リアタイして印象的だったジャンプ本誌3選(ネタバレあり)

くろまいです。


今週号のジャンプをもって、僕のヒーローアカデミアが最終回を迎えました。



集英社、週間少年ジャンプ
2024年36・37合併号表紙より



ドラゴンボールと同じ42巻で完結、作中の時間経過を連載期間の10年に揃える等の小技もカッコいいですが、この作品の魅力は作者の心情や境遇が投影された私小説的要素にあると思っているので、第1話で提示されたテーマを、作者自身が自画像やコメントでたびたび強調してきた『手』というモチーフに落とし込んだところが個人的に一番エモかったです。



あと他作品(特にワンピ)の扉絵で言及があったり、巻末コメントが労いで埋まったりするのはやっぱりグッときますね。ここ数年は電子書籍派なんですが、久々に紙媒体を購入してしまいました。



自分はなんだかんだ20年以上惰性でジャンプを読み続けてるんですが、長く読んでると時々、今週号でいうワンピの扉絵や巻末コメントみたく、リアタイだからこそ得られる感動に出くわすことがあります。今回はそんな要素が含まれる号を3つ紹介したいと思います。



選出基準は独断と偏見です。加えて単行本と違い雑誌はとっとかないで捨てる主義なので、ソースは基本全て自分の記憶頼りになります(号数は調べたのでさすがに間違いないはず)。事実と違うところがあればご容赦ください。



あとタイトルにも書きましたが、性質上ネタバレが含まれるので、必要に応じて自衛をお願いします。






①2003年13号


ワンピの映画『デッドエンドの冒険』公開に伴う特集が組まれた号です。中篇こそあれど長篇映画化はシリーズ初とのことで、大々的に宣伝していた記憶があります。



特集の目玉は尾田栄一郎先生と、主題歌を担当したBUMP OF CHICKENメンバーとの対談記事です。再録されておらずこの号以外では読めないので、選出しました。




この対談、最初はバンプ側だけテンション高め、尾田先生側は一歩引いてて両者の間に壁を感じるんですけど、バンプのメンバーから


「俺はこれから本気パワー出すとこだったんだ!ってウソップが言った時に、ゾロがわかってるよ、ってバカにせず返したシーンが好き(意訳)」


って話が出たのを皮切りに、お前わかってんじゃん!って尾田先生のガードが一気に下がって、そこから会話が弾みだすんですよね。それがめっちゃ好き。


内容の方も尾田先生側の「アシが作業中に『K』を聴いてガチ泣きした(意訳)」というエピソードや、バンプ側の「『舵を取れ』みたいな普段使わない歌詞が自分から出てきて新鮮だった(意訳)」という創作姿勢にまつわる話など、全体的に密度が濃くて面白かったです(特に『K』の歌詞はチョッパーの過去回想と共通する部分が多いので、インスパイア先を種明かしされたみたいで興味深い)。



自分のバンド音楽趣味の入口はベタにバンプなんですけど、楽曲を聴いてみるきっかけとなったのが実はこの対談記事なので、個人的にもかなり大切な号だったりします。



②2006年38号



アイシールド21の第197話、『0.1秒』が掲載された号です。


神龍寺戦の最終局面にて、ヒル魔の奇策を阿含が看破して時間切れ→実はモン太がフィールド外をキャッチしていて4秒戻る、というめちゃ熱い展開でテンションがブチ上がった直後、お盆休みの合併号で続きを2週間先延ばしにされる、という鬼畜コンボを経て読んだ回でした。



発売日は8/21なんですけど、この日ってちょうど甲子園の決勝と被ってたんですよね。




3連覇を狙う駒大苫小牧と、初優勝を目指す早稲田実業との引き分け再試合です。この対戦は高校野球好きなら無限に語れるくらい様々なドラマがあるので、興味がある方は各々Google検索して頂ければと思います。


