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ニンジャスレイヤーTRPG第2版用シナリオ【暗殺】

この記事は「ニンジャスレイヤーTRPG二版」用のシナリオです。
このゲームのシナリオには、「隠された背景」や「マップの構造」など、プレイヤーは読んでいない方が楽しめる要素が含まれているため、基本的には進行役のニンジャマスターだけが読みます。
このシナリオはモータルのアウトロー用に作成されており、普段よりもノワールでピカレスクな設定をお楽しみいただけます。

◆シナリオサマリー
デッドフィッシュ・ヤクザクランのオヤブンを暗殺せよ

 対象:作成したてのモータルPC3〜4人
 難易度:イージー〜ノーマル程度
 キャラロスト:あり
 余暇:標準(4スロット)


【ダンゴウ】

殺風景なアパートの一室。真っ白な壁の一面に、時折01ノイズが走る。ここは実空間ではなく、IRC空間に作られた仮想空間。いわゆるメタバースだ。こうした使い捨てのチャットルームめいた会合場所はプロに好まれる。
「ドーモ。よくぞお越しくださいました」
ワイアフレームの笑顔を張り付けた奇妙なアヴァターが君たちを出迎える。『笑い爺』と呼ばれる仲介人であり、メガコーポとの強いコネと実績を持っている。少なくとも、カネという面では信頼のおける男だ。
「今回はええ、汚れ仕事をお願いしたくてね。一張羅を着ていくのはあまりお勧めしませんよ。赤のワンポイントを付けたいなら話は別ですがね」
「あなた方に始末してほしいのは、デッドフィッシュ・ヤクザクランのオヤブンです。この男をこの世から消してほしいんですよ」
『笑い爺』は写真をアップロードした。ショウヘイ・タカハシ。モンツキハカマを着た50、60代の男。禿げ上がった頭には幾重もの皺が刻まれている。しかし、両腕は高級感ある黒漆塗りのサイバネに置換されており、それ以外の身体も筋肉で盛り上がっている。単なる老人と見れば大怪我をすることは間違いない。

『笑い爺』から依頼されるのはヤクザ・オヤブンの暗殺だ。

◉デッドフィッシュ・ヤクザクランのオヤブン、ショウヘイ・タカハシを暗殺せよ。方法は問わない。必要ならクランメンバーを殺害しても構わないが、民間人への被害が出るやり方は慎むべきだ。
◉クランは数百人の構成員とその倍するクローンヤクザを導入した大組織だ。力押しでは勝ち目がない。唯一、私邸の警備は比較的緩く、侵入の余地がある。

最低限の情報として以上が伝えられる。

【情報収集フェイズ】

以下の情報項目を提示する。
判定はすべて【ニューロン】、難易度はNORMALだ。推奨される知識技能はそれぞれの項目に設定されている。PCは1人につき1回、いずれかの情報項目について情報収集判定を行うことができ、全員が判定を行ったら、メインフェイスに移行する。
もし情報項目1と2で【6】の目を出し、追加情報を得られたなら、対応するサブフェイズに移行することもできる。

情報項目1:ショウヘイ・タカハシについて

有効な知識技能(技能1つにつき+1)
ストリートの流儀、ヤクザの流儀、犯罪

好色家にして吝嗇家。だが暴力については抜きん出た才覚を発揮した。ソウカイ・シンジケートと提携し、クローンヤクザを大量導入し、クランの地位を押し上げた。
ヤクザドリームを叶えた人物として部下からは尊敬を得ているが、齢60を越え健康には陰りが見える。また、そうした弱さを他人につけ込まれるのではないかという妄想を抱いており、いまは僅かな側近とクローンヤクザのみに私邸の警護を任せている。
この情報を獲得したら、タカハシのスケジュールを一週間分手に入れられる。彼は決まって週末に行きつけのレストランに顔を出し、毎日7時には私邸に戻り10時に就寝する。
【6】成功時の追加情報
彼は若い頃からナッツ類へのアレルギーを発症しており、それはいまも治っていない。私邸の料理人、および行きつけの店以外で彼が食事をすることは滅多にない。常にアレルギー対応のため薬を用意しており、車の運転手がそれを管理している。

