嫉妬深い君が好き(4)
春の陽気が教室に差し込む中、新学期最初の英語の授業が始まった。教室の中は新しいクラスメートたちのざわめきと、少しの緊張感が漂っている。〇〇はその中で、いつものように静かに席に座り、授業の準備をしていた。。
茉央「おはよう、〇〇!」
前を向くと茉央の元気な声が聞こえてきた。
〇〇「おはよう、茉央。」
茉央「いろはちゃんも、おはよう。」
茉央が軽やかに声をかける。
いろは「おはよう、茉央ちゃん。」
いろはは優しい笑顔で応えた。彼女たち三人は自然と仲良くなり、日常の一部のように一緒にいることが多くなっていた。
少しすると、教師が教室に入ってきて授業が始まった。今日の英語の授業は教科書の音読と翻訳が中心だ。〇〇は自分のカバンを探って、教科書を取り出そうとしたが――そこには、教科書がない。
〇〇「やばい、忘れた…」
〇〇は小さな声でつぶやいた。
その様子を隣の席の菅原咲月が気づいて、優しく声をかけてきた。
咲月「教科書、忘れちゃったの?」
〇〇「うん…」
〇〇は少し照れながら頷いた。彼にとって、咲月はまだ慣れない相手だった。彼女は東京から転校してきたばかりで、クラスの中ではすでにマドンナ的な存在となっていた。
咲月「じゃあ、一緒に見ようか?」
咲月は自然に彼に教科書を差し出し、席を少し寄せた。
〇〇「ありがとう…」
〇〇は少し照れくさそうにしながらも、彼女の提案を受け入れた。二人の距離が近くなり、〇〇はますます緊張してきた。咲月の香りと、彼女の柔らかい声が彼の心をくすぐる。
咲月「ここ、読むよ。」
咲月は教科書の一節を指差し、優しく語りかけた。その声に導かれるように、〇〇は一緒に音読を始めたが、心の中では自分がこの状況にいることを信じられないでいた。
授業が終わり、咲月は「また教科書忘れたら、いつでも言ってね」と笑顔で言い残して自分の席に戻った。〇〇は軽く会釈をして、ほっと息をついた。
その瞬間、後ろから小さな声が聞こえた。
いろは「ねえ、〇〇くん…」
振り返ると、そこにはいろはが少しふくれっ面で立っていた。
〇〇「どうしたの?」
〇〇は彼女の表情に驚きながら尋ねた。
いろは「今日の英語の授業、咲月ちゃんとすごく仲良さそうだったね。」
いろはは少し嫉妬心を隠しきれないような声で言った。
〇〇「いや、それは…教科書を忘れちゃったから、見せてもらっただけだよ。」
〇〇は慌てて弁解したが、いろはの表情は変わらない。
〇〇「ごめん、次から気をつけるよ。」
〇〇は申し訳なさそうに答えた。
その時、茉央が笑いながら二人に声をかけた。
茉央「〇〇、そんなんでいろはちゃん怒らせたらあかんで?でも、いろはちゃんが嫉妬するのも分かるわ~。」
彼女はその言葉に冗談めかしながらも、少しだけ本音を滲ませた。
いろはは照れ笑いを浮かべながら、「別に怒ってるわけじゃないけど…」と、言葉を濁した。
茉央「ほんまに?〇〇も、ちゃんとフォローした方がええで。」
茉央は関西弁で軽く〇〇をからかい、彼の背中を軽く叩いた。
〇〇「わかった、茉央。次は気をつける。」
〇〇は照れくさそうに笑い、茉央の言葉を受け止めた。
茉央「ほな、次の授業も頑張ろな。いろはちゃん、〇〇を許してあげてな?」
茉央はにっこりと笑って、〇〇といろはの間の空気を和らげた。
いろはは、少しだけ頷いて「うん、許すよ」と小さな声で答えた。
その後、クラスメートたちは次の授業の準備に取り掛かり、〇〇は気持ちを切り替えて再び勉強に集中することにした。
新しいクラス。そして、いろはとの関係。〇〇は、この新学期がどのように展開していくのか、少し不安を感じながらも、期待を抱いていた。
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