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神宮外苑地区再開発とスポーツの関係

 1964年のオリンピックメインスタジアムであった国立競技場は常設のサブトラックがなく、『公認陸上競技場および長距離競技路ならびに競歩路規程』第3条の「競技会にて開催できる競技会の種別の標準」に規定される「本連盟が主催する日本陸上競技選手権大会、国民体育大会等の全国規模競技会及び国際的競技会」が開催できる第1種公認競技場に該当しないことは明らかであった。

 そのためか、落選した2016年オリンピックは「晴海、霞ヶ丘の両地区について、敷地面積、各種法規制、交通アクセス、後利用等の観点から検討したところ、平成19(2007)年4月までに、霞ヶ丘地区でのオリンピックスタジアム整備は困難との結論に達し」、晴海に新規メインスタジアムを建設する予定であった。(注1)


 にも関わらず2020年のオリンピックで神宮外苑地区にメインスタジアムを建設することを強行。その口実としてメインスタジアムの収容人数8万人という数字を持ち出す。下の資料からも明らかなように収容人数8万人は必要条件じゃないのに。

国立競技場将来構想WGスポーツ部会資料。オリンピックでもラグビーワールドカップでもスタジアム規模は6万人とある。「他都市と比較し見劣りしないためには、8万が目標」との数字を一人歩きさせた責任は?

 これを実現する手段として都立明治公園と日本青年館をメインスタジアム建設敷地に編入。日本青年館はJSCの所有するテニスコートに移転(注2)同様に都立明治公園の代替地をJSCが用意しなければならないにも関わらず、マスコミ報道による世論形成がないのを良いことに都立明治公園の代替地を東京都に用意させた。『東京都住宅マスタープラン』で住宅の供給等及び住宅地の供給を重点に図るべき特定推進地区に指定され、公営住宅建替事業に指定されていた都営住宅である都立霞ヶ丘アパートを全部取り壊し、住民を神宮前、若松町、百人町と三箇所に分散して移転させた。にも関わらず移転代は通常の都営住宅の引っ越しと同額の17万1000円。

2015年5月に行われた都立霞ヶ丘アパート移転説明会資料から。
平成27年度の移転料単価は171.000円です。と明記されている。

 新国立競技場建設のために迷惑をかけたはずのJSCやスポーツ関係団体は都営住宅の住民に対しお見舞い金の一つも払わないという自己中心的態度に終始した。

 その後も、新国立競技場建設敷地にするために都市計画変更した際に都立明治公園でなくした旧こもれび広場部分に建設された「JAPAN SPORT OLYMPIC SQUARE」一帯を都立代々木公園の土地区画整備事業に伴う代替地としてJOCに77億834万6694円で平成30年7月19日に売却(30建用管第358号)。

公益財団法人日本スポーツ協会会長伊藤雅敏氏と東京都建設局長西倉鉄也氏との間の
『土地売買契約書』

 フリーマーケットやデモ会場として印象深い都立明治公園霞丘広場はオリンピック・パラリンピック競技大会用地等の目的で『一時使用目的のための土地の無償貸付契約書』を毎年締結。オリンピック終了後は建物を収去して土地明け渡しが可能だったものを(注3)、令和2年2月24日に令和4年4月1日から令和66年11月30日まで62年8ヶ月間もの期間、年8億2200万円で貸す『定期借地権設定契約』に変更。

 マスコミが報道し反対の世論形成を図らない限り、JSC、スポーツ団体の自己中心的で横暴な姿勢は変わらないだろう。

第3条に令和4年4月1日から令和66年11月30日までの62年8ヶ月の定期借地権を締結したことが分かる。なぜこのような期間になったのかは不明。
第7条に賃料の支払がある。1期2億550万で4期分あるから一年は8億2200万になる。

注1ー「」内の記載は『2016年オリンピック・パラリンピック競技大会招致活動報告書』特定非営利活動法人東京オリンピック・パラリンピック招致委員会(2010)P36から引用

注2-『国立霞ヶ丘競技場周辺地図』

2014年、渋谷区議会五輪・パラリンピック対策特別委員会に提出された資料。国立霞ヶ丘競技場敷地を東京都所有地の明治公園と財務省所有地の日本青年館まで拡大したことが分かる。日本青年館の移転先は日本スポーツ振興センター所有地の国立競技場西庭球場。

注3ー『一時使用目的のための土地の無償貸付契約書』

平成28年から令和4年3月31日までほぼ一年ごとに更新されていた『一時使用目的のための土地の無償貸付契約書』第4条2項に建物収去土地明け渡し条項があったことが分かる。

(出典 2022年7月24日「オリンピック災害」おことわり連絡会の集会原稿。字数制限により省略部分を復活し表記を一部変更。資料を追加した)

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