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逆転検事 ヤンマガ版未発表脚本 解説

 〈別冊ヤングマガジン〉でコミック版『逆転裁判』の連載が始まったのは2006年8月のこと。大人気ゲーム「逆転裁判」の4作目発売に併せて企画されたプロモーションの一環でした。
 作画は『闘破蛇烈伝DEI48』の前川かずおさん。そして、僕が脚本を担当することとなりました。なぜ、どこの馬の骨ともわからぬ僕に白羽の矢が立ったのか、その経緯は話すとめちゃくちゃ長くなりますので、ここでは割愛させていただきます。まあ、ひとことでいえば運がよかったということでして……。
 2000年にメフィスト賞を受賞してデビューして以降、かなりのハイペースで作品を世に出してきましたが、悲しいことにどれもほとんど売れず、新人としてちやほやされる時期も終わって、ちょっとヤバい状態になっていた頃のお話です。どのくらいお金に困っていたかは、「20日間寝ているだけで30万円」という普通は誰もやらないであろう宇宙医学実験のバイトに手を出していたことからも推測できるかと思います(笑)。
 初めて挑戦する漫画脚本の仕事は、東京のホテルでの缶詰生活が何日も続いたり、とめどなくボツをくらったり、決して楽ではありませんでしたが、なにもかもがよい経験となりました。
 大人気ゲームが原作ですし、前川さんの描く登場人物たちがひじょうに魅力的だったこともあり、コミック版の連載は順調に進み、単行本もたくさん売れて、僕はようやく貧乏生活から脱け出すことができました。
 その後、ゲーム関係の仕事を数多くもらうようになったのも、この作品がきっかけです。『逆転裁判』を書いていなかったら、あのまま作家をやめていたかもしれませんし、そうであったなら『青鬼』と巡り会うこともなかったでしょう。僕の転機の1作だったことは間違いありません。
 『逆転裁判』は好評のうちに終了。続けて2009年から〈月刊ヤングマガジン〉で連載を始めたのが『逆転検事』でした。
 前述したとおり、コミック版の『逆転裁判』『逆転検事』にはボツネタが数多く存在します。とくに『逆転検事』には、脚本が完成していたにも拘わらず、様々な事情で完成に至らなかったものが何本かありまして、このまま埋もれさせておくのはもったいないなあと思い、今回この場を借りてひっそりと発表しようかと思った次第です。
 まず、最初にご紹介するのは「燃え盛る逆転」。冒頭には第2話と表記されているので、本来はあの仮装パーティーの事件の次に用意されていたものだと思われます。
 それではごゆっくりお楽しみください。

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