で、自分はこの日リビングのTVで家族が流してるこの試合を一緒に観たあと、

「同世代にこんなすごい人たちがいるのに、なんか俺はいまいちパッとしないな」


っていうモヤモヤを抱えつつ、コンビニへとぼとぼジャンプ買いに行ったんですよね。


そんな心境に対し、

『(作中の設定上は)持たざる側であるヒル魔が、地道に積み重ねた努力のおかげで紙一重の差で天才に勝てた』


という今回の作劇がクリティカルヒットして、


『お前まだグダグダ言えるほど何もやってなくね?やれよ』


と、強烈に背中を押してもらえたような気がしたんですよね。そんな思い出があるので選出しました。



集英社、稲垣理一郎、村田雄介
『アイシールド21』
JC第23巻P22より




③2011年10号


この号は珍しく捨てずにとってあるので、今も手元にあります。


集英社、週間少年ジャンプ
2011年10号表紙より


メインとして取り上げたいトピックは、現在ジャンプ+でも連載中の福島鉄平先生による短編、『月・水・金はスイミング』です。


この作家さんは連載デビュー作であるサムライうさぎの頃から、どちらかと言えば青年誌的な描写/価値観を持ち味にしていて、それが少年誌のフォーマットとせめぎあっているところに不思議な魅力があったんですが(あとブライアン・セッツァー好きなのマジで信頼できる)、この短編は忖度を全部捨てて、持ち味を120%発揮しきった勝負作です。全編を通して、


『思春期ゆえに細分化されてない異性に対する無意識の感情が、有意識の領域まで踏み込んできた時のモヤモヤ具合』


が、微に入り細を穿ち偏執的なこだわりで描写されています。


個人的に一番ヤバいと思ったのはこのページ。


同上、P217より


オサムくんが歌詞を忘れて音楽のテストの追試を受けたのち、ウサギのエサが突然失くなってクラス総出で探してるところへ戻ってくるシーンです。お前も探せよ、と言われてそもそもエサ当番誰だっけ?と返したあと、唐突に脈絡もなく追試の時の回想が差し込まれています。


これはオサムくんがエサ当番が誰か?というやや古い記憶を辿る過程で、『ついさっきやった音楽の追試で歌詞を無事に【思い出せた】』という新しい記憶が、『【思い出す】という行為に集中している自身の状況』とリンクして、連想ゲームみたく頭へ先に浮かんできた、という演出になっています。



何かを思い出す時に他の記憶と混線してしまう、というのは誰でも一度は経験することですが、だからってそれを普通わざわざマンガで表現しようとは思わないじゃないですか。それをあえてやろうと決めた作者の


『登場人物の頭の中で起こっていることは、どんなに細かいものでもちゃんと拾って形にしたい』


というこだわり具合に、初読時の自分は「これジャンプで許されていいんだ!」と思いつつ、同時に往年の高野文子作品みたいなある種の凄みを感じました。



少年マンガは喜怒哀楽と話の起承転結がシンプルに結び付いているからこそ、作品としての強度が増して大きなカタルシスを生んでると思うんですが、一方で話のダイナミズムを追求していく都合上、本作が丁寧に拾った色恋/友愛未満な感情の芽みたいなものはどうしても踏みにじられがちになっちゃうんですよね。



この作品は今なら短編集で読むことができるんですが、個人的には週刊少年ジャンプという雑誌に載っているからこそ意味があると思ったので、選出しました。




番外編 赤マルジャンプ2003年9月26日増刊



本誌じゃなくて増刊号にも印象深い号があるので、番外編として選出。



集英社、赤マルジャンプ
2003年9月26日増刊表紙より



新人作家のデビュー読み切りを載せるために作られた雑誌ですが、この号にはめだかボックスの作画担当、暁月あきら先生のデビュー作、『Z-XLダイ』が掲載されています。この作品マジで好きなんですよね。


長らく単行本未収録のままだったんですが、数年前にようやくpixivFANBOXで読めるようになりました。



既に一度雑誌へ掲載済みとはいえ、現時点で作家さんが公開を有料にしている以上、内容や絵柄のネタバレは極力避けることとし、今回は当時中学生だった自分のハートを鷲掴みにした、主人公が右腕に備えたメインウェポンを起動する際の前口上のみを引用させて頂こうと思います。



暁月あきら
『Z-XLダイ』より


同上


同上


同上



かっけえ。



ちょっと前に旧裏のオフ会で、前口上と共に好きなカードを引けるディスティニードロー杯ってのがあったんですが、もし出てたら絶対使ってましたね。


この口上とともに起動するメインウェポンも独特のアイデアで面白いので、興味がわいた方はぜひ一度読んでみてください。


まとめ


長く追い続けた作品が紙面を去る瞬間は何度居合わせても寂しいですが、その後もなんだかんだで追いかけたくなる作品が新たに生まれてきているので、おそらく自分は今後もジャンプを毎週読み続けていくんだろうな、と思います。


願わくばこれから先の未来に、これまでや今回みたく『リアタイしてよかった!』と思えるような週が少しでも多くなれば嬉しいです。





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