パン君とは?
日本人男性(パン君は私の脳内アダ名)
私と同じ非正規、
勤続10年以上(推定)
年齢49歳。

パン君とはコミュニケーションがとりづらい
パン君は「はい」とか「わかりました」とか
一切言わない。
無言で「ウン!ウン!」とうなずくだけ。

まるで天才チンパンジーと飼育員のやりとりである。
「パン君わかったね?」「ウン!」
「パン君やるんだよ?」「ウン!」
と同じ返事の仕方。
49歳の大人が仕事の返事で
黙ってウンウンうなずくだけっておかしくないか。

無言でウンウンだと
分かってるのか分かってないのか分からない上に
なんだかバカにされているように感じるので
「声出して返事しないと分からないからやってください」
といちど注意してみた。

するとパン君は注意をしたその一瞬だけ
「ハイ…」小さく声を出して返事をした。
しかしまたすぐに無言で「ウン!ウン!」の
チンパンジーの返事に戻った。
それにしても返事の仕方なんかを注意しないと
いけないことがバカバカしい。


さらにこのパン君はなにかミスをしても
決して謝らない。指摘されてもヘラヘラ笑っているのみ。
またはムスッとして無言を貫く。
その上誰かに何かしてもらっても
「ありがとう」も言わない。会釈のペコリすらしない。

この態度で49歳は驚いた
若い、というより幼く見える。頼りない。
そしてマスクをしているのに鼻が出ていて、
なおかつ鼻毛が3本出ていて
しかもそのうち1本が白髪。意味が分からん。

パン君の仕事ぶり

それにしても要領が悪く仕事が遅い。
紙をめくって枚数を数えるといった
単純な作業をするのに他人の倍の時間がかかっている。
しかも私や他のチームメンバーが
「こうしたらいいよ」
とアドバイスしてもパン君はやろうとしない

PCの操作などは何回教えても次の日には
リセットされていて覚えていない。
分からないという意思表示もしない。
メモとって!って言われてからメモをとる。
私が言ったことを一字一句同じ文言でメモを書く。
自分の言葉で書けないのだ。


パン君、少しは成長したかも…しかし…

パン君の態度と仕事ぶり
私も他のメンバーもパン君に対して
次第に不安と苛立ちを感じるようになってきた。
それでも辛抱強く丁寧に優しく仕事を教えてきた。
するとパン君は1ケ月もすると
要領は悪いものの、そこそこできるようにはなってきた。

ところが、
パン君の仕事のできなさ具合がどうもおかしい。
他のメンバーなら1~2時間かかる仕事を
パン君は5時間くらいかかっていた。
「何かトラブル起きたんですか?」
「ありませんフガフガ」
「何か難しかったですか?」
「いいえフゴフゴ」
難しくもない、トラブルもない普通の仕事が
他人の倍の時間かかるってどういうことなのか?

ある時、パン君に
「◯◯やってくれませんか」と作業のお願いをした。
ところがパン君は私をガン無視して
わざとらしく無言のまま時計を見始めた。
『今から始めたら時間ないですよ~フガフガ
ホントはやりたくないだけですよ~フゴフゴ』
と言わんばかりの態度だった。

コイツ、本当は分かってるのに
やりたくないからできないフリしてるだけ
なんじゃないか?


こんな人に、
というかこんなチンパンジーに
どうやって仕事ができるように教えろというのか?
・言葉が通じない(言うことを聞かない、無視する)
・常識がない(返事、感謝、謝罪もしない)
・成長しようとしない(したくないことから黙って逃げる)

自分のしたいことだけは
真面目に一生懸命仕事をしているだけに
タチが悪い

異動前のパン君と同じチームの人が言っていた
「あいつはもの覚えが悪いでしょ?人の言うことをぜんぜん聞かないし」
「あの人ああいう人だから何言ってもムダ」

やっぱり前からそうだった。
あちこちでトラブルを起こしていた。
厄介払いでウチに回されてきたんだ…

焦りと苛立ち

もうすぐ繁忙期に入る。
私は焦ってきた。
そしてパン君の態度にイラ立っていた。
このままパン君のワガママを許してしまうと
自分の仕事とパン君のフォローで
2倍の仕事量になるんじゃないかと
不安を感じていた。

私は要領が悪い人がダメだと言っているわけではない。

要領が悪くても真面目に一生懸命がんばる人に対しては
フォローは惜しまないつもりだ。
だが、自分のやりたいことだけ真面目に一生懸命やって
したくないことは他人に黙って押しつける
パン君のようなやり方は許せない