情報収集2:デッドフィッシュ・ヤクザクラン

有効な知識技能(技能1つにつき+1)
ヤクザの流儀、高級嗜好品、犯罪

クランは歴史と伝統のある格式高い組織だが、現在は奥ゆかしさを捨てギラギラとした欲望を激らせ勢力拡大に邁進している。先代のオヤブンを現在のオヤブンが謀殺、ゲコクジョを成し遂げたのだ。極めて暴力的で、儲かることなら何でもやる。敵は多いが全てねじ伏せてきた。現在のクランはクローンも含めて数千人規模の組織は成長し、下部組織も多い。
【6】成功時の追加情報
ヤクザの部下には多少の恩賞を与えるものの、非ヤクザの構成員(料理人、運転手など)の待遇は奴隷めいている。彼らの中にはタカハシに不満を持っているものも多く、接触出来れば協力を取り付けられるかもしれない。

情報項目3:私邸について

有効な知識技能(技能1つにつき+1)
ハッカーの流儀、セキュリティ、カチグミエリア

ショウヘイ・タカハシの私邸は郊外の田園地帯にあり、周辺一帯を買い上げ一種の荘園を構築している。広い森に囲まれた邸宅は安らぎの装飾が多く施されており、見事な庭、枯山水、バイオコイが悠然と泳ぐ池と、キョート人の別荘にも引けを取らない。敷地が広い分、クローンヤクザによる警備の目は行き届いているとは言えない。それでも邸内には20人近いクローンヤクザと側近のグレーターヤクザ3人、そして料理人がいる。
この情報収集に成功すると、私邸に設置された監視カメラ、トラップ、敵の配置についてすべてを知ることが出来る。
【6】成功時の追加情報
私邸には貴重なコレクションも多く収蔵されている。この情報を手に入れた場合、入念な準備により「即応ダイス」と「緊急回避ダイス」に+2のボーナスを得る。加えて、コレクションルームにある「*ホネキリ*」(後述)の位置をMAP上で公開する。

【サブフェイズ:料理人の買収】

情報項目2で【6】の目を出した場合、待遇に不満を持つ料理人を見つけることが出来る。彼は通いの料理人で、接触が可能だ。彼を買収することが出来れば、私邸への潜入が容易になるだろう。
料理人を買収しようとする場合、「交渉判定」を行うか、【万札】10を与える必要がある。判定を行う場合、以下の修正が加えられる:

「料理人を買収する」に適した交渉技能(ボーナスは最大+2まで):
最も適した交渉技能(+2):誘惑、煽り
次に適した交渉技能(+1):共感、駆け引き

買収に成功した場合、料理人は裏口のカギを開けてPCを中に導いてくれる。初期配置マスに加える。

【サブフェイズ:自動車爆弾】

情報項目1で【6】の目を出した場合、彼のアレルギーを利用して暗殺するアイディアを思いつくことが出来る。

致死量を摂取させることは出来ない。タカハシは常に護衛のグレーターヤクザを引き連れている。クローンには勘や経験がなく、肝心な時には役に立たないと考えているからだ。彼らは毒味役も兼ねており、すぐ異常を察知する。また、彼には専属の運転手兼秘書がおり、スケジュールや薬の管理を行なっている。このアイデアをもっとも効果的に使うには、アレルギーを使って敵を混乱させ、その隙にもっと致命的な手段を用意するのがいいだろう。車に爆弾を仕掛けるのは有効だ。

暗殺のアイデアを成功させるには、いくつかのステップを成功させるには必要がある。まずレストランに潜入し、アレルゲンであるナッツをタカハシの食事に混入させること。そして車に爆弾を仕掛けることだ。プレイヤーがより独創的なアイデアを思いついたらNMは取り入れても良い。しかし、それが民間人に被害を及ぼさないか考慮し、あまりに無茶なものは却下しよう。
レストランに潜入する場合、1人が【ワザマエ】難易度NORMALの判定を3回行う。これはレストランに潜入し、ナッツを混入させ、気付かれずに脱出する一連の行為を表している。ひとつでも失敗すれば事が露見し、PCたちはすぐにここから逃げなければならない。

