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イヴェルカーナとその音楽について語る

先日、モンスターハンターストーリーズ2のオトモン人気投票企画に参加した。
ストーリーズ2に登場する91種類のオトモンから好きな1体を選んでTwitterで投票する企画だが、1位から3位までに投票した人からそれぞれ1名ずつ抽選で『大好きオトモン賞』が選ばれる。
私は軽い気持ちで『イヴェルカーナ』に投票した。

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選ばれてしまった。

通知を受け取ったときは本当に信じられなかったし、イヴェルカーナへの票数をざっくり予測して倍率を調べたときには卒倒しかけた。何より賞品欄を読んだときには明日死ぬのかと思った。

開発デザイナー描き下ろし、イヴェルカーナと自分のプレイキャラのツーショットイラスト色紙

ムービーを眺めて「自キャラの顔がいい…」と日々呟き、あまつさえ自分でイラストを描いて満足していた身に、突然公式からの供給が降り注ぐ。仮にもファンアートを描かせて頂いている身からすれば『神』から。『自キャラ』が。やばい。しかもちょうど自キャラとカーナの絵を描いてた時期に(この絵は無事に後日完成した)。なんだこれ。夢か。

色紙はもう間もなく届く。ずっとそわそわしている。一生劣化しないよう飾らねばと思って額縁を調べているうちにカバー素材にまでこだわりはじめオーダーメイド額縁を注文しかけて、実物もないのにサイズ間違えたら終わりじゃんと気づいて慌てて取りやめるなどしている。この度初めて調べたが、額装、奥が深すぎる。


さて、そんな感じで浮かれている私が最近思うこと、「お礼がしたい」。
ここまですごいものを頂くのであれば、何かしら返せるものは返したい(もちろんこんな私に返せるものなどたかがしれているだろうが)。

クリエイターに対して消費者ができる一番のお返しは、作品に対し「好きだ」と言うこと、それを周りに広めることだと思う。作者に届く・届かないに関わらず。私も絵を描いたときはいいねとRTと感想が何より嬉しい。

ということで本記事を書くに至った。以降、イヴェルカーナに投票するに至った経緯に始まり、『ストーリーズ2』におけるイヴェルカーナ、そして『アイスボーン』の音楽の素晴らしさについて語る。ほんの少しでもストーリーズ2に、アイスボーンの楽曲に、そしてイヴェルカーナに興味を持つ、もしくはそれらの素晴らしさを思い出すきっかけになってくれたら嬉しい。


ストーリーズ2におけるイヴェルカーナ

誰に投票するのかを考えたとき、実はカーナ一択ではなかった。
ストーリー攻略中一番お世話になったのは多くのプレイヤーの例に漏れずナルガクルガだったし、ジンオウガやタマミツネあたりもずっとパーティで活躍してくれていた思い入れのあるモンスターだ。

数多い候補の中、投票の決め手になったものは大きく2つある。
1つは公式による発売前の告知ツイートだ。

このツイートのあまりに綺麗な写真が、それまで「ストーリーズもうすぐ発売だけどどうすっかな〜〜〜アクションが好きでモンハンやってんのにコマンドバトルはな〜〜〜」と考えていた私に、「好きなモンスターに乗って各地を旅する楽しみ」を全力で叩きつけて購入に踏み切らせたのだ(友人とラスボス予想やキャラ性格予想で大いに盛り上がったというのも大きいが)。
以降、「カーナに乗って飛びたい」というのが私の一つの夢になった。これほんといい写真だな。

2つ目は、実際にゲーム内でイヴェルカーナに相対したときの演出だ。
カーナを始めとして、古龍(テオ・テスカトルやクシャルダオラなど)は基本的にクリア後にしか会えないのだが、並みいる古龍の中でも、カーナは特に演出が凝っていた。クリア後限定の高難度ダンジョンに潜り、雪山の洞窟フィールドでカーナ攻略のヒントとなる祖父の手記をこつこつ集め(あれみんな写真撮ったりメモ取ったりしたよね)、ようやく深部にて対峙する。その際、吹雪の向こうから姿を表すムービーが挿入され、