たまりかねて何回か課長や係長に相談した。
「パン君の態度に困っています。なんとかしてください。」

しかし課長も係長も
「困ったねぇ~。でも、ちょっと様子見ようか?」
と言われ、挙げ句放置された。
パン君は厄介払いで私のチームに放りこまれたのだから
当然だろう。
唯一ナンバー2の課長補佐だけが
「何かあったら自分に報告して」
と言ってくれたものの…
「パン君が言うことを聞きません。困っています。」
って言うのか?
感情だけで訴えても説得力がない。
上司連中は「様子を見る」という名目で
パン君を完全放置したも同然だ。

パン君に対する決心

もう分かった!上司はアテにならない。
今までは鼻毛が気持ち悪いから
本気でパン君と向き合うことは避けてきた。
しかし私が現状をなんとかするしかない。
パン君が逃げ続けるなら
やらざるを得ない状態にさせる。
それでダメだったら具体的に時間や作業量の数字を出して
パン君が役に立たない根拠を上司に報告するしかない。

そこでパン君への対策を考えた。
パン君の行動の傾向を探るため
まこなり社長の動画で見た
「人を4つのタイプに分類する」やつをやってみた。
(パン君分析結果)
・パン君はアナリティカルタイプ
・マイペースで自分のやり方にこだわり時間がかかる

(今までのやり方のダメなところ)
・もっと早くしてなどあいまいな指示を言う
・具体的に言わない
・あきらめて何も言わない

(対処法)
・具体的な目標(時間・達成具合)を提示する
・無視できないように指示を紙に書いて渡す
・できなかったら自分の言葉で
「次にどうするか」を言わせること
今までのペナルティは仕事を取り上げることだった。
それではパン君の思うツボ。

パン君は幼少期から現在に至るまで
おそらく母親からベッタベタに甘やかされてきたはずだ。
褒めてもらうのも当然
出来ないことをやらないのも当然
「パンくーん、ここにウ◯チしてくれるー?
できたんだねー?すごいねーえらいねー」
「パンくーん、またこんなとこにウ◯チしちゃダメでしょー?
仕方ないなぁもぉ。パンくんはこういう子だから」

自分からは何もせず何も言わず
他人が自分の望むものを持ってきてくれるのが当然で
パン君ができないことを頼むほうが悪い
だから出来なくてもパン君は謝る必要もない。
こうして感謝も謝罪もしないチンパンジーおじさんが育成された。


パン君よ、
いつまで他人に機嫌をとってもらって
おだててもらわないといけないんだ?
私はお前の母親じゃない。
ましてやチンパンジーの飼育係になった覚えもない。


チンパンジーをいくら調教しても人間には進化しない。
それはチンパンジー自身が進化しようとしないからだ。
チンパンジーを人間に進化させることなど
時間と労力の無駄。

パン君は今まで自分のイヤなこと、したくないことは
聞いてないふり、できないふりをして逃げ続けてきた。
しかし今回は逃げてもムダだということを分からせる。
「やらなければそれでいい」という昨日までとは違う。
私は絶対に譲歩しない。折れない。
パン君が具体的なアクションプランを言うまで
たとえ残業しようが何時間かかってもやるつもりだ。

パン君との対決①初戦

緊張で胃が痛い。
そして、怖い。

だっていくらチンパンジーでも相手は一応男性だよ?
ブチ切れて「キー!」とかなって暴れたら怖いやん…

勇気を出してパン君に指示を出す。
(パン君への指示1回目)
・この仕事を2時間以内に◯◯できる状態に完了させること
・赤文字で大きく書いて渡した
時間は多めに取った。
そんなに自分のやり方にこだわるなら
時間内に好きにやったらいい。

結果、パン君は全く時間を守る気なし。
いつも通りのノロノロ運転。
途中で様子を見たが何も異常はなさそうだったのに…。
一応「何かトラブルあったの?」とか
「難しかったの?」と聞いてみた。
本当はなにかあったかもしれないし。

「何もありませんフンゴー」
ふざけてんのかコイツ。

「時間内に終わらせてくださいって言いましたよね?
できないんだったらそう言ってください」

「がんばります(ボソッ…)」
絶対ウソだな。

初めてだしこんなもんか…
緊張する…もう胃が痛い…口から飛び出そうだ…
食欲なくなってきた…

ここで午前中が終了

午後もこれが続くのか…たまらない…

パン君との対決②これはヒドイ

(パン君への指示2回目)
・発送物を所定の場所に持って行ってもらう
・簡単な帳簿を書いて、行くだけ。
・〇時までに戻ってきてくださいと指示

他のメンバーだったら10分くらいかかるけど
多くみて15分くらいあればできるだろう…
結果
30分かかった。
これはひどくないか?いくらなんでもかかり過ぎだろう…

