小説書き出し試し読み《コンデンティー》

☆新作小説の一部を書いてみました。

物語の序盤がこの続きを読んで見たいものになっているかを知りたいので、読んでいいなと思ったらコメントやスキを頂けると嬉しいです!!

よろしくお願いします。


零 序章

まだ朝も明けない真っ暗な空。誰も彼もまだ寝静まった音もない世界。

もしかしたら自分以外人なんていないのではないかと思っても不思議ではないほどに静まり返っている。こんなに夜は静かなのだと思う反面,おまえはこの世界にいてはいけない存在なのだと無言で空気は伝えているようにさえ感じられる冷え込み。

またやるせない今日と言う始まりの朝の中に私はいる。

児童保護施設で中学三年生の少女,トレビーナ・アッサムはまだ早い朝を迎えた。一緒に部屋にいる僚友はいない。早くから保護施設で過ごしているが、彼女自身が誰とも仲良くなろうとせず,また誰とも話そうとしなかった結果,同じ寮内にいる子供たちにはすっかり何を考えているのかわからない,気味が悪いと恐れられ,また職員の人間たちも彼女が一向に心を開かないのを見てとると最初は医者に相談したり,極力話しかけたりはしてきたが,全て答えないことを貫いてきたことでいつの間にか彼らは一切,トレビーナとの接点を求めなくなった。そう,やっとのことで面倒な存在だ,近寄らない方が身のためだと理解したのだろう。いやもう彼らはトレビーナを死んだ幽霊とさえ思っているかもしれなかった。ごはんはいつも扉の前に置かれている。幽霊のお供え物にでもなっているのかもしれないなどとトレビーナは卑屈にも考えていた。そして同時に自分で選んだ未来なのにと自分をバカバカしくも思った。

「はあ…はあ…」

目覚めたあと起き上がろうとすると彼女は決まって眩暈を起こす。

息も絶え絶えで椅子に腰かけると部屋に置いてあるケルトに手を伸ばしてお湯を沸かす。そのあと,力尽きたようにテーブルに頭を抛り出した。寮の子供たちには毎月本当に少額なおこづかいが支給される。生活に不必要なもの以外はそのお小遣いを貯めて買ったものだ。ケトルもその一つである。それで飲む紅茶が大好きだった。数少ない友人が大好きだったものだから。カップに紅茶を入れると湯気が立つ紅茶に映る自分の顔が良く見えた。とっさにすごく嫌な気分になる。吐き気もしそうだ。耳に響いてくる言葉がある。

“醜いお前なんか大嫌い…“

「いや!!!!」

そう叫んでカップを放り投げそうになる手前でトレビーナは紅茶の鏡に映る親友を見た気がした。振りむいて悲しい顔を向けた少年はまた紅茶の色の中に消えていく。

“クド…クド…いかないで…お願い…クド“

ガバ!!!

飛び起きたトレビーナはテーブルの上には傾いたティーカップがあり、その中身が湖のように机に零れていた。自分がまた早朝に起きてそして意識が飛んだのだ。最近,ストレスなのかそういうことが毎日のように起こるようになっていた。そう親友の少年が消える姿を何度も夢や幻覚でみる。

一瞬でも、私の理解者だなんて思っていた自分に腹が立つ。

もう誰かを信用すること自体を諦めたはずなのに。

「私…どうかしているわね」

そう呟きながら今日も気怠い、陰鬱な学校へと足を向ける支度に取り掛かった。

どこかの部屋で微かにブザーのなる音が聞こえる。

きっと誰かが朝から迷惑な音量でテレビの劇でも見始めたのだろう。トレビーナは気にせずに作業を進めた。

周りにとっては悲劇でも彼女にとってはこれが人生なのだから。

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