イヴェルカーナの専用戦闘BGMが流れる

この演出に歓喜したプレイヤーは多いのではないだろうか。私は泣いた。本当に涙ぐんだ。
ストーリーズでは基本的にメインシリーズのBGMが使われない。もちろんストーリーズのオリジナル曲は良曲揃いだが、古龍や看板モンスターなどはやはり原作での専用戦闘曲と脳内でしっかり結びついているため、寂しい思いをすることも多々ある(実は一度だけ、ムービーに原作の専用戦闘曲由来のフレーズが練り込まれていて私のテンションが限界突破した瞬間があるのだが、その話は長くなるので割愛)。
そんな中、アイスボーンの看板モンスターであるイヴェルカーナだけは、アイスボーンで実際に使われていた曲とともに堂々と現れた。こんなに嬉しいことがあるだろうか。その後、一手でも間違えれば容赦なく全滅するような緊迫感ある戦闘を手記を読みつつこなしている間、ずっとこの曲が流れていた。
ストーリーズの仕様上、倒したらすぐ仲間に…ということはないのだが、この戦闘が本当に印象深かったため、早くカーナの卵を探しに行きたい、育成したいという思いが強まったのだ。

発売前とクリア後、これら2つの出来事が強く印象に残っていたため、私はイヴェルカーナを選んだ。ここ最近もせっせとイヴェルカーナを育成し、雪山近辺を乗り回してはきゃっきゃしている。


さて、こうして考えると、イヴェルカーナへの思いは「見た目の美しさ」もさることながら「音楽の良さ」が多くを占めていることがわかる。特に私はサントラを聴き込むタイプのゲーム音楽オタクなので、プレイ中ではなかなか聴くことのできない部分も存分に堪能し、オーディオコメンタリを読み込み、狩猟音楽祭のようなコンサートイベントも全力で楽しんでいる。

ゲーム中にしか聴かないという層にも、この音楽の良さを知ってもらいたい。そこで、以下イヴェルカーナのメインテーマと、それに関わる何曲かについて語る。もし可能であるなら、該当曲を聞きながら読んでほしい。

他、Apple MusicやSpotifyなどの各種ストリーミングサービスでも配信されている(YouTubeにアップされているものは、大半が非公式なのであまり踏んでほしくない。公式にお金を落とそう)。

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イヴェルカーナの音楽について

イヴェルカーナ専用の戦闘曲はなんと6種類も存在する(乗り状態や逆追跡などのアレンジも含めれば12種類とも言われるが、あくまでサントラでの曲目準拠でカウントしている)。

通常戦闘曲『壮麗纏いし銀盤の貴人』をはじめ、イベント戦闘で一度しか聴けない曲や強化版となる歴戦王の専用BGMなど多様なアレンジが存在し、そのどれもが共通のフレーズを持ちつつも異なる雰囲気を醸し出している。イヴェルカーナのどの側面を強調するのか、どのようなムードを演出するかによってアレンジを変えるその技量、本当に素晴らしいと思う。
ぜひともこれらを聴き比べてみてほしい。


1. 『冷気を統べる者の片鱗』

イヴェルカーナと初めて対峙するとき限定の戦闘曲。
ゲームでは邂逅ムービーに静かなピアノとストリングスのフレーズが重なり、戦闘体勢に入ると同時に音楽が一気に盛り上がる構成になっている。

このときのイヴェルカーナは全然本気を出していない。氷纏い状態ですらない。一定以上ダメージを与えると一旦戦闘が終了し「やったか…?」ムービーに移行、氷を纏って形態変化し、主人公を圧倒して飛び去る。

前哨戦専用という難しいポジションにある曲だが、イヴェルカーナ=ピアノのイメージをしっかり印象づけつつも、どこか盛り上がりきらない、底知れない、不安定な感じをプレイヤーに与え、後の本格戦闘に繋げる役割を素晴らしく果たしている名曲だと思う。特に中盤、一度静かになってピアノが最前面に出るピアノソロ(?)パートでは黒鍵が多用され、一筋縄ではいかない感じが存分に伝わる。イントロの穏やかさ・美しさも、強者の余裕という感じがあってぞくっとさせられる部分だ。

一度しか聴けないのが本当に勿体ない。後述するメイン曲のフレーズもいろんな部分に散りばめられていて、しかし主張しない形になっているので、メイン曲を聴いたあとに改めて聴くと発見が多いと思う。


2. 『セリエナの攻防』

イヴェルカーナからセリエナを守るイベント戦闘限定の曲。こちらも基本的に一度しか聴けない。
前述の『〜片鱗』と比べると、穏やかさ・不安定感が薄れて勇壮なイメージが全面に出ているのが特徴的だ。

「てってってけててっ てってけててっててて」というカーナ戦の基本リズムが出てくる点も含めて、後述するメイン戦闘曲にかなり近い印象がある。一方で大きな違いとして、たとえばメイン曲Aメロの「てーっててーっててーっててーっててーーー」のフレーズが「てーっててーっててーーー」で止まっていたり(伝わってくれ)、ピアノを前面に押し出すパートがなかったりする。
また、サビに『継がれる光』のフレーズが使われているという点ではメイン曲と共通しているが、そちらでは大サビの部分が使われているのに対し、この曲で使われているのはAメロ部分だ。それも原曲ではピアノで儚げに弾かれているフレーズが金管楽器(多分)で勇敢に演奏されている。

