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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本29

時の館の逆転(13)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
・時田針之輔(ときた・しんのすけ)……高級時計メーカー《トキタ》の創始者であり、現会長、脚が悪く車椅子の生活を余儀なくされている、コレクションルームはアンティークな柱時計や置時計であふれかえっている、規律に厳しくとくに時間にはうるさい、息子の時田龍頭を殺害、77歳
X時田龍頭(ときた・りゅうず)……針之輔の長男、《トキタ》社長、経営不振の打開策として会社を売却しようと考えている、何事にもルーズな性格、被害者
・幸丸事郎(ゆきまる・じろう)……針之輔の身の回りの世話をしている執事

▼シーン11(続き)

〈御剣〉「すばやく行動できるよう、ドアロックを解除し、明かりもつけたままにしておいたのだろうが、犯行後も放っておいたのはまずかったな。今日はずっと警察の人間が周囲をうろついていたから、もとに戻そうと思ってもできなかったのだろうが」
〈針之輔〉[ゆっくりと手を叩き]「あっぱれ。見事な推理だ。だがキミは、ワシにも犯行が可能だったということを証明したにすぎない。ワシが殺したという証拠はどこにもないだろう?」
〈御剣〉「確かに、確実な証拠など存在しない。だが、私はあなたが自白してくれるものだと信じている」

 上着のポケットから巻き鍵を取り出す御剣。針之輔の顔色が変わる。

〈針之輔〉「ど、どうして、キミがそれを持っている? 返せ。見つからなくて困っていたのだ。それはワシがもっとも大切にしている奇跡の柱時計の鍵だぞ」

 奪い取ろうとする針之輔をよける御剣。

〈御剣〉「やはりそうだったか。大切なものだろうから、もちろん返そうとは思っている。だが、そのためにはまず、私の質問に答えていただきたい」

 幸丸とアイコンタクトをとる針之輔。

〈針之輔〉[御剣に顔を向け]「わかった、いいだろう。なにを訊きたい?」
〈御剣〉「この鍵は、あなたが所有するマンションの一室に落ちていた。なぜ、そんなところにあったのだ?」
〈針之輔〉「それは……」
〈御剣〉[鍵に視線を落とし]「この鍵は、ごく最近あなたがあのマンションに立ち寄ったという有力な証拠になるのではないか?」
〈針之輔〉「…………」
〈御剣〉「重要なのは、あなたがマンションに立ち寄ったのはいつだったか? ということだ。私は事件の起こった晩に違いないと考えている。認めてもらえるだろうか?」
〈針之輔〉「認めんよ。キミはワシが息子を殺そうとマンションを通り抜けた際に落としたと思っているのだろうが、それは違う」

                           つづく


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