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ずっと好きでいたい夜に

昨夜は1人でおでかけした。
昼下がりと夕方のあいだに幕を開けるコンサート。
新聞で見かけて速攻チケットを取った。


国内を代表するクラシックホール・紀尾井ホール。初めての場所。
四ツ谷駅から上智大学脇をぐるりと回り込む。ホール前に待ち合わせらしき人が散らばっていた。
西日のもと、入場の列に並ぶ。
東西2箇所の公演(西は西宮・兵庫県立芸術文化センター)なので遠くからいらした方もいる模様。私の前にいた2人組の女性たちの背中からワクワク感が伝わってきた。私の背中はどうだったろうか。

今年デビュー40周年を迎える。
私が千里さんと出会ったのは中学2年…14歳の頃。友達から借りたカセットをダビングして、夏の間何度も繰り返し聴いていた。

常夜灯。コンコース。モータープール。
塩屋。belong to〜。

私の青春は千里さんが流れている。
曲を聴くといろんな場面が浮かんできて。
レポート用紙に書き写した歌詞が口をついてくる。
たまらない。

今回の公演プログラムはPOPS時代のセルフカバー。
ジャズピアニストとして奏でる新しい音楽の世界。
ジャズアレンジされているけど、メロディーを耳で追いかけると「ああ!」とすぐわかる。懐かしくて新しい。歌声はないけれど、ピアノが歌っているような。

歓声の代わりに手のひらが熱くなるくらい拍手を贈った。
2階バルコニー席の端っこ。ステージ中央に置かれたグランドピアノの鍵盤を走る指先。
目を開いて焼きつけるように見た。

終盤の「AVEC」。
「一緒に」という意味のほかに「大切な」と千里さんは言葉を添えた。
それを聞いたら胸がいっぱいになった。
ずっと好きでいて良かった。
私のそばに長く寄り添ってくれた音楽。
続けてくれてどうもありがとう。お礼を言いたいのは私のほうだ。

終演予定時刻を少しオーバーしてコンサートの幕が閉じた。

人波に流されて永田町までひと駅歩く。
暑さが少し和らいだ夜の手前。
夕飯は食べて帰ると伝えたので、一人の時間を満喫することにする。
緩い坂道、遠くのビル群、馴染みのない街。
かぼそく響き続けたピアノみたい。
いつまでも余韻に浸っていたかった。


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