恋の幕が上がるとき(松尾美佑_前編)
松尾美佑は、乃木坂大学芸術学部の1年生として忙しい毎日を送っていた。彼女は千葉の実家を離れ、東京で新たな生活を始めた。子供の頃からの夢だった舞台女優になるため、毎日熱心に勉強と稽古に励んでいた。
その美しさとスタイルの良さから、彼女は周りの注目を常に集めていた。男子学生たちからも頻繁に声をかけられることが多かったが、美佑はそれに対して辟易としていた。
彼女は自然と近寄りがたい雰囲気を作り、無駄な接触を避けるようになっていた。そんな彼女にとって、心を許せる数少ない友人が、矢久保美緒とその双子の弟、〇〇だった。
美緒とは、大学の必修科目で知り合った。美緒の明るく人懐っこい性格は、美佑にとって居心地の良い存在だった。
弟の〇〇も芸術学部に所属しており、舞台裏方に興味を持っているという。美緒と似た雰囲気を持つ〇〇は、美佑にとっても親しみやすい存在だった。
三人で一緒に遊びに行くことが増え、自然と距離も縮まっていった。〇〇は、彼の穏やかな物腰と真摯な態度で、美佑の心を徐々に捉えていった。彼女は最初、ただの友達として〇〇を見ていたが、彼と過ごす時間が増えるにつれて、彼に対する感情が変わり始めた。
ある日、美佑は〇〇に舞台デートを提案した。
美佑「ねぇ、今度の週末、舞台を見に行かない?」
デートに誘われることは多かったが、自分から男子を誘うのは初めてで、少し勇気が必要だった。しかし、彼のいつもの穏やかな笑顔が返ってきて、彼女は安心した。
〇〇「もちろん、行こうよ。美佑と一緒に行くの楽しみだな。」
その言葉に美佑は、内心で喜びを感じながらも、自然に微笑み返すことができた。
週末、二人は渋谷の劇場で待ち合わせをした。劇場の前に立つ美佑は、少し緊張していた。普段はそんなに意識しないのに、今日はどうしてこんなにドキドキするのだろう? 彼女は自問しながら、〇〇の到着を待った。
劇場内に入ると、二人は隣同士の席に座り、舞台が始まるのを待った。劇場の暗闇の中、舞台の光に照らされた俳優たちが繰り広げる演技に、美佑はすっかり引き込まれていた。舞台上の情熱的な演技に心を奪われながらも、隣に座る〇〇の存在が気になって仕方がなかった。彼の横顔が、光と影のコントラストで際立って見え、胸が高鳴る。
舞台が終わり、明るくなった劇場内で彼と目が合うと、美佑は慌てて視線をそらした。彼女は自分の心がどうしてこんなにも乱れているのか理解できなかったが、確実に彼に対する気持ちが変わってきているのを感じていた。
その後、二人は劇場を出て、近くのカフェで休むことにした。カフェでの会話も、いつものように自然で楽しかった。その後、〇〇はレジでお会計を済ませた後、美佑に席に座って待っててと言って、席を立ち、トイレに行った。
彼が席を離れた後、美佑は一人カフェに残され、ぼんやりとコーヒーカップを見つめていた。すると突然、見知らぬ男子が近づいてきた。
男性1「こんにちは。さっきから気になってたんだけど、君ってすごく綺麗だね。よかったら一緒にお茶でもしない?」
突然の言葉に美佑は戸惑った。彼女は目の前の男子を無視しようとしたが、相手はしつこく話しかけてきた。周りの視線も気になり、どうにかしてこの状況を切り抜けなければと焦り始めた。
そんな時、〇〇が戻ってきた。
〇〇「ごめん、美佑、待たせたね。」
彼は自然に美佑の肩に手を置き、彼女を守るような態度を取った。
その瞬間、美佑の心は大きく揺れた。彼の優しい声と、温かい手の感触が彼女の胸に響いた。
美佑「ありがとう……助かった」
と、顔を赤らめながら美佑は言葉を絞り出した。彼の存在が、今まで以上に大きく感じられた。
カフェを出た後も、美佑は彼に対する感情が抑えきれなかった。彼の隣にいるだけで、心臓が早鐘のように打ち続けていた。そんな自分に戸惑いながらも、彼女は一つの決意を固めた。
美佑「私……多分、〇〇のことが好きなんだ。」
その感情に気づいた美佑は、次の舞台デートで、彼に自分の気持ちを伝えることを心に誓った。それが彼女の新たな一歩となることを信じていた。
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