成功した場合、タカハシはアレルギーによって危険な状態に陥る。彼を助けるため、運転手は車から離れなければならず隙が生じる。ここで車に爆弾を仕掛ける余地が生まれる。

空白の時間にPCは【ワザマエ】難易度U-HARD2の判定を行う(《◉トラップ処理技術》を持つPCが参加している場合、難易度-1)。この判定には潜入を行ったPC以外の全員が参加する事ができ、2人目以降が参加する度に難易度が-1される。ただし、参加したPCが1人でも失敗すれば判定全体が失敗となる。

成功した場合、車に爆弾を仕掛けることが出来る。これは指向性があり、周辺に被害を及ぼさない。爆発によりタカハシは2d3ダメージを、中にいるグレーターヤクザと運転手は2ダメージを受ける。すなわち、タカハシには生き延びる余地があるが、他の乗員は即死するということだ。高橋のデータについては後述する「⑩主人の部屋」を参照。

生き残ったタカハシに追い打ちを仕掛けることが出来る。その場合、PCは見付かり辛いポジショニングをしているため攻撃判定の難易度が+1され、射撃攻撃のみを行うことが出来る。タカハシは通常通り回避判定を行える。
暗殺に失敗した場合、タカハシは警戒感を高めるため、メインフェイズで巡回するクローンヤクザの数が増え、タカハシは『体力』をd3回復し臨戦体制で殺し屋を待ち構えるだろう。

【メインフェイズ】

草も眠るウシミツ・アワー。汚染された都市環境とは真逆の、静謐なアトモスフィア漂うタンボ平原。碁盤めいて整然と並べられた田園は、そのほとんどが暗黒メガコーポか封建領主めいたカネモチの私有地だ。
ロケットランチャーを装備したバイオスズメよけカカシの防衛網を越え、君たちはタカハシの私邸へと到達した。仕事をやり遂げ、金を受け取るために。

メインフェイズではショウヘイ・タカハシの私邸への潜入を行う。そして、タカハシを仕留め、脱出しなければならない。
NMは以下のMAPを公開する:

【暗殺】MAP

【暗殺】MAP - Google スプレッドシート
こちらはGoogleスプレッドシートで作成したMAPだ。敵の配置や監視カメラについてもすべて記載された『ネタバレ』仕様なので、NMは必要に応じて情報を制限すること。このシートをコピーするか、ドライヴにダウンロードすることで自由に使用することが出来る。

PCは『初』と表記された初期配置マス(AC26〜AD27)に配置する。料理人を買収していた場合は、開かれた裏門の初期配置マスにも配置出来る(Z2〜AC3)。

「クローンヤクザ」と「グレーターヤクザ」のデータは以下を使用する:
7:モブエネミーリスト:ニンジャスレイヤーTRPG2版ルールブック(2023/01/15更新)|ニンジャスレイヤー公式/ダイハードテイルズ (diehardtales.com)
通常のクローンヤクザはチャカ・ガンを装備しているが、巡回のクローンヤクザはマシンガンを装備している。

なお、戦闘が始まっていない限りPCは1ターンのうちに「脚力」の2倍のマス、または6マスのいずれか多い方で移動を行うことが出来る。ただし、この際扉を越えることは出来ず、越えた場合はその次のマスで移動を終了し、このターンでの行動が終了したものとみなされる。もちろん、誰かが扉を開いて部屋を『繋げて』この制限を無視することも出来ない。

重点:監視カメラ

色付きの風と化し監視を逃れられるニンジャと違い、モータルにとって監視カメラは大きな脅威となる。幸い、カメラの多くは解像度が低く、画角も狭いため、回避する手段は豊富にある。
監視カメラは『体力:1』『イニシアチブ:1』を持つ。監視カメラはPCの頭上にあるため、同じマスで停止したり、通り抜けて行くことが可能だ。監視カメラの視界である5×5マス以内(MAP上で青く色付けされた範囲)に入ったキャラクター全員はターン終了前に『回避判定:難易度HARD(5)』を行なわなければならない。失敗した場合、ダメージは受けないが直ちに【警報】が発生する。監視カメラを破壊することは可能だが、その場合も直ちに【警報】が発生する。
手番『攻撃フェイズ』に監視カメラに隣接するか同じマスにいる時、【ハッキング】か【ワザマエ】(◉トラップ処理技術の対象となる)判定難易度HARDを行うことが出来る。成功すれば、対象となった監視カメラを破壊し、なおかつ【警報】も発生しない。ただし、合計で3つの監査カメラがこの方法で破壊された場合、警備主任は異常を探知し、【警報】が発生する。

