3:細かいテクニック

という訳で今回は、応用テクニック講座です。
ちょっと長いので気長に読んでください。

【一文に主語術語は一組まで】
主語述語がたくさんあると読者が混乱します。
俺が君に言ったのに君は彼に俺の言葉を伝えた。
とか、意味が分からないですよね?
できるだけ簡潔にするのが大事です。

【五感をフルに活用する】
視覚や聴覚は描写しやすいのですが、嗅覚は忘れがちです。
しかし嗅覚は最も記憶に直結しているので、書かないのはもったいなかったりします。
触覚を書くと臨場感が出ますし、味覚は感情を表すのに最適です。

【リズミカルな文章】
日本人は五・七・五のリズムが好きですよね。
他にも色々なリズムがありますが、「歌のようにリズムを合わせる」と非常に読みやすい文章となります。
一文の長さを読点(、)で調整したり、長くなり過ぎたら無理やり二文に分けたりすると良いです。

それは何故か。人は文章を読む時に音声として脳内変換する事が多いからです(私は当てはまりませんがw)
なので、文章を書いたら一度音読する事をオススメしています。

そうする事で誤字脱字も減り、より読みやすい文章に作り替えることが出来るのです。

【文末の母音は合わせない】
文末(一行の終わり)に来る言葉の母音はできるだけ連続しないようにずらします。
〜だった。〜だ。
と繋がると、ちょっとだけ読みにくくなります。
この場合は 〜です。〜する。
などを使うと良いと思います。

初級でやった文章を例にしてみます。
元の文がこちらです。
ーーーー
「もう一度だ! くらえ!」

 また同じようにもふっとパンチが当たった。
 でも、今度はくろひつじは笑わなかった。
ーーーー
これを書き直してみます。
ーーーー
「もう一度だ! くらえ!」

 また同じように、もふっとパンチが当たる。
 でも、今度はくろひつじは笑わなかった。
ーーーー

一言変えただけですが、頭の中で変化し読みやすくなったと思います。

【描写はとにかく書きまくる】
例えばですが、最初にやった「パンチをした」という文がありますよね。
これ、どのようにパンチしてるか分からないと思いませんか?
それを伝えるために色々工夫して説明描写を書く訳です。
そして、最初は「一目で分かるくらい書きすぎましょう」

一例ですが、私の場合だと「パンチをした」は以下のようになります。

ーーーー
暖かな春の陽射しの中。
桜が咲き誇る公園で、俺たちは緊張感を漂わせながら向かい合っていた。
脇を引き締め、右手を腰に。左手は真っ直ぐ前へ。
左半身を前にした空手のスタイルで、ギラリと敵を睨みつける。

腰を深く落として、一息。
刹那、大きく踏み込んで敵の懐に入り込んだ。
その衝撃と風圧で、地に零れていた桜の花びらが舞い上がる。

踏み込みの勢いを力に変え、反応すら許さぬ速度で一直線に。
固く握りしめた拳を、撃ち込んだ。

狙い違わず敵の胸に吸い込まれた拳は、ゴキリと骨を砕く感触を返しくる。出応え有り。

吹き荒れた桜の花びらが舞い落ちると同時。
敵の体がゆっくりと地に倒れ伏す。

残心。そのままの体勢で敵を睨む。
しかし、ピクリとも動けない様を見て、俺は大きく息を吐き出しながら構えを解いた。
ーーーー

はい。長いですね。ですがこれでも足りないくらいです。
最初はとにかくいっぱい書いて、後で見直す時に不要な部分を削りましょう。

【感情の起伏を作る】
緊張からの緩和。日常からの非日常。
それらの「相反する状況」は読者の心を動かします。
つまり、感動する、という事です。
面白い作品はそれが上手いので、意識してみて読んでみると良いと思います(なお、くろひつじもあまり出来ていない模様)

【何故その言葉を書くのか】
見直す時に意識してみてください。

「この言葉は必要か」
「この言葉は不要ではないか」
「意味が重複してないか」

これを気にしながら見直すと自然な文章になります(私はよく忘れて後で慌てます)

【得意、苦手】
ところで「くろひつじ」の作風はご存知でしょうか。
全体を通して「戦闘描写」だけは上手く、他はそうでも無いらしいですw
私はちょっと特殊かもしれませんが、誰しも得意分野と苦手分野があります。
自分では中々気付けない部分なので、思い切って誰かに読んでもらいましょう。
但し、一人の意見だけを信じ過ぎないこと。できるだけ沢山の人に読んでもらい、共通点を探しましょう。

