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ある週末サーファーの記録039 オカンダ 3

 私の滞在中、アルガンベイのメインポイントにはいつも素晴らしい波があったが、そこでのサーフィンはどこか落ち着かない、自分の居場所が見つからない、そんな感じだった。暴力が生まれる雰囲気は海上でも感じられた。

 幸い、今回のスリランカ・ツアーのパッケージに、現地サーフツアー1回無料という特典が含まれていた。メインポイント以外の場所で波に乗れるのはありがたかった。

 そのツアーで連れて行ってもらったのが「オカンダ(Okanda)」というポイントだった。アルガンベイから南に約30km。自然保護区のダートロードを抜けた先にそのビーチはあった。海岸の岸側から向かって右奥に波に洗われた滑らかな巨岩が二体あり、その辺りから左方向に綺麗な波が割れていた。アルガンベイの喧騒とは打って変わって、外国人サーファーが2、3人だけ。近くに寺院があるようで、地元の参拝者がゆったり、やや赤みがかった白砂の浜を歩いている。

 ドライバーは私をビーチで下ろし「好きなだけ波乗りしてこい」といって、木陰に停めた車内で昼寝を始めた。パッケージに含まれているサーフツアーは、実際にはアルガンベイの近場のサーフスポット(この時はオカンダ)まで車で送迎してもらえるだけのものだった。

 湿ったそよ風を受けながら、岩の方まで砂浜を歩く。視界に入ってくるその風景が「あの夏は忘れない」で見た原色の映像とオーバーラップする。1つ目の岩を越えて2つ目の岩の手前から入水。波を食らうことなくすぐに先客のサーファーたちが波待ちしているあたりにパドルでたどり着いた。彼らと目が合ったら軽く微笑む。後は順番で波に乗るだけだった。

 オカンダのブレイクは早過ぎず、しかし、しっかりとショルダーが張り何度もターンができる長い波だった。サイズは胸くらい。最後まで乗り切ったら砂浜に上がり、岩まで歩いて戻る。常時3人くらいのサーファーがそうやってグルグルと波に乗ってを繰り返す。そこは私にとっては考え得る限りの最高の条件を備えているポイントだった。

 翌日からこのポイントに通うことになった。アルガンベイのメインポイントの入口付近に観光客向けのトゥクトゥクが数台待機しているポイントがあり、その前を通るたびに「乗らないか?」と声をかけられていた。そこにいたトゥクトゥクドライバーの一人を捕まえて、朝5時頃に待ち合わせることにした。翌朝暗いうちにホテルを出る。ドライバーは律儀に私を待っていた。トゥクトゥクの屋根の上にボードをくくり付ける。オカンダまで小一時間。快適なスピードで走るトゥクトゥクから見るスリランカの朝焼けは、何かとても有り難いものに見えた。

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