【警報】が発生した場合、タカハシを守っているクローンヤクザを除いてすべてのクローンヤクザが【警報】の発生したエリアに集まって来る。この際、「脚力」は6として扱う。
更に1d6ターン後、ターン開始時に正門に2台のヤクザベンツ(『体力:6』『ダメージ軽減1』『脚力:14』『轢殺攻撃2』)が現れる。これらは侵入者への最短距離を移動する。侵入者を轢殺するか5マス以内に近付いた場合、手番『終了フェイズ』にベンツを中心として4体のクローンヤクザ・チームが現れる。

ベンツには乗員がいなくなるため、以降移動を行うことなくその場に残り続ける。望むなら、PCは車を奪ってもよい。その場合、『ビークル操縦』のルールに従い以下のビークルを使用出来る:

ヤクザベンツ
脚力:14
轢殺攻撃2、射撃攻撃に対する『ダメージ軽減1』、4人搭乗可能

重点:クローンヤクザの視界

当初、敵はまたPCを発見していないため、攻撃を行ってくることはない。巡回クローンヤクザは「脚力6」で黄色い表示の巡回ルートを反時計回りに移動し(直線の場合は始点から終点までを往復する)、手番『終了フェイズ』に自身を中心とした7×7マス以内にいるキャラクターを自動的な発見する(壁によって遮られる)。移動途中の視界を考慮する必要はなく、あくまで移動が終わってからの範囲を参照する。
開始地点に戻るか通り過ぎるかしたタイミングで巡回クローンヤクザは警備主任に「異常なし」の報告を行う。この報告が行われなかった場合、即座に【警報】が発動する。
視界内に敵がいた場合、即座に【警報】が発生する。以降、すべての敵がPCに攻撃をおこなうようになる。
通常のクローンヤクザは移動を行わないが、同じように視界を持つ。グレーターヤクザとタカハシは同じ部屋にいるPCを無条件で発見出来るが、【警報】は発生させない。

重点:警戒体制

サブフェイズでの暗殺に失敗している場合、巡回クローンヤクザの数が増加する。MAP上の表記では『追』で表される。
「②私邸庭園」に3体、私邸内に1体が出現する。

①正門

城砦めいた白壁に覆われたショウヘイ・タカハシの屋敷。正門には巨大なトリイ・ゲートがあり、シメナワには不届な侵入者の骸が晒されている。
その下には5人のクローンヤクザ。彼らは同じタイミングで左右を警戒し、同じタイミングで「異常なし」の報告を行い、同じタイミングで痰を吐いた。

正門にはまず5人のクローンヤクザがいる。門の裏には詰め所が2つあり、戦闘が始まるとそこからそれぞれ6体、つまり12体のクローンヤクザが現れる。

②私邸庭園

職人の手によって整えられた庭園。松の一本、岩に張り付いた苔、刈揃えられた木立。すべてにワザマエが光っている。警戒のクローンヤクザは多いが、オブジェクトを活用すれば隠れて進むことも出来るだろう。

庭園には岩、木々など隠れられるものが多くある。MAP上では一律に黒の配置物として表現されている。これに隣接している場合、例え視界に入っていても発見されない。

③物置小屋

庭園の片隅に、古い小屋があった。年季の入った建物で、雑多な小物や肥料、自動車の整備用具などが溜め込まれている。

小屋には様々な物品があるが、使えるものを選定するのには【ワザマエ】難易度HARDの判定を行わなければならない。成功すると、「カタナ」を手に入れられる。
この判定に【6,6】で成功したなら、隠されていたクランの金を見つけることが出来る。【万札プール】に10を加える。
この判定は何人でも行える。ただし1ターンを消費し、各自シナリオ中に一度しか行うことが出来ない。

