癌研
2007/09/04
(この記事は2007年、母がまだレビー小体型認知症と診断される前のものです)
有明の癌研に母の付き添いで行くのも、これが三年目。その前の年はまだ、癌研は大塚にあった。
ものすごく綺麗になって、すべてがコンピュータ化され、でもそのおかげで以前よりも待ち時間が飛躍的に短くなった。会計もすべて自分で機械で行うので、長い間待たされることもない。ほんの数十秒で済んでしまう。
母は年々ヨボヨボしてきて、このままだと来年はおそらく、車椅子かもしれない。そして毎年癌研に来るたびに、母は同じ話をする。
夫の癌を妻である自分に宣告したときの医師の非情さを、今でも語る。その時の医師になりきって、語る。「奥さん、ご主人、癌だよ。もうすぐ出てくるから、顔に出しちゃダメだよ」母はそう憎々しげに、医師の言葉を再現する。
33年近く経っても、その時の怒りと哀しさ、辛さが母の胸の底に、固まったまま残っているんだなと思う。哀しいわ、人間って。あんなふうにはなりたくないな。
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