朝のコピー短歌(2019.10.23)信用を


信用を積み重ねたし長財布

シワひとつない諭吉が5人


いわずもがな、1万円札のことである。

フリーになる2年前の、30歳からはじめた習慣のひとつ。

だいたいいつも5人の諭吉がいる。1人かけると補充する。

クレジットカード払いや電子マネーがここまで普及していなかった時代。

仕事の打ち合わせが終わらず、代理店から自宅まで深夜タクシーで帰る。

急に会社の後輩やクライアントと飲みに行くことになる。

外出先で地震が来ても交通費5万円までの距離は移動できる。

現金を持っていることが安心につながった時代の名残りともいえる。

いつも諭吉が5人いれば、

だれかにお金を貸すことはあっても借りることはなかった。

フリーになってまる15年経ったけれども、一度も。

お金を借りること、だれかの時間を盗むこと

少しずつだとしても信用という貯金を減らしていく、そう思っていた。

時間泥棒になることは、ダメなんだけど、どうしてもあるので、

せめてお金くらいは・・・と思っていたらこうなった。

新札でなければいけない理由はないけれど。

きれいなお札を受け取ると気持ちがいい。だれでもそうだから。

新札だと、ただシワがないだけのお札とは違って、

どこかピシッとしているのだ。諭吉の顔にも威厳が見える。

そのぶん、財布のなかで端っこが三角にでも折れ曲がっていたときは、

すくなからずショックを受ける。


1万円札の顔も、1984年に聖徳太子から福沢諭吉になって40年、

2024年には渋沢栄一に変わる。

栄一さんは5人もいなくてもいいかな、

シワがひとつくらいあってもいいかな。

時代も変わっていくのだから。

5人の諭吉には、たぶんもう少しお世話になります。

いとありがたし


〜みそひとメモ〜

もうひとつ、諭吉についてはつくりたい短歌があって。

隠し諭吉。

財布に鎮座する5人の他にも、手帳とスマホのケースに1人ずつ諭吉がいる。

これは、お財布忘れたサザエさんになったときも、

駅で気づいても取りに帰らず、そのまま取材や打ち合わせに行けるように。

愛情を込めてこの2人を「隠し諭吉」と呼んでいる。

6文字なのが、短歌初心者のわたしには、なんとなくうらめしい。

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