④玄関/廊下

豪華なペルシャ絨毯の引かれた玄関。右手側にある応接スペースの壁には神聖なる鹿の剥製が飾られており、タカハシのアンタイ・ブッディズム傾向が窺える。左手には板張りの廊下が続いていて、個室があるようだ。

この部屋は庭と屋敷を繋ぐ接点だ。施錠されているが、手番『攻撃フェイズ』に『その他の行動』を使い【ワザマエ】難易度NORMALの判定を行うことで開錠出来る。そうした場合、PCたちは内部に入ることが出来るようになる。応接スペースには高価そうな装飾品がいくつもあるが、その価値は計りかねる。この部屋から持って行けるアイテムは全体で1つまでである。NMは秘密裏にd6を振り、価値を決定する。《◉知識:伝統的アート》を持つキャラクターがいたなら、その出目に+1する。

1~2.ガラクタ。【万札】1
3~4.電子戦争前の絵皿 【万札】3
5~6.アンティーク・パイプ 【万札】5

⑤バスルーム

バスルームはトイレと一体になった様式のものだ。清潔そうな白い便器と、金細工が施された浴槽がある。タイルの壁にはカビひとつなく、使われているアメニティも一流のものだ。

この部屋には注目に値するものは何もない。

⑥食堂

広々としたダイニングルーム。庭を一望出来る窓があり、開放的だ。部屋の真ん中には大きなダイニングテーブルがあり、燭台の火が朧気に揺れている。室内はシャンデリアに照らされて薄暗い。
キッチンとも繋がっており、水仕事をする音が聞こえてきた。

ダイニングルームには銀製の食器が並べられており、部屋全体のものを集めれば【万札】2の価値がある。キッチンには料理人が一人おり、食事の片づけをしている。
キッチンから外へと向かう扉(AB10)には鍵がかかっており、【ワザマエ】難易度HARDの判定を行うことで開錠出来る。料理人は一切抵抗することなくホールドアップしている。
キッチンには真空タッパーに収められた『オーガニック・マグロスシ』がある。鮮度がよく、日持ちするため、ブラックマーケットで売却可能だ。モータルはスシによる回復を行えないので、これは完全な換金用アイテムになる。真空タッパーに入っている限り腐ったりすることはないので、もしそのことを気にするPCがいるなら教えてあげよう。
料理人を買収している場合、更に『オーガニック・スシ』を得られる。買収していない場合でも、侵入者に対して抵抗するような真似はしない。殺害したなら、彼から【万札】2を奪うことも可能だ。金で買収している場合、それも回収出来る。

⑦~⑨ゲストルーム

ゲストルームの造りは他に比べて簡素だ。文机、ベッド、クローゼット。どれもこれまで私邸で感じていた豪華さとは程遠い質素な、しかしどこか品のある装いだ。単に、家主があまり金を懸けたくなかっただけかもしれない。

ゲストルームにあるアメニティは【万札】1の価値がある。

⑩主人の寝室

邸内でひときわ大きな部屋は、この屋敷の主であるショウヘイ・タカハシの部屋だ。壁紙から調度品、照明、天蓋付きのベッド。何一つ低級なものの存在しない、それゆえに俗っぽく、成金の悪趣味さを感じさせる。

この部屋にはターゲットであるショウヘイ・タカハシがいる。PCが警報を作動させていない場合、彼は安らぎのフートンに包まれて眠っている。最初のターン、タカハシはあらゆる行動を行うことが出来ず、また如何なる装備を身に着けてもいない。
警報を作動させている場合、タカハシは臨戦態勢でPCを待ち構えている。

◆ショウヘイ・タカハシ/デッドフィッシュ・ヤクザクランのオヤブン(モータル)
カラテ    5  体力   7
ニューロン  3  精神力  4
ワザマエ   7  脚力   4

攻撃/射撃/精密/機先/電脳  5/7/7/3/3

◇装備や特記事項
●連射2
◉◉タツジン:イアイドー、◉頑強なる肉体、◉不屈の精神

※以下の装備は臨戦態勢でなければ使用出来ない
近代的防具(『体力』+2、『射撃ダイス』+2)
ショットガン(ミハル・ドットサイトを装備しており、【6,6】で痛打+1)