【くろひつじの書き方】
特に戦闘描写において心掛けていることは「自分の動きを文章化する」事です。

歩く。それはどのように筋肉を使い、骨を使い、皮膚を使うのか。
血の流れはどのように動いているのか。
どのように考えながら歩くのか。
私はまず、ここまでを考えます。

その後、「歩くことによって何が起こるか」です。
本人は前に進みます。足元の土は窪みます。
移動によって風が起こり、砂煙が舞います。
陽射しを遮る角度が変わり、影が動きます。
本人の見えるものも変わり、聞こえる音が変わり、香る匂いも変わります。
肌は風を受けます。衣擦れが起きて、布が小さく鳴ります。

こうやって「シーンの解像度を高くする」ことが重要です。
書かなくても良いところまで想像すること。些細な事まで思い出し、頭の中で作り出す。再構築する。
そうやって「動き」が書き出されます。

ここまでが「本人」の結果です。
戦闘描写となると、当たり前ですが敵がいます。
そうなると、敵にも動きが発生します。これも同じように解像度を高め、想像します。
私が練習している時は、頭の中でまとまらないなら全てを書いて、あとで不要な部分を消していますね。

後は装飾語です。パンチをする、にしても例えば。
鋭い拳、鈍く重い拳、突き刺さる拳、風を切る拳、一直線に敵に伸びる拳、空間を削ぐような拳。
結果にしても。
敵の胸の中央に吸い込まれた、容易く手の平に受け止められた、腕で外側に弾かれた、紙一重で避けられた。
様々な言い回しができます。
ここは語彙によるものなので、私はひたすら活字を読みました。

動き、結果、装飾。
これらを組み合わせて「戦闘描写という小説」を書ける濃度に圧縮します。

後は他の描写にも言えますが、カメラの視点です。
読者にどこを見せたいのか、どのように見て欲しいのか。その為には何から描写すべきか。
頭の中で文章を追った時のリズムは適切か。速い戦闘ならテンポ良く、重厚な戦闘なら緻密に。
ボクシングのジャブと空手の正拳突きでは一文の長さが変わってきます。
目だけではなく、音や匂い、触覚を文字に起こすことも大事です。
例えば。
ーーーー
男の細身の剣が風を斬り裂き、敵の盾を掻い潜って鋭い一撃を放った。
しかし、咄嗟に突き出された剣によって紙一重で受けられた。
金属の擦れる音。鉄錆のような血の匂い。
吐息を感じるほど近くに、憤怒に染まった敵の眼があった。
ーーーー
こんな感じです。
この場合、カメラは定点。遠くから寄っていき、五感を伝えるに至っています。

まずはイメージしてください。そのイメージを分解して文字にしてください。
そして、どのような順番で書くか、何を一番見せたいか。
それが決まったらリズムを取りながら盛り上げる。という流れです。


【難しい言葉は必要ではない】
小説とは「自分の空想を他者に伝える」ものです。

いきなりインド語で喋られてもまったく意味が分かりませんよね?
相手に伝わるよう、相手が分かるように書くのが上手い作者です。

もちろん、あえて難しい言葉を使う作風もあります。ですがそれは、言ってしまえば職人芸です。簡単には真似出来ないと思った方が良いです。
まずは簡単な言葉から。それこそ小学生でも読める文章に仕上げるのが理想ではないかと思います。

【読者は何を読みに来ているのか】
貴方の作品を手に取った人は何を期待しているのでしょうか。

タイトルやあらすじからある程度の作風は読めます。しかし、その予想と内容が違った場合、ほとんどの読者は読むのをやめてしまいます。
誰だってうどん食べに行ってハンバーガー出されたら嫌ですよね?

読者の側に立って考えるのはとても大事なことです。

【まずは見せ場を持ってくる】
web小説に限った話になるのですが、読者は2~3話、多くても5話程読んでから続きを読むかを決めます。
それは、本と違ってお金を払う必要がないからです。
お金の代わりに時間を使うわけですね。
なので、早い段階で見せ場を持ってきましょう。
作品の序盤から動きがあると読者を引き付けやすいです。

【小説とは娯楽です】
当たり前の話だと思いますか?
私はこれを理解していませんでした。
何故か。主語が違うんですね。
読者にとってだけではなく、「作者にとっても娯楽」なんです。
自分が「楽しい!」「面白い!」と思わない作品は誰が読んでもつまらないです。
作品の最初のファンは作者自身なのです。

次の講座はこちら!

「4:戦闘シーン特集」


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