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ワケのわからない人

2009/1/6
(この記事は2009年のものです)


母はこのところまた妄想爆裂である。病室を訪れた私に向かって「よく来たね! よくココがわかったね!」と驚嘆の声を上げる。
「また倒れてしまってこの病院に入院させられることになった、この部屋にいるっていうことがどうして分かったのか?」ということらしい。

昨日はデニーズかどこかの地下だとかに入れられてしまって家に帰れないだとか、いろんなことを言っていたらしく、夜中にも何度もナースコールをして迷惑をかけていた様子だ。

かと思うと、まったく普通に戻って正常な会話もする。
「最近またこんなふうなのが始まったって、F先生に話したほうがいいかね?」などと、自分を客観視することもできる。レビー小体病というのは本当に不思議な病気だと思う。

今日は母がお気に入りの、若い男性介護士Sさんの誕生日だとかで。母はペンを持って、花を描き出す。「誕生日だから、Sくんに花束でも…」と言う。なんとなく、その気持ちが嬉しくて、私はほんの一瞬泣きそうになる。

花の好きな母は、長い時間ペンを走らせる。なかなか描写が細かくて驚く。素晴らしい集中力だ。
「ステキじゃない!フラワーアレンジメントね。花カゴなんだ」と私が言うと、「そうよ!」と、母は自慢げに答える。

「これ、Sくんに今度見せてあげなよ」と言うと、「もったいない。Sくんに花なんかあげないわよ。花の価値もわかりゃしないんだから!」と冷たく言い放つ。なんか、ワケわかんないなあ。


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