もちろん理由を聞く
「◯時までに戻ってきてくださいって言いましたよね?
なんでこんなに時間かかってるんですか?」

するとパン君、あろうことか
「もぉー!(怒)」と地団駄を踏むアクションをした。
無言で。
まるで子供。49歳の男が
今までパン君は感情表現らしいものをしてこなかっただけに
これには少し面食らった。
だが追求の手は緩めない。

「いつもやってる仕事じゃないですか?遅すぎませんか?」

ところが私が話してるのにパン君は全くこちらを見もしない。
ファイルの端っこを見つめてずっとグジグジいじくっていた
『ぼくなにもわるくないのに…はやくおわらないかな…』と
ふてくされる子供のようだった。

本気で気持ち悪かった。

「なんだコイツ?子供か?」

寒気がした。猛烈な怒りを感じた。
と同時に呆れかえった。


50歳にもなろうという大人の男が職場で
子供のようにふてくされだした…。

もうほんとにコイツはダメだ…。
こんなやつどうでもいい。
本気でキモい。

しかしここで引き下がるわけにいかない。
コイツは今までずっとこうやって相手を呆れさせて
嫌なことを自分に依頼させないようにしてきたのだ。

「どうして簡単なことなのにこんなに遅いんですか?」
ずっと黙ったままのパン君に
私は怒りを抑えつつもしつこく聞いた。

やっと答えが返ってきた。
パ「遅いって分かってるけど…遅くしかできないフガフガ」

なんなんだソレ?
遅いって分かってるんじゃないか!
いろいろアドバイスもしてるのに!
自分から何も聞かない、教えてもやろうとしない、
じゃあどうするんだ?

「~しかできない」って何だ!
どうしたらいいか分からないならまだしも、
「~しかできない」って?
なめてんのか、このチンパンジーめ!

私じゃもう手に負えません


「何かあったら報告して」
と言ってくれた課長補佐のところにパン君を連れていった。

「パン君に簡単な仕事を頼んだのに遅すぎて困っています」

課長補佐は以前からパン君の
わざと聞き流して逃げる戦法を見抜いているようだった。
「あいつはわざとやっている!
(パン君はできないふりをしているだけだ)」
おそらく他のチームからの苦情も聞いているだろう。
パン君の姑息さに怒り心頭に発していた

「遅いって分かってるなら早くやればいいんじゃないかな(怒)!?」

みたいな感じで課長補佐は軽く注意した。
しかし上司が話してるのにパン君は足をダラッとさせて
ふてくされて立っていた。
なんだその態度は。自分は悪くないとでも言いたげだな。
しかしパン君はずっとムスッとして何も言わなかった。

これ以上なにも話すことがない。
パン君はいつもとおりダンマリ
もうラチがあかない。

そんなことをしている間に終業時間が来た。
本日の業務終了

明日も多分同じことが起きる…。
これを続けたとしてパン君が劇的に成長するとは思えない…。
胃が痛い…気持ち悪い…。

一体いつまで続くのか…。

覚悟

でも私は絶対に、
折れない、譲らない。
パン君のやり方を認めてしまったら
結局パン君がやり散らかした仕事の
後始末を私がしなくてはいけなくなる。
上司は具体的に何もしない。
パン君はやり方を改めるつもりはない
ならば自分が動くしかない。

覚悟を決めた
パン君のためなどではない
自分のために、絶対にやり抜く


終わりはあっさりと訪れた

しかし私の覚悟もよそに
終わりはあっさりと訪れた。
次の日、緊張しつつも出社すると
パン君は来ていなかった。
頭痛がするので休みだそうだ。
そしてその次の日も来なかった。
課長に「パン君はどうしたのか」と聞いた。

「もう来ないよ!精神的に参ったんだって!」

精神的に参っただと?
それはこっちの話だよ!

