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小池都知事「東京大改革」は都民のためになるか?

ー特別秘書と東京都顧問の選任から予測するー

 『都民が決める。都民と進める。』を掲げ「東京大改革宣言」として都政の透明化、五輪関連予算運営の適正化、行財政改革の推進、都知事報酬の削減、特区制度の徹底利用を公約に、小池百合子氏が東京都知事になった。この公約通りに都政を実行していくのか。実行していくとしてそれが都民のためになるのかを予測する。ただし、都議会の開催前で都知事の施政方針が示されたわけでなく、予算案も発表されていないため、人事から推測する形であることをご了承願いたい。

同意がいらない人事にブレーン配置

 都知事の下のポストは副知事で、選任には議会の同意が必要である。副知事の任期は4年で前都知事の舛添要一氏が今年6月に選任したばかりである。現在4人いる副知事の誰かをやめさせ自分の側近を副知事に選任するなら、都議会で絶対的多数を占める自民党や公明党との対立や都庁職員の抵抗を生みかねない。というわけで副知事人事に手をつけず、他の方法をとった。それは特別秘書や東京都顧問という都議会の同意がいらない人事に自分のブレーンを配置する方法である。
 特別秘書の法的根拠は地方自治法で都は「特別職の指定に関する条例」で2人まで指定可能。指名されたのは元読売新聞記者の宮地美陽子氏と元都議会議員の野田数氏の2名。宮地氏について小池都知事は8月12日の定例記者会見で知事室とメディア、記者クラブの接点の旨の発言をしたことからメディア対応として指名したと思われる。舛添前都知事、猪瀬元都知事が任期途中で辞任に追い込まれた要因としてマスコミ報道があることから、マスコミ対策に重点をおくのであろう。

「日本国憲法無効」決議請願の紹介議員

 問題は野田数氏である。野田氏は2009年自民党公認で立候補し当選。2012年3月16日都議会文教委員会で2007年度と2008年度の入試で、服装や頭髪など外見で面接点などを改ざん、合格点を取った21人を不合格にした都立高校校長を懲戒免職にした東京都教育委員会の処分は重すぎる旨の質問などをし、自民党を離党。
 離党後、結成した会派である東京維新の会で日本国憲法が無効であることを確認し大日本国憲法が現存する都議会決議がされることなどを求めた【「日本国憲法」(占領憲法)と「皇室典範」(占領典範)に関する請願】の紹介議員になるなど、時代錯誤的考えを持つ人物である。
 野田数氏を特別秘書に指名することで都議会自民党と妥協しない姿勢をみせる効果はあるが、それ以外の都政に影響は出ないのだろうか。

W1024Q80_2012年6月8日日本国憲法と皇室典範に関する請願_PAGE0000

初めに選任した顧問は行財政改革のみ

 顧問の法的根拠も地方自治法で都は「顧問の設置及び運営に関する規則」で規定。2条で「都政運営のあり方について、進言し、又は助言する」、4条で「都政の基本的政策確立について、広い見識と経験を有する者のうちから知事が選任する」とあり、顧問の人数に規定はない。9月15日現在で14人の顧問を就任させていることから知事のトップダウンで都政を進めようという小池知事の姿勢が窺えよう。14人の顧問と小池氏とのつながりは選任時期が早いほど都知事との関係が深いと思われる。従って8月17日と8月18日に選任された10人の顧問がどのような経歴の人物か確認してみる。
 8月17日の就任は5人。顧問の統括は上山信一氏。大阪府特別顧問、大阪市特別顧問である。加茂修氏は弁護士で政府調達苦情検討委員会委員長。小島俊郎氏は愛知県政策顧問、名古屋市経営アドバイザー。坂根義範氏は都知事選で応援した若狭勝参議院議員が共同代表を務める事務所弁護士で原子力損害賠償紛争審議会特別委員。須田徹氏は公認会計士・税理士。
 8月18日に就任の工藤祐子氏は中央大学法学部教授、佐藤主光氏は経済財政諮問会議経済財政一体改革推進委員会専門委員、町田裕治氏は経営コンサルタント、安川新一郎氏はグレートジャーニー合同会社代表、山梨広一氏はイオン特別顧問。
 なお上山氏、町田氏、安川氏、山梨氏はマッキンゼー・アンド・カンパニー出身である。これらの顔ぶれを見れば公約の行財政改革の推進、特区制度の徹底利用は実行する気があり、大阪府等の例から都知事報酬削減も着手すると思われる。
 しかしながら、小池都政が都民の希望する方向に向かうとは限らない。行財政改革推進の立場の顧問ばかりで社会福祉専門の顧問がいない。都の世論調査で上位になる高齢者、防災、治安、医療・衛生などの課題に真剣に取り組むのか不安を抱かざるを得ない。

W1440Q75_2016年8月16日東京都顧問の選任及び委嘱について_PAGE0001

五輪予算・情報公開にも疑問

 五輪関連予算運営の適正化に関しても疑問がある。オリンピック申請ファイルで1000億が2015年には1550億を工事費上限となった新国立競技場問題が典型的であるが、五輪予算拡大の主因は建築費であり、施設建設はこれから本格化するのに建築専門家がいなくて対処できるのか。また都市計画の専門家もいない。神宮球場や秩父宮ラグビー場周辺の都市計画が変更され神宮の杜が再開発の餌食となる可能性があるというのに大丈夫なのか。
 都議会軽視の姿勢も危うさを感じる。都議会の頭越しに政策を決め、マスコミ対策により小池都政に批判的な記事は書けず、1枚開示するのに30円かかる東京都情報公開制度の改正に手をつけず、小池知事サイドの都合の良い部分ばかり情報発信される危険性はないのか。
 問題点を改善したにもかかわらず、調査した状況のまま「朝鮮学校調査報告書」をWEBに再度公開するなど少数者に配慮しない動きも見られる。選挙の時だけでなく、常に都政を監視していく必要があろう。

所出 『今、憲法を考える会・通信』第37号(2016年10月3日)

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