⑪コレクションルーム

古今東西の珍品が掻き集められたコレクションルーム。ガラスケースの中には奇妙な形の墨壺、年代不明の棺、不可思議な文様の刻まれた円盤などがライトアップされている。異様なアトモスフィアだ。
ほとんどのものは大き過ぎて持ち運びが出来ないが、部屋の奥に飾られたカタナは別だ。無骨だが高度な技術で鍛え上げられた、殺しのための武器。『死んだ魚』のショドーの下に置かれたデッドフィッシュ・ヤクザクランの誇りである名刀「ホネキリ」だ。

タカハシのコレクションルームには多数のレリックが収められている。あまりにも大きく、ビッグニンジャでもなければ持ち運びは不可能だ。
奥に飾られた「ホネキリ」は例外だが、これを守るため非道トラップが仕掛けられている。これを奪おうとするキャラクターは【ニューロン】難易度HARDの判定を行わなければならない。失敗した場合、以下のトラップに気付くことが出来ず、作動させてしまう

「毒ガストラップルーム」
発動した段階で部屋は封鎖され、毒ガスが噴出される。
この部屋にいるすべてのキャラクターは毎ターン終了時に【カラテ】難易度U-HARDを行い、
失敗した場合1ダメージを受ける。
(軽減不可。《◉頑強なる肉体》や毒に対するダメージ軽減などは適用可能)。

封鎖された扉を開くには、【ワザマエ】難易度U-HARDに成功しなければならない。
破壊する場合、扉は『体力:6』、『あらゆる攻撃に対するダメージ軽減1』を持つ。

このトラップに気付いたキャラクターは、解除を試みられる。難易度は【ワザマエ】難易度U-HARDだ(《◉トラップ処理技術》の対象になる)。
『ホネキリ』は「*業物のカタナ*」として扱われ、この武器を使用して行う近接攻撃のダイスは+1される。余暇で更なる強化を行うことも可能だ。

暗殺後

暗殺を行った、あるいは達成を諦め逃亡する場合、『脱』マスからPCは脱出することが出来る。料理人を買収していない場合、裏口の門は閉まっており、【ワザマエ】難易度HARDの判定に成功しない限り通過することが出来ない。この門は手番『攻撃フェイズ』に1行動を消費することで行える。何度でも行えるが、1ターンに挑戦出来るのは1人までだ。

【エンディング】

エンディングにはいくつかパターンが存在する:
①タカハシを殺害し脱出した
②暗殺に失敗し、逃走した
③逃走に失敗した
それぞれの結末は以下の通りである。

①タカハシを殺害し脱出した

無事に任務を達成した君たちは、フルタマ再開発地区にある古ぼけたアパートに足を運んでいた。暗黒メガコーポの乱開発によって住処を奪われた人々は、破壊者の甘い言葉に誘われここに来る。『寝食と安全を保障』『8時労働』『借地を買うことも出来る』……そうして彼らは、いつ終わるとも知れない過酷な低賃金肉体労働を強いられる。
こうした物件は人の出入りが激しく余所者があまり警戒されない。疲れ切った労働者たちには、他人への注意を向ける余裕すらない。

ハ号棟49号室。殺風景な部屋――今度は現実だ――の真ん中に小さな丸テーブルがあり、その上に大振りなアタッシュケースとIRC端末が置かれている。君たちが入って来たのを見計らったかのように端末が振動し、着信を告げた。

「ドーモ、お世話になっております」

くぐもった声だが、それが『笑い爺』のものだと君たちには分かる。

「いまから言う番号をケースに入力してください。なお、間違えた場合報酬は焼却されるのでご注意ください」

震える手で『笑い爺』の指示に従い、テンキーを入力する。ガコンプシュー、白い蒸気が吐き出され、ケースの蓋が開く。中に入っていたのは信頼性の高い旧円の万冊束、すべて本物だ。
君たちが金を受け取ると、ケースは発火し、端末から黒い煙が上がった。クライアントに繋がる情報は永遠に失われた。君たちも身を隠すべきだ。デッドフィッシュの残党がオヤブンの仇を取りに来ないとも限らないのだから。

