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電車の中での出来事

これは数年前の出来事です。

ある日、1人で新潟方面の電車に乗っていました。
次の駅で駅員さんと一緒に電車を待っている人が見えました。

電車が止まり、ドアが開くと駅員さんはポンとその人を電車に乗せてそのまま去っていきました。
電車に乗せられた人はオロオロしていました。
私はおかしいな、と思い、その人の腕をつかんで「ここ空いてますよ」と、半ば強引に隣の席に座らせました。

「ありがとうございます。私、ぼんやりとしか目が見えなくて…」とその人が話してくれました。
「どちらの駅で降りますか?」と聞いたところ、新潟まで行きますとのこと。
私も同じなので駅に着いたら一緒に降りましょうと言いました。

普段なら馴染みの駅員さんが電車内まで連れてきてくれて椅子に座らせてくれるのに、知らない駅員さんでポンと乗せられて怖かった…と。
どうやらたまにこういうことがあるらしいです。

今日はたまたま私のような人がいたから良かったけれど、どこに立っているのかはっきりわからないまま新潟まで乗っていたこともあったそう。
想像するだけで怖いです。

私がいきなり腕を引っ張ったことを謝ると、ちゃんと声をかけてくれたじゃないですか、とにこやかに話してくれました。

その後も新潟に到着するまでたくさん色々なことを話しました。
盲導犬が欲しいけれど自分は全く見えないわけじゃないので、順番待ちでなかなかまわってこないこと。
盲導犬は人の左側を歩くので、そのせいで線路や川に落ちた人がいるという話。
点字ブロックに荷物が置いてあって通れなかったこと。
知らないことをたくさん教えてもらって、とても充実した時間でした。

話を聞きながら、世の中あまり優しくないんだな、ということに気づき、自分にできることを考えました。

新潟駅には駅員さんが待っていました。
私はその人の手を握り、一緒に電車から降りました。
待っていた駅員さんに乗ってきた駅の駅員さんの話をし、今後はその人のために、ちゃんと対応してほしいと伝えました。

ちょっとおせっかいだったかな、と思いつつ、こういうことはちゃんと伝えないと変わらないな、と思ったので勇気を出して話しました。

その人はビックリしたような表情で、でもすぐに笑顔になり「本当にありがとう。」と言い、駅員さんと一緒に改札方面へ行ってしまいました。

私も耳が聞こえにくいし、いつ全く聞こえなくなるかわからないし、生きていくのに不便もあります。
様々な人に優しい世の中になっていくように、私にできることをやっていきたいと思います。



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