パン君に厳しく接したのはあの1日だけだった。
たった1日で音を上げてバックレた。
甘ったれにも程がある。

そして仮病で休んだ1週間後、
パン君はノコノコと出社してきた。
私やチームメンバーに
バックレたことの謝罪は当然一切なし。
上司も私とパン君の間の不穏な空気を察知したのか
パン君はチームに戻らなかった。
しれっと他課に応援作業に行かされた。
そのまま繁忙期になりみんなが残業するなか
パン君はきっちり定時で帰っていた。
その後ゆるい仕事内容のゆるま湯の他課へと異動していった。
パン君は去った。

違和感の発生

これは一年くらい前の話
パン君を排除できたことで一応解決はした。
解決はしたもののずっと頭にひっかかっていた
もちろん後悔はしていない。
あの時点でとれる最適の手段だった。

しかしこの違和感は何なのか
誰かにパン君を排除したことを
承認してもらいたい気持ちがないわけじゃない

そして「このままではいけない」と思うようになった
パン君みたいになりたくない
誰からも信頼されない
せっかくの頭の良さを嫌なことから逃げ続けることにしか使わない
そんな人間になりたくない

やる気がある人は
ゆるま湯に浸かり続けようとする
チンパンジーの飼育係を任される
向上心なくゆるま湯に浸かり続けることを
容認するような会社
そこに居続ける限り
いくら自分を向上させて貢献しても
結局チンパンジーの飼育係にしかなれない。

ここから抜け出さないといけない
そのためには成長しなくてはいけない

UNCOMMON受講と他人の価値観を理解する

自分のマインドを成長させたい

そしてUNCOMMONを受講した

日々のワークで「他人の価値観を理解する」という項目があった。
価値観を理解…
頭では分かっているがどうしても
パン君のことが理解できなかった。

自分に置き換えて考えてもみた
今はもういなくなったパワハラ女課長のことを思い出した。
私が何を言ってもできないと決めつけて
感情的に叱責するだけだった。
話を聞いてくれずいきなり怒鳴られたこともあった。
笑うなと言われたこともあった。
もうそのパワハラ女課長には金輪際、心を開くまいと誓った。
私は仕事への自信を失った。

パワハラ女課長はヒドかった。
しかし仕事への私の考えが甘いのが悪かったのだ。

それならパン君にも多大に非があったぞ…
価値観を理解ってどうするんだ…?
相手のワガママを認めろってことか…?

霹靂の理解

そうしてUNCOMMON最終日
ある人のLT※を聞いていて
まさに稲妻に打たれたように
唐突に理解したのだった
※(ライトニングトーク・電光石火のような短時間スピーチ)


パン君はこういう人だったのか

その人のLTは少し異質だった。
他のグループメンバーはみんなやり方通りの
ゆっくりとした話し方のところ
その人は終始早口で内容もぎっちり詰まっていた。

もちろんそのLTの人が仕事が出来ないという意味ではない
以下は私の勝手な印象である。
もし違っていたらその人には申し訳ない。
その人はこだわりが強すぎる人だった。
ゆえに人に合わせること、内容を削ることができなかった。
そして常識を打ち破るすばらしい発想を持っていた。
自分のやりたいことや仲間を守るために
非凡なまさにUNCOMMONな夢を持っていた。
どうにもならない現状を打ち破るためには
非凡な発想をする人は必要な存在なのだ。
その人が自分のことを話してくれたので
私はそう理解できたのだった。

違和感の解消

パン君の価値観を理解するためには
パン君ともっと対話すべきだった

私は仕事の生産性を上げるという名目で
パン君を排除したかっただけだった。
パン君を分析して分かった気になっていた。
バカにしていた。
「(自分でも)遅いと分かってるけど遅くしかできない」
この言葉の意味を深く考えず
勝手にこういう人だと決めつけた。

私は被害者ぶって
「自分になにもかも押し付けられた」と思っていた。
それなのにパン君は自分勝手に振る舞っている。

私はパン君が妬ましかった。

パン君には本当は成長して欲しかった。
自分のやり方を貫いて欲しかった。

しかしパン君はいつも通り逃げた。 
私のやり方は否定された。


パン君は今まで成長を求められない環境にいた。
それなのに急に現れた生産性上等の変な女に命令されて
どうしていいか分からず精神的に参ったのだろう。
そしてゆるま湯へ逃げていった。
おそらく定年までぬるま湯に浸かったチンパンジーだ。
それまで会社にゆるま湯があればの話だが。

他人の価値観を理解する

このマインドが身にしみて分かった。
もちろん一年前の時点で
パン君と対話したところで
すべてが解決したわけではない。
あのパン君の口をこじ開けるのもひと苦労だろう。

ずっと抱えてきた違和感の正体は
あの時にベストを尽くしていない自分への反省
それだけだ

パン君には感謝している。


だが私は今もパン君が嫌いだ。



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