つまり、どちらかというと『セリエナの皆で戦っている』という側面をより強調したアレンジだと考えられる。タイトルも、『冷気を統べる者〜』という前述の曲に対してこちらは『セリエナの攻防』。主人公はセリエナの皆、『カーナの曲』ではなく『カーナとの戦いの曲』なのだ。
「てーっててーっててーーー」でフレーズが止まっているところも、あと一歩踏み込まない、まだもう一段階変形を残しているという感じがする。次のメイン曲を聴いて初めてパズルのピースが埋まる感じ。


3. 『壮麗纏いし銀盤の貴人/イヴェルカーナ』

メインの戦闘BGM。イヴェルカーナといえばこれ。
サントラのオーディオコメンタリにて『ネルギガンテが魔王であるなら、イヴェルカーナは女王』と書かれているように、印象的なピアノのフレーズで飾られた本曲は鋭さと同時に高貴さ、美しさも表現されている。

プレイヤーは基本的にこの曲を延々と聴くことになるので、今まで挙げた2曲に比べれば認知度は圧倒的に高いだろう。しかし、ぜひ一度前述の2曲を聴いた上でこの曲に戻ってきてみてほしい。『〜片鱗』のピアノに代表されるカーナの美しさ、『〜攻防』の勇壮なオーケストラに代表されるカーナとの戦いの緊張感、両方の特質を併せ持っていて、かつそれらの到達点・完成形として散りばめられたフレーズが完成されていることがわかるのではないかと思う。

アイスボーンを代表する名曲なので、今更私が何か語る必要もない。

余談だが、私はジムでのランニング用BGMとしてこの曲を愛聴している。
スピード感・緩急のある曲調だが一方で、テンポチェンジや転拍子などは一切ない。リズムがわかりやすくキメどころもはっきりしているため、自分の足でリズムを刻んでいる感じで楽しくなる。音も涼やかで心地いいが、緊迫感もある。
ランニング勢はぜひとも一度この曲に合わせて走ってみてほしい。もちろん走る速さは人によってまちまちなので、テンポ合わなかったらごめんね。


4. 『壮麗纏いし銀盤の貴人/イヴェルカーナ: The Chase』

ところでワールド以降追加されたこの"The Chase"という追跡専用BGMのシステム、最高だと思う。
戦闘を一定時間続けていると、モンスターがエリアを移動して逃げる。一時的に戦闘が中断され小休止となるこのエリア移動だが、移動する瞬間にBGMがぶつりと切れないよう、通常戦闘曲からシームレスでこの追跡専用曲に移り変わるのだ。曲のメインフレーズや雰囲気はそのままに、少し抑圧されてテンションを落ち着けるようなアレンジがされつつ、しかし次の戦闘再開に向けて熱は失わせない
ゲーム中ではあまりに自然に展開するため、意識して聴いたことがないプレイヤーも多いかもしれない。しかしサントラでじっくり聴いてみると、様々な工夫が感じられたり、ときに予想外の展開をしているものもある(例えばヴァルハザクのチェイス曲、初めてサントラで聴いたときには相当驚いた)。ぜひとも一度意識してみてほしい。

さて、このカーナ専用チェイス曲も、アレンジ元となる『壮麗纏いし〜』とほぼ同じフレーズが使わているが、途中転調によって少し雰囲気が変えられている点が特徴的だ。一度音階が下がり、そこから少しずつ上っていってメイン曲のBメロフレーズに繋がり、ループする。全体的に抑えめながら、メインにしっかり繋がるよう、盛り上がりの階段を作っているような印象がある。

狩猟音楽祭、モンハンBGMのオーケストラコンサートにてイヴェルカーナの曲が使用される際、このチェイス曲も大きな役割を果たしている。
ゲーム音楽というのは基本的に終わりがない。あくまでBGMなので、ずっとループされる前提で作られている。なので、このようなコンサートで演奏される場合、『展開』や『終わり方』のアレンジが重要となっている(こういった編曲をオーケストレーションと呼ぶらしい)。
イヴェルカーナの曲は登場以来2年連続で演奏されているが、この編曲にはチェイス曲も一部組み込まれているのだ。メイン曲が大サビに入る前、なんとそのままチェイスに以降して少しトーンダウンする。そしてチェイス後半の盛り上がりから自然にメイン曲のサビ前に再び戻り、大サビで締める。単に1ループ分演奏する以上の起伏が生まれて、大サビの盛り上がりを増幅させている。

