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紫陽花への固執

西暦2×××年6月23日それはあまりにも突然の出来事であった。雨降る太平洋の真ん中に巨大なドラム式洗濯機が降ってきたのだ。ドラム式洗濯機という名前は人類が勝手に付けたものではあるが、それにしては外見があまりにもドラム式洗濯機なのである。国連軍は万が一に備えてドラム式洗濯機を軍艦で取り囲んだ。人類が最悪の事態を身構えているとドラム式洗濯機はピーという音とともに扉を開き始めた。皆が唾を飲み込む。中からは巨大な生物が出てきた。その見た目はカタツムリに酷似していた。その巨大な生物は恐らく目であろう部分をぎょろぎょろとさせ、その後未知の言語を発し始めた。こちらが言葉を理解出来ずにいることを察知すると、突如日本語で発話を開始した。
「我々はアジサイと言う星の支配者です。この星にはアジサイと呼ばれる植物があるでしょう?それを貰いに来ました。」
なんだそれだけか、と思いすぐさまアジサイを提供した。すると巨大生物はドラム式洗濯機へと戻り、暫くするとドラム式洗濯機は回転を始め、どこかへと消えていった。

結局あれはなんだったのだ、との議論は世界中で行われた。しかし有用な結論を出せるはずもなく、いつしか忘れ去られて行った。

それからというもの地球は異常気象が続き、動物や植物も殆ど絶滅した。当然、アジサイなぞどこにも咲いていなかった。そんな天変地異を引き起こした異常気象は今では収まり、そこに栄えているのはたまたま生き残った巨大なカタツムリ達であった。彼らはもう今は絶滅してしまったアジサイに住むことに固執し、ドラム式洗濯機を改造してタイムマシンを完成させた。彼らは地球のことを「アジサイ」と呼んだ。

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