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ある週末サーファーの記録040 オカンダ 4 完

 オカンダには3日間通った。トゥクトゥクの彼は翌朝も5時にいつもの乗り場で私を待ってくれていた。「家族を食わせるため」にトゥクトゥクのドライバーをしているという彼にとって私はまあまあの上客だったのだろう。

 オカンダに到着後「アルガンベイに戻って、後で迎えに来てくれれば良いよ」と私は彼に言ったが、1時間以上かけてオカンダとアルガンベイを往復しても利はないと思ったのだろう。私が波乗りを終えて海から上がってくるまでの3時間近く、彼はビーチ沿いに生える木の枝に腰掛けて足をぶらぶらとさせながら海を眺めていた。

 オカンダは毎朝良い波だった。サーファーも常に2、3人。遠く沖からやって来るウネリが岩の横でこんもりと三角形の波に変わる。ゆったりとパドルをしてテイクオフの位置に身体とボードを持っていく。余裕のあるテイクオフから徐々に波がそそり立っていく。実に長閑で穏やかな雰囲気の中で、私はその優しく長い波を気ままに楽しんだ。何本も。

 日本から10時間近く飛行機に乗って、夜通し車を飛ばしてたどり着いたところから更にトゥクトゥクで小一時間。野生の象が頻繁に出る場所で出会えた理想的な波だった。この波のためだけに時間とお金をかけてトリップする。サーフィンをしない人からすれば酔狂に見えるだろうが、私にはそれはとても贅沢な体験だった。

 海から上がると、大柄な体形に似合わず、トゥクトゥクのドライバーがひょいと枝から飛び下りてきた。「サーフィン上手だね」と褒めてくれた。リップサービスだが嬉しくなる。

 オカンダの他にも「ウィスキーポイント(Whisky Point)」というアルガンベイ近くのポイントにも入った。ここもメインポイントほどは混雑しておらず、なかなか良い波だった。ただ、オカンダほど魅力的なポイントには感じられなかった。波に加えて、そこまでの道のり、ビーチや他のサーファーの雰囲気、全ての面でオカンダは特別に見えた。

 独りぼっちのツアー最終日、その日の夜の帰国便に乗るために朝アルガンベイを出発した。早朝アルガンベイとのお別れの短めのセッションを終えてホテルをチェックアウト。来た時と同じハイエースに乗り込んだ。今度は日中を通してコロンボに向かう。夜には気づかなかったが道路の大半は住民の生活道路になっていた。昼はところどころ渋滞もあり、夜ほどは飛ばせない。来たときより2時間近くさらにかかってコロンボの空港に到着した。

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 「サーフィンとは自然の中で自由を探す行為だ」

 フリーサーファーのロブ・マチャドはそう言ったという。たしかに、彼のライディングはどんな海であっても自由に見える。私はサーフィンに行ってもなかなか自由になれる感じがしない。それでも、今日は思いっきり自由なセッションができるかもと淡い期待を抱きながら今週末も海に向かう。

 振り返ってみれば、この旅はやはりツイていたと思う。オカンダでは自由を見つけることができた気がするから。

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