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ある週末サーファーの記録042 オーシャンシティ 2

 オーシャンシティはその名のとおり、海辺の町である。ビーチ沿いには幅20mほどの木製のボードウォークが海岸と並行に数キロ敷かれており、その脇にはレストラン、アイスクリームやポップコーンを売る店、レンタルサイクル、衣料品店などが立ち並ぶ。大きな観覧車が目を引く立派な遊園地まである。いずれも冬季は休業中だが夏はさぞや賑わうのだろう。地元の住民は冬でもボードウォーク上のウォーキングやジョギングに熱心だ。これほど多くの施設を夏場の数か月間しか稼働させないのは壮大な無駄ではないかと思うが、反面アメリカらしいおおらかさも感じる。

 ボードウォークから一本内陸側に、海岸線と並行して走るメインストリートがあった。目当てのサーフショップはその道沿いだった。入ってみるとその店はアパレル中心のショップではなく、新品、中古のサーフボード、スケートボード、スキムボード、ウェットスーツなどが揃う「本格的な」サーフショップだった。さっき見た波の様子とこのショップのギアの充実ぶりには明らかなギャップがある気がするが、もしかしたら付近に良いポイントがあるのかもしれない。

 「昨日の朝は結構良かったけどね」
 この辺りのサーフィン情報を尋ねたら、若い店員が教えてくれた。驚くことに私がさっき見ていたポイントだという。彼にとっての「良かった」が実際どういう波だったのかは知るよしもないが、こればかりは主観なのでどうしようもない。
 「アサティーグに行ってみたら?」
 何度か聞き返して、ようやく聞き取れたのはオーシャンシティから車で15分ほど南に行ったところにある島のことだった。

 「アサティーグ(Assateague)」は南北に60kmの細長い洲のような島だ。大陸とは橋で繋がっている。後に知ったが、島は自然保護区になっており、野生化した馬が見られることで有名だという。

 実際に見に行ったアサティーグのポイントはオーシャンシティほどではないが、急深な地形に変わりはなかった。オーシャンシティより多少は沖よりでブレイクしていたが、白砂のだだっ広いビーチには波の起点となるような地形的特徴や構造物などはなく、あちらこちらで散漫に波が割れているような状況だった。風が合っていたとしても長く乗れる波はなさそうだった。

 「仕切り直しだな・・」
 その日は海には入らず、3時間の家路に着いた。

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