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連載小説・海のなか

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とある夏の日、少女は海の底にて美しい少年と出会う。愛と執着の境目を描く群像劇。
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2021年4月の記事一覧

小説・海のなか(10)

小説・海のなか(10)

 問いが口を離れてから、随分と長い空白が訪れたように感じた。それは問いかけ自体が無に帰っていく様な時間だった。奇妙だ。この沈黙は重くもないし、ましてや心地よくもない。だから私もなんだかまた話し始める気にもなれず、ただ、だらだらと味わっていた。夕凪の心のあり様に引き摺り込まれていくような、そんな感じだ。気配がひたひたと場を侵していく。
当の夕凪はというと、窓から見える庭を眺めていた。夕凪は何かを考え

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小説・海のなか(9)

小説・海のなか(9)

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 到着してしばらく経っても、まだ小瀬家のインターホンに手を触れることを躊躇っていた。夕方とはいえ、まだ秋になりきれない日差しは首筋をジリジリと焼き始めている。何処かからか染み出してきた汗が首筋へ伝っていくのを感じながら一人歯噛みした。
 いい加減情けない自分に嫌気が差してくる。はっきりしないのは嫌いだ。時間を無駄にすることも。選択の余地がないのなら答えは一つしかない。そうわかっている、は

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