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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本01

燃え盛る逆転(1)

《登場人物》
・御剣怜侍(みつるぎ・れいじ)……検事局始まって以来の天才検事
・糸鋸圭介(いとのこぎり・けいすけ)……所轄署で殺人の初動捜査を担当している刑事、御剣とは旧知の仲
・鞍馬満天(くらま・まんてん)……体操選手
・智槍啓太(ちやり・けいた)……競輪選手
・大地翔(だいち・かける)……陸上選手
・河童沙良(かわどう・さら)……水泳選手
・目樽望(めだる・のぞむ)……学長

▼シーン1

 目樽体育学園構内。
 大講堂の時計は午後8時半を示している。
 夜のキャンパスの一角。
 炎をあげて燃える武道場。
 駆け回る消防士。
 放水車が勢いよく水を放水。
 その光景を遠くの物陰から眺める人物。
 口元にはいやらしい笑みを浮かべている。

▼シーン2

 翌日。
 キャンパス内の大広場。
 隅には、燃え尽きて真っ黒になったゴミ箱。
 しゃがみ込んで、ゴミ箱を調べる糸鋸。

〈糸鋸〉「やはり、放火魔の仕業に間違いないッス。きっと、犯人はすぐ近くに――」

 立ち上がり、真剣なまなざしでキャンパス内の学生らを睨みつける。

▼シーン3

 学長室を訪ねる糸鋸。

〈糸鋸〉「お忙しいところ申し訳ないッス」

 学長・目樽望に頭を下げる糸鋸。
 目樽は立派な椅子に座り、パイプをくゆらせながら、面倒くさそうに糸鋸を見上げる。

〈目樽〉「警察が私になんの用事ですかな?」
〈糸鋸〉「昨夜8時過ぎ、大学構内で放火事件が起こったそうッスね。近所のかたから通報があったッス」
〈目樽〉「放火って……そんな大げさなものではありませんよ。広場にいた学生が見つけて、すぐに消し止めたので、被害はゴミ箱ひとつだけです」
〈糸鋸〉[目樽の机を叩き]「ごまかさないでほしいッス! 最近1ヵ月の間に、すでに3回、似たような事件があったと聞いてるッス。一体、どういうことッスか?」

 学長に詰め寄る糸鋸。

〈目樽〉[苦笑しながら]「最近の警察はずいぶんと暇を持て余してるんですね。ただのボヤ騒ぎに、いちいち首を突っ込んでくるなんて」
〈糸鋸〉「ボヤ? 調べてみたところ、2週間前には武道場が燃えて、消防車がやって来る騒ぎになってるッス」
〈目樽〉「あの日は風が強くて、たまたま火の広がりが早かっただけですよ。どれも、学生たちの煙草の不始末が原因でしょう。よくあることです。お騒がせして申し訳ありませんでした。私のほうから、学生たちに注意しておきますので」
〈糸鋸〉「きちんと捜査をさせてほしいッス。今のところはたいした被害もなくすんでいますが、いつ大きな事故になるとも限らないッス」
〈目樽〉「心配には及びません」

 とそのとき、ノックの音が響き渡る。

                           つづく

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