ベトナム音楽探訪~ベトナム戦争後のポピュラー音楽

東西冷戦期に南北に分断していたベトナムでは、ポピュラー音楽はアメリカの影響下にあった南部で発展していた。
1960年代~70年代にかけては、世界のトレンドに合わせて南ベトナムではツイストやロックンロール、サイケデリックロック・ポップス、ソウル・R&Bなどを演じる歌手や音楽家も登場していき、当時はレコードも数多くリリースされていたようだ。

ベトナム戦争の影響で多くのレコードは紛失・散逸して、長らく聴くことは困難であったが、この十数年その時代の音源が発掘され、このようなコンピレーションがリリースされるようになった。

またネット環境の発達によって、さらに埋もれていた数多くの音源がYouTubeなどで手軽に聴けるようになった。


ところで、ベトナム戦争は北部共産主義勢力の勝利に終わり、戦後しばらくは大衆音楽・ポピュラーミュージックは規制が厳しくなり、南部で活動していた歌手や音楽家はアメリカへ亡命していった。
その後、アメリカでは亡命ベトナム人向けのレコード会社や芸能事務所などが設立されていき、改革開放後しばらく経過までの1980年代から90年代にかけては本国(細々ながらリリースされていたようだが)ではなくアメリカで多くの作品がリリースされていった。
とはいえその多くはボレロと呼ばれる叙情的な歌謡曲のような音楽だったが、欧米のトレンドだったニューウェーブやディスコのような音源もあるのではないかと調べていたらいくつか見つかった。
そんな中で特によかったのがこちら。

この男女デュオ、戦前には本国でかなり人気を博し活躍していたようで、先にあげた「Saigon Rock & Soul」のコンピにも当時の音源が収録されていた。日本で例えればGS時代に活躍してた歌手がのちにニューウェーブやエレクトロ・ディスコの作品をリリースしたかのような趣きがあって興味深い。


一方、当初よりアメリカで活動をする世代も登場する。彼女は1960年生まれで、こちらも先に紹介した「Saigon Rock & Soul」に収録されている歌手 Elvis Phương の妹だが、80年代後半にアメリカでデビュー。
ジャケにNew Wave とあるが、音楽的にはユーロビートやイタロディスコで、日本でいえば荻野目洋子などが歌ってたような作風。

この辺の音源も多数あると思われるが、米ベトナムコミュニティ向けにリリースされていたもので、長年埋もれているようでなかなか日の目を浴びなかった。
しかしながら近年、在米ベトナム人2世のプロデューサー Demonslayer がそれらを発掘しエディット(CDも出てたようだが、当時の音源はカセットテープリリースが主流で音質的に貧弱なため現在のリスニングやDJプレイで対応できるように編集)した作品をリリースしている。
これに続いて次世代の活躍により、更に埋もれた音源が日の目をあたることが期待される。


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