②暗殺に失敗し、逃走した

しくじった君たちは薄汚れたストリートをあてもなく逃げ回った。失敗すれば切り捨てられる。デッドフィッシュは今頃君たちに懸賞金をかけ追いかけているだろう。
とはいえ命はある。ハクが付いたと言えないこともないだろう。生きて帰れたらの話だが……

③脱出することが出来なかった:

あなたたちはヤクザによって殺害され、死体はスマキにされタマ・リバーに放り込まれた。そのうちラッコの腹に収まるだろう。
望むなら、セッション終了後に「アンセレクテッド・リザレクション現象」を起こしてもよい。その際、ニンジャとなって蘇ることに成功したなら、ふわふわローンの一切は減免される。死んだ人間からは金を取れないからだ。

【評価と報酬】

【自動車爆弾、ないしはその他の手段で私邸に侵入せずタカハシを殺害した】
 万札プール+40、『名声』+1
【タカハシを殺害し脱出した】
 万札プール+30、『名声』+1 
【暗殺に失敗し、逃走した】
 万札プール+0  クローンヤクザの殺害、探索による【万札】は通常通り獲得出来る
 また、『ホネキリ』を所持しているPCが逃走に成功したなら、全員の『名声』+1

【隠された背景】

デッドフィッシュ・ヤクザクランは急成長を遂げた半面、多くの敵を作っていた。また、クラン内部からもタカハシの治世に対する不満が渦巻いていた。これをうまく突いたのが西のザイバツ・シャドーギルドだ。彼らはニンジャ戦力を用いることなくして内紛を起こさせ、ソウカイヤの勢力を削り取った。主を失ったデッドフィッシュは血を血で洗う熾烈な権力闘争の時代を迎え、連鎖的に火は広がっていくだろう。

……ここまでが、ザイバツの下級構成員が把握している情報だ。ワイルドハントとアンバサダー、そして恐るべきグランドマスターが真に関心を持っているのはコレクションルームの棺である。

棺は古代ニンジャ文明の遺物であり、中には本物のニンジャミイラが納められている。タカハシはその価値と危険性を理解していないが、一度手に入れたものを手放すこともない。ザイバツはこうしたニンジャレリックを回収、ないしは破壊し、来るべき千年帝国の礎にしようとしている。

棺に納められているのは『ゴグウ・ニンジャ』。現在は力の枯渇によって眠りについているが、なんらかのアクシデントによって目覚めてしまったなら、その場にいる全員に速やかな破滅をもたらすだろう。

ゴグウ・ニンジャが覚醒した場合、すべてのニンジャは難易度HARD、モータルは難易度U-HARDのNRS判定を行う。ゴグウ・ニンジャは次のターンから行動を開始し、一番最初に手番を得る。ゴグウ・ニンジャは壁や移動距離を無視して一番多くのキャラがいる部屋(または庭)に移動して、同じ部屋にいるすべてのキャラに自動的に『火炎属性ダメージ1』『装甲貫通2』を与える。これはジツによる射撃として扱い、射線を無視して隣接状態のキャラにもダメージを与える。

ゴグウ・ニンジャはあらゆる射撃攻撃を自動的に回避する。もし無謀にも近接攻撃を仕掛けたなら、ゴグウ・ニンジャはあまりのいじらしさに回避を行わない。通常通りダメージを受けるが、ゴグウ・ニンジャの肉体は燃え盛るカトンの炉そのものであり、攻撃を行ったキャラは自動的に『火炎属性ダメージ1』『装甲貫通2』を受ける。加えて、毎手番開始時に『体力』を1回復する。

ゴグウ・ニンジャに対して単なるモータルやサンシタニンジャが出来ることは何もない。少なくとも『成長の壁』を2つ以上越えたキャラでなければ、ゴグウ・ニンジャに回避判定を行わせる(=攻撃を命中させられる)ことは出来ない。

【謝辞】

本シナリオのMAPはネヤ=サンが作成したテンプレートを使用しています。
【NJRPG-2ND/プレイエイド】ネヤ式カスタムキャラクターシートV2ND-1.2.0|ネヤ (note.com)
こちらのキャラクターシートにデータを入力し、MAPの右側にある「キャラシURL」の欄にURLを入力すると自動的にデータを入力してくれます。

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