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恋の幕が上がるとき(松尾美佑_後編)

次の週末、美佑は再び〇〇とのデートに臨んでいた。今回は、彼女の心にはっきりとした目的があった。彼に告白する。それが彼女の心の中で固まった決意だった。

待ち合わせ場所に現れた〇〇は、いつも通りの穏やかな笑顔で美佑を迎えた。

〇〇「今日も楽しみだね、どんな舞台になるか期待してるよ。」

美佑「うん、私もすごく楽しみにしてたの。」

美佑の言葉には、少しの緊張が混じっていたが、〇〇はそれに気づかずに微笑んでくれた。

今回の舞台もまた、彼女の心を揺さぶる内容だった。舞台の中で繰り広げられる恋愛劇が、彼女自身の心境と重なる部分が多く、ますます〇〇への想いを強くしていった。

舞台が終わった後、二人は劇場を出て、次の目的地に向かった。そこは、彼女が以前から行ってみたかったカフェだった。

カフェに入ると、美佑は一息つき、心の中で今日の計画を再確認した。

美佑「〇〇、今日はありがとうね。一緒に来てくれてすごく嬉しい。」

彼女は感謝の気持ちを伝えながら、心の準備を整えていた。

〇〇「俺も楽しかったよ。美佑と一緒だと、なんだか落ち着くんだよね。」

その言葉に、美佑の心は一層暖かくなった。しかし、同時に彼に対する想いが、心の中で溢れ出しそうになった。カフェでのひと時が過ぎると、美佑はついに自分の気持ちを伝える時が来たと感じた。

彼が次のデートの計画について話し始めた時、彼女はその言葉を遮って言った。

美佑「〇〇、私……あなたのことが好きなの。」

美佑の言葉は、緊張と共に彼女の口から零れ落ちた。彼女は、彼がどう反応するかを恐れていたが、もう止まらなかった。〇〇は一瞬驚いたように彼女を見つめた。しかし、すぐに彼の表情は柔らかくなり、微笑みながらこう答えた。

〇〇「美佑、ありがとう。実は、俺も君のことが好きだったんだ。でも、君はいつもクールで、近づきにくい感じだったから、自分の気持ちを伝えるのが怖くて……でも、今こうして気持ちを伝えてくれて、本当に嬉しい。」

美佑はその言葉に心が解放されるような感覚を覚えた。彼も同じ気持ちだったことに、驚きと共に安心感が湧き上がってきた。今までの不安が一気に消え去り、彼女の心は幸福感で満たされた。

美佑「本当に……? 〇〇も私のこと、そんな風に思ってくれてたんだ。」  

美佑の声は、まだ少し震えていたが、彼の目をしっかりと見つめていた。

〇〇「うん。だから、これからも一緒にいろんな舞台を見に行ったり、いろんな場所に行ったりしたい。もちろん、もっと美佑ちゃんのことを知りたいし、美佑ちゃんに俺のことも知ってもらいたい。」

〇〇の言葉に、美佑は大きく頷いた。彼との未来が、一気に鮮明に描かれるような気がした。これから二人で過ごす時間が楽しみで仕方がなかった。

その後、二人はカフェを出て、夜の街を並んで歩き始めた。手を繋ぐかどうか少し迷ったが、〇〇が優しく彼女の手を握り、自然にその迷いを解消してくれた。彼の手は温かく、安心感が伝わってきた。

美佑「ねぇ、これからもずっと一緒にいられるといいな。」  

美佑はそう呟きながら、彼の横顔を見つめた。

〇〇「もちろんだよ。これからも、ずっと一緒にいよう。」  

〇〇も笑顔で答え、彼女の手を優しく握り返した。

その夜、彼女はベッドに入っても興奮が冷めず、ずっと〇〇のことを考えていた。自分の気持ちを伝えられたこと、そして彼も同じ気持ちでいてくれたことに、喜びを噛み締めていた。

次の日、大学で矢久保美緒に会った美佑は、少し照れながらも報告した。

美佑「ねぇ、矢久保ちゃん、私……昨日、〇〇に告白したの。」

美緒はにっこりと笑って言った。

美緒「やっぱりね! すごいじゃん、やっとだね。おめでとう!」  

その言葉に、美佑はさらに幸せを感じた。美緒が最初から二人のことを見守ってくれていたことが、彼女にはとても嬉しかった。

これからの大学生活が、さらに楽しくなることを確信し、美佑は前を向いて歩き始めた。彼女の夢である舞台女優になるための道のりはまだ続くが、その先に〇〇と共に歩む未来が待っていることが、彼女の心を強く支えていた。

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