思い出、夕日と
目を瞑る。
全部包んでくれる大きな光の前で。
温かいそれを浴びながら。
整理された川辺、橋の下の
木製の二人掛けベンチに
一人で座って。
潮の香りを含んだ秋風も
今は柔らかく感じられる。
橙色の影が熱を持った思考回路を
見えない指先で優しく撫でて
宥めてくれているような気がして
泣きそうになる。
川面はキラキラと揺れて。
ゆっくりと日が沈んでいく。
夕焼けから目を離せば、
一番星が遠くで光っていて。
夜が来ればオレンジ色の街灯が
川面に映る。
そうすればここも、
背中で灯っていく繁華街の仲間入り。
眼前の岸壁にはちゃぷちゃぷと
遊ぶように波が寄せるけれど、
浮かぶ白いかもめは知らんふり。
一羽でそっと
どんなことを考えて浮かぶのだろう。
明かりの隙間、ゆらゆらと。
闇が深まれば、夜の街に人は集まる。
夜が賑やかで明るいここは
知らない人も知っている人も、
良い人も悪い人も。
関係なく、ここでは一人の人間で。
一夜の触れ合い、一夜の擦れ違い。
そのときだけの縁、そのときに結ばれる縁。
いろんな物語がそこでは
繰り広げられていて。
…誰のことも知らないけれど
寂しくなくなれる場所。
夜に紛れながら。
孤独を紛らわす。
明日もまた昇って、沈んでいく夕日は。
昼と夜の隙間、虚の部分を繋いで
人々の営みをいつもそっと
見守ってくれている。
そんな気がするからなのかな、ここに来たくなるのは。