カーナ曲以外にも、狩猟音楽祭ではチェイス曲を練り込んだ素敵なアレンジが数多く演奏されている。こういった原曲との違い、終わり方などに注目して聴いてみるのも音楽祭の大きな楽しみの一つだと思う。

5. 『歴戦王イヴェルカーナ』

ここまで大仰に語っておいて大変申し訳ないのだが、この曲についてはしっかり聴き込めていない。サントラに収録されていないからだ。
頼むからアイスボーンの追加コンテンツのサントラを出してほしい……この曲然り、ムフェト、アルバ、ミラ……

曲名について、『THE END OF ICEBORNE』だという話があったが、ソースが定かではない。もしかしたら歴戦王ネルギガンテの曲『THE END OF THE WORLD』にかけて一部のプレイヤーが言っているだけかもしれないので、ここでは採用しなかった。もし公式のソースがあれば差し替えるので教えて下さい。

戦闘中にしか聴けていないので詳しいことは語れないのだが、やはり一聴したときの予想外の静けさ、荘厳さには驚かされた。全体的に音が重々しく、アレンジ元よりもむしろ落ち着いた感じがするのだ。
序盤は原曲の骨子をそのままに、しかしかなり低めに転調された状態で始まり、以降何度か転調を挟んで少しずつ音が上がっていく。そしてメインテーマのフレーズのあと、下降調のピアノフレーズと共に一度静かになる。しかし、一転光が差すかのように転調して明るい印象になったメインフレーズが少しずつ音圧を増していき、イヴェルカーナ曲の基本リズムとともに曲の初めに戻る。

歴戦王イヴェルカーナのクエスト名、『立花が静かに眠るなら』。この文言に相応しい、静かながら荘厳で、『終わり』を感じさせるアレンジだった。頼むからサントラ……頼むから……

6. 『歴戦王イヴェルカーナ: The Chase』

サントラ!!!!!頼むから!!!!!!!!!!十全に聴けないのがとてもつらい。

王カーナ曲にも使われていたが、シンセ?なのか、アタックはピアノに似ているが鐘のような響き方をする楽器が素晴らしい。通常カーナのChase曲と同じフレーズが使われているのも聴こえる。でもこれ以上わからん。公式以外がアップロードしているYoutubeもあまり触れたくない。噂によると通常カーナのイントロ部分が入るとか。ゆっくり聴きたい。サントラ……

0. 『前触れ』

最後に、厳密にはイヴェルカーナの曲とは言えないが、この曲には触れておきたい。実はこれ、サントラ内では珍しいムービー専用曲である。

『前触れ』は、アイスボーンの最初も最初、タイトルコールムービーで使われている。一度しか聴かない曲であるが、印象的なシーンに合うよう展開に様々な工夫が凝らされているため、ぜひとも映像と合わせてじっくり聴いてみてほしい。

大量のレイギエナが飛ぶシーンに合わせてテンポの早いオーケストラ調の曲が流れ、静かになったところで『歌』が聞こえるシーン、そして直後、そのとき初登場となるイヴェルカーナがフレームインすると同時に一気にピアノの旋律が展開される。ワールドの景色から氷に覆われたアイスボーンの景色に移ったところで再び壮大なオーケストラに戻り、メインテーマ『継がれる光』のフレーズ、中央にタイトルが表示……この流れが美しすぎる。
この時点で、イヴェルカーナとピアノのイメージががっつり結びつくところがすごい。ピアノ=イヴェルカーナ=氷=アイスボーンという意識の導線がしっかり作られる。

モンハンではこの曲を始め、ムービーにしか登場しない曲も数多く存在する。一度しか聴かれず、ループもしないため印象に残りにくいかもしれないが、その分「その一回の価値を極限まで高める」作りがされていると感じられる。隠れた名曲も多いムービー限定曲、ぜひゲーム本編のギャラリーから鑑賞してほしい。

最後に

とりあえずイヴェルカーナとその音楽について自分が知っていること、思っていることだけをつらつら書こうと思っていたのだが、いつの間にかめちゃくちゃ長くなってしまった。論文以外でこんな文量書いたのは初めてかもしれない。疲れた。

色紙が届く前に書き上げようと思って最後は若干駆け足になってしまったが、ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。皆さまのストーリーズ2やアイスボーンへのモチベーションにほんの少しでも貢献できますように。

荷物はもう間もなく届くはず。そわそわ…

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