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The End of Legend,and Start of

輝く聖剣が魔王の胸を貫いた。 魔王はもはや抵抗しなかった。 代わりに、険しい顔で聖剣を突き立てる勇者を… そして勇者の背後、数多の世界より集った英雄達を見た。 魔を極めた老賢者を、 弓を構えるエルフを、 刀と銃を持つ保安官を、 屈強な機動力士を、 電脳世界から義体を操るAIを、 吸血海藻を、 女学生に扮した妖怪変化を見た。 皆が皆、己の物語の主人公だった。 魔王だけが違う。 集いし英雄の誰が知ろう――魔王とは上位次元に住まう破壊神が送り込んだ端末であり、最初からそう造

    • ブレイブ×バイオ×テンタクル

      総括── 人類の最優先課題は2点。復活せし"不死の魔王"の再討伐及び恒久的致死あるいは封印。 要求── 貴部門の担当は前者である。既存の科学体系が通用しない以上、かつて魔王を滅ぼした"十二神器"の使用を推奨。ただし神器の担い手である勇者の血統は(おそらく人為的に)途絶えている為、勇者の遺骨より採取したDNAが提供される。 提案── 十二体の人型素体による勇者一行の再現。 回答── 否。集団の訓練を行う時間的猶予はない。 提案── 強襲制圧に長ける獣人型素体。 回答─

      • 第二次造船計画

        その声を聴いたのは、日課の礼拝の最中だった。 とはいえ、私はそこまで信心深くはない。 こうして教会に足を運んでいるのも、付き合いの一種とか、文化の継承とか、そういった目的からだ。 …だから、 "箱舟を造りなさい" という声が急に聞こえてきたときも、感動はなかった。 困惑しかなかった、と言ってもよい。 "今度は1組づつとは言いません。多くの種を積むといいでしょう。では、よろしくお願いします" …それが最後に聴いた声だった。 立ち直った私はすかさず聴覚知覚思考をスキャ

        • 俺たちは女の子の喜ぶ話もできないから

          ナンパをしよう、という話になった。 「いや無理だろ鏡見ろよ」 しかし俺たちは地学部、つまり西高中のギーグとナードを煮込んだ煮こごりである。 「ナンパって会話しなきゃいけないんだろ?どうやって女性と話をすればいいのか教えてくれ」 まずこのレベルだから察してほしい。 「んー…クラウド氏ならどうする?」 クラウド(本名:中須啓太郎)はしばし瞑目し、 「聖剣技と暗黒剣、どっちが好きですか」 「アホか!」 「だってFFTが通じない女性とか興味ないし…」 拗ねるクラウド氏

        The End of Legend,and Start of

          ジャイアンツVSドラゴンズ

          竜<ドラゴン>。数千年の時を超え蘇った神話生物。 竜を殺せるのは、兵器ではなく、竜と同じく神代に生きた魔剣のみである。 だが、魔剣を携え竜を討てるような英雄は、いまの地球上には存在しない。 おお…ならば人類は、竜によって無情にも根絶されてしまうのか…? ――否!断じて否! 見よ!竜に立ち向かわんとするその白銀の威容<ジャイアント>! 科学の粋を注ぎ込み建造された、人型巨大野球兵器ジークフリートを! 巨人がその右腕を掲げる。 歪に膨らんだガントレット状装甲の内側、魔剣ホル

          ジャイアンツVSドラゴンズ

          マイ・フェア・ゴースト・ドーター

          「AAARGHHH…!」 黒いモヤの塊としか言いようがない化け物が、こちらに突っ込んでくる。 が、見え見えだ。 ステップで躱し、すれ違いざまにそいつをひと撫でする。 それだけで、黒いモヤは「ひゃわっ」と悲鳴を上げ、地面に転がって、 ローティーンの少女になった。 仕立ての良い服、丁寧に整えられた髪。いかにも血統書付き。 「…立てるか」 なるべく渋面を作らないよう努力して腕を差し出す。 「あ、はい、…あの、あなたがお父様ですか?」 「そうらしい」 お父様と来たぞ。これまで

          マイ・フェア・ゴースト・ドーター