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会話を「格ゲー」から「RPG」にするために

「日常会話はすぐに反応しなければならないので格ゲーに近い。インターネット上での会話はじっくり考えてから発言するのでRPGに近い。同じ会話でも全然ジャンルが違う」

 なかなか的を得た指摘ですよね。
 まあ、これを指摘したのは私ではなく、とあるインターネットユーザーなのですが。

 私の場合、世間でも会話の比喩としてよく使われる「キャッチボール」で例えます。
 日常会話の場合、相手からボールが飛んできたらすぐにキャッチして(受け取って)、すぐに投げ返さないと(反応しないと)いけません。一通り会話が終わるまで、休む暇なくボールが行き来します。だから人によってはかなり疲れてしまうわけです。
 一方、インターネットだとその必要がない。ネットでなんらかの発言をするのは、ボールをその辺に転がしておくようなものです。一度転がしたら、後は放置しても問題ない。たまに誰かが拾ってくれたり、投げ返してくれたりしてくれる。すぐに投げ返す必要もなくて、余裕を持って見守ることができます。
 一口に会話と言っても、現実とネットであまりにもやっていることが違うのです。

 かくいう私も会話はとても苦手。
 小学生の頃の私はとにかく人見知りで、事ある毎にすぐ泣き出す立派なクソガキでした。大学生になってグループワークやゼミに参加したことで今ではかなり改善しましたが、それでも根っこは幼稚園の時から同じ。目立たなくていいなら目立ちたくないし、ずっと話していると疲れます。

 私の場合は性格的な問題ですが、そもそも日本語も非常にハイコンテクストな言語です。ハイコンテクストとは、言葉以外の表現に頼る傾向があるコミュニケーション方法のこと。主にアジア圏の言語がこれに当てはまります。いわゆる「空気を読む」とか「忖度」とか「暗黙の了解」なんてのは、全部ハイコンテクストの象徴と言えます。
 一方の英語などはローコンテクスト文化。とにかく言語化が求められる傾向が強い。言わなきゃわからないし、回りくどい言い方だと伝わりません。ビジネスとの相性が良いのがどちらかは言うまでもないですね。

 まあ結局、自分の性格と日本語の性質に甘えて、私はずっと会話から逃げて生きてきたわけです。
 とはいえ、やはり会話も上手くなりたい。誰とも会話せず生きるのは不可能ですし、会話が上手だと日常会話でも意思疎通の手間が減って便利なんですよね。

 そんなわけで、大学に入ってからは、Kindle Unlimitedで会話が上手くなりそうな本をいろいろ読み漁るようになりました。その中の一つがこちらの本。

 この本はビジネスにおける雑談について語られているのですが、日常会話にも応用できる知識がたくさん詰め込まれていて、結構参考になりました。その中で一つ気づいたのは、実は現実の会話も「格ゲー」から「RPG」に近づけられる、ということです。

 本の中では様々なテクニックが記載されていますが、特に重要だと思ったことをざっくりまとめると3つ。
 まず一つが「準備」です。なんでも会話は始まった時点で成否が決まっているらしい。マジか。
 さっき現実の会話は格ゲーだって言いましたよね。言い換えればアドリブで乗り越える能力が全てだと私は思っていました。この本はそうじゃないと言ってるんです。話す前に相手の情報を少しでも集める姿勢や、普段から教養を深めておく大切さを説いています。ゲームで例えるなら、ダンジョンに潜る前に装備を整えるようなもの。それを怠っていた私は、言わば裸でダンジョンに突っ込んでいたようなものだったんですね。
 そもそもスタート地点で間違えていたのか……と反省。

 また、ビジネスでは雑談を通して「信頼」「信用」「尊敬」を構築するのが大切とのこと。作中ではそれらを一纏めにしてラポールと呼んでいました。
 日常でも同じですよね。特に初対面の人とは、会話を通してじっくりと「信頼」という名の木を育てる必要がある。信頼関係ができてないのにプライバシーに突っ込んでくる人が後を絶たないから「セクハラ」だなんだと騒がれるわけで。
 『Miitopia』というゲームでは、仲間同士の絆が深まれば深まるほど戦闘が有利になっていくシステムが導入されていましたけど、まさにそれだなあと思いました。

 他にも、この本では雑談を部下の「マネジメント」として用いることが推奨されています。
 これを日常会話とつなげるなら、身近な人の状態を確かめるのに会話を使え、みたいな感じでしょうか。会話は話の内容だけでなくて、話している人の様子からも様々な情報を得ることができると、本の中でも指摘しています。その人が今、上機嫌なのか不機嫌なのか、喜んでいるのか悲しんでいるのか。そういった情報は言葉や表情の中に含まれているわけです。RPGの状態異常みたいなもんです。

 いろいろ書いてきましたが、結局のところ一番の収穫は、苦手意識のある会話は、実はとても奥深いものなのだと気づけたこと。私含めて、ほとんどの人は会話を有効活用できていないのだと思います。とはいっても、明日からいきなり会話上手になることはできないですからね。結局は毎日の積み重ねです。
 私も日常や仕事で会話をなんとかかんとか活用していこうと思います。「格ゲー」を「RPG」にするのは無理でも、せめて「アクションRPG」くらいにできれば、かなり違ってくると思うので。


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