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シフォレの母

2007/10/17
(この記事は2007年、母が、まだレビー小体型認知症と診断される前のものです)


先月オーダーしたアデンランスシフォレが出来上がり、
今日、池袋のアデンラスまで出向いた。

いつものとおりタクシーを呼んでGO!
心配性の母は毎度のことながら早めに行動しなくちゃ気が済まない。
2時の予約なのに、1時5分前にはお迎えのタクシーに乗り込む。だから1時半には着いてしまって、結局意味もなく時間を潰さなくてはいけない。

サンシャイン通りにはろくな喫茶店がなくて、いくらかまともないくつかは、なぜか今日はお休みで。かといってほとんど歩くこともままならない母を連れて、あっちゃこっちゃ行くわけにもいかず、ロッテリアに入った。
デニーズは階段だし、エスカレーターで上る店もイヤだというので。

「人が多くて落ち着かない」と母は言う。体力がなくなってから人混みの中を歩くこともなくなったから、すっかり恐くなってしまったようだ。

気の早い母は10分前には「もう行こう」と言い、ビルの7階にあるアデランスに向かった。廊下にそっていくつもの個室があり、そこから女性客の声が聞こてくる。すごいな、結構満員御礼? 世の中にはお金持ちっているんだなと思う。

出来上がったカツラを持って美容師のオジサンが入室し、合わせてくれる。
母の髪を微調整するためにほんの少しだけカットし、もう一度カツラをのせる。合わせ鏡で見て、「あら、いいわね」と母も満足している。

カツラの洗い方の説明やら支払いやらなんやら結構時間がかかり、店を出て、でも歩いてすぐの距離にはやっぱり入る店もなく、すぐにタクシーをひろって練馬へ戻った。

夜になって、母はだんだん憂鬱になる。「なんだか着けるの難しい…」とこぼす。「自分で上手く着けられなくちゃ意味がない」としょんぼり言う。

「すぐに慣れるわよ。気が短いわね」と私は呆れる。店内で見た時よりも、何度も自分でいじったせいか、どことなくパッとしない。高い買い物だっただけに、なんとなく不安になる気持ちもわかる。

「お腹は空いてるのに、なんだか口が食べたくない」と、母は夕飯も進まない。結局残ったご飯で小さなおにぎりを、そしてもうひとつ小さなおにぎりをつくってあげる。

「足がイライラして気持ち悪い」と母は言う。おにぎりを2個のせただけのお皿を「重い」と言うので、持って行き、部屋まで付いていく。ソファに寝させて、膝下と足裏をマッサージしてあげる。「ああ、気持ちいい…」と言う。

しばらくして母から電話。「おかげで元気になって、おにぎりを2個ペロッと食べられた」とのこと。どうのこうのいって、半分は気持ちの問題なのかなと改めて思う。

やっぱりもっと、人からかまってほしいのよね。大切にされてるなあと、感じながら暮らしたいのよね。私だって、それは解るよ。

ただ私にも、需要と供給のバランスってもんがあるからさ。

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