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厚底から薄底へ、そして厚底へと時代は巡る。

「よくそんな鉄下駄みたいなシューズ履いてんな。」

2011年3月にハーフマラソンを確か1時間40分をギリギリ切った後に、ラン友に言われたセリフ。その頃、履いていたのは、NIKEの初心者用ペガサスだったと思う。

2008年春から会社の同僚達にそそのかされて走り始めたけれど、正直、お金をかけてまでやりたい趣味じゃないし、まぁ、最低、ランニングシューズさえあれば出来るスポーツという認識だったので、当然、シューズは1足しか持っておらず、練習もレースもそれを履き、流石に1年に一回ぐらいは買い換えようってぐらいでいたレベルの私に向かって放たれたその言葉。

自分としては、それまでも特に不自由ないランニングライフだったのだが、そのラン友が、シューズ研究家の如く、滔々とシューズによってどれだけタイムが変わるのかを語るので、内心、”シューズでそんなに変わるかよ。”と疑っていたが、物は試しに、彼の勧めるアディダスの薄底シューズ・アディオス(日本名”匠”)を購入してみた。私に取っては、$100を超えるシューズを買うのはお初。でも、私は自分実験が結構好きなのだ。

結果、私は次々とあらゆる距離でPRを打ち出し、その年のNYCマラソンは、前年より17分速い3時間17分台でゴール。私とアディダス・アディオスの相性は最高に良かったのだ。
その以来、2014年11月のNYCマラソンを3時間10分台のPRを出した2ヶ月後、乳がんが発覚し、フルコース治療に入るまでの3年半は、まさにアディダス・アディオスと二人三脚で駆け抜けたランニングライフだった。

だが、時は流れ、10年前の薄底ブームが幻か?ってぐらい、今は超厚底の時代。私の愛するアディダス・ボストンやアディオスも昔の面影なく、全く別のシューズになった。

NIKEのヴェイパーフライ も自分実験好きから、2019年、清水の舞台から飛び降りる気持ちで自分へのクリスマスプレゼントとして買った。

初めて履いた感想は、”何じゃこりゃ”。
ボヨンボヨンと歩くだけで従来のシューズとの差は歴然。実際走ると、スピードを出せば出すほどに威力が発揮されるって感じである。
10キロ以下のレースでしか着用していないが、”ドーピングシューズ”なんて言われるのも分かるぐらい、今まで愛用してきたアディダスシューズで走った時とのタイムの差がすごい。

なんだかズルしているみたいで嫌だなぁ、という気持ちも湧いたのもあるが、履いて走った後の妙な脚全体や鼠蹊部の疲労が気になった。
そんな理由から、私のランニングライフに、ヴィパーフライが登場するのは、年に2回ぐらいの10キロ以下レースのみであったが、シューズというものは、履かなくても劣化すると言うし、今年になり、元来のケチケチ精神から、普段から履いてやろうと思いたった。
大体、世の中、厚底シューズばかりになってしまったので、自分も厚底に慣れないといけないと言う気持ちもあるし。

そこで、ハタと気付いた。厚底から薄底に変えて走った時の気持ちって、薄底から厚底に変えて走った時と同じなのかもしれない、と。

うわーっ、なんだか自分の足じゃないみたいに軽い。気持ちいい!

薄底に変えて、タイムが大幅に向上した時、私は、”ドーピングシューズ”、”ズルしている気がする。”、なんて思ったか?
単純にその時にテクノロジーを受け入れ、享受したのではないか?
当時も、薄底を履きこなすには、それなりの脚がないといけなかった。
今は、カーボン入りの厚底を履きこなす脚がないと怪我をするってのも
同じことなのではないか?

「よくそんな地下足袋みたいなシューズ履いてんな。」

と、今なら言われるのかもしれない。時代は巡る。
ランニングシューズも同じなのかもしれないね。







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