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「外国人投資家が見る日本株の景色」について考えてみました

外国人投資家が見る日本株の景色

外国人投資家が注目しているドル建て日経平均株価(日経平均株価÷ドル/円相場)は足元の株価上昇と対ドル円高の進行により、日経平均株価を上回る上昇を示しています。11月27日には256ドル強となり3月末比50%近く上昇し、同期間の日経平均株価(円ベース)の上昇率41%を上回りました。

しかも、この数値は1989年12月の高値270ドル強に対し95%水準にまで迫ってきています。外国人投資家から見ると、ドル/円相場を介在すると7割弱までしか戻していない円ベースの見え方とは明かに大きく異なります。今回のnoteでは、日本株の売買動向、株価形成に大きな影響を及ぼす外国人投資家が見るドル建て日経平均株価に注目し今後の焦点を整理してみました。

ドル建て日経平均株価がなぜ重要で、取り上げてみた理由は次の3点に要約できます。
①外国人投資家はドル建ての資産として日本株を保有する。このため、ドル建て日経平均株価は外国人投資家が見る株価水準となる。
②東証の株式売買では外国人投資家の比率が60%以上と高く、その売買動向が株価形成に大きく影響する。そして、ドル建て日経平均株価の節目をチェックしておけば今後の株式相場を見通すうえで参考になる。
③ドル建て日経平均株価が強い局面では、外国人保有比率の高い銘柄を買ってくる可能性が高まるので銘柄選択にも役立つ。

外国人投資家が見るドル建て日経平均株価の景色に大きく影響するのが、
①ドル/円・為替動向、
②日本株見通し、
③投資環境の方向性ということになります。
新型コロナウイルスの開発の進展による世界経済の回復を前提とすると、結論を先に述べてしまえば、外国人投資家の目に映るドル建て日経平均株価の先行きには明るさが増してきており、先高観が強まりそうです。

まず、ドル/円・為替動向に関して見ていくことにします。為替水準に関しては、日米金利差、貿易収支等が影響すると言われています。足元のドル/円水準はコロナショック直後の3月半ばの110円台/ドルから104円台/ドルまで半年かけて5円強の円高・ドル安が進んでいます。今後の注目点が日米金利差です。バイデン氏が大統領当選を確実にすると財政支出の拡大観測に伴う金利反転を背景に一度拡大しました。ところが、12月中旬の次回FOMC(米連邦公開市場委員会)における量的緩和拡充の検討が意識され、再度低下傾向を示しています。コロナショック時のドル/円相場の年初来高値が101円台/ドル。当面、円高圧力が継続することから来年は100円/ドルの節目も視野になるという見方も出ています。

次に日本株の見通しを整理してみたいと思います。今年度の予想EPS(1株当たり利益)から計算した日経平均株価の予想PER(株価収益率)は24倍台。現在の日経平均株価は、既に来期の2021年度に40~50%の利益成長を織り込んだ水準に達していることになります。決して割安感のある水準ではありませんが、以下に示した3つの要因から先行き強気の見方が大勢となってきています。専門家の見方を報じた先週の経済専門紙も、2021年3月末日経平均株価が2万8000円に上昇する可能性を報じています。
①外国人投資家の日本株購入余力が大きい。
②GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などをはじめとする主力株を中心に米国株に割高感が出てきている。米国以外の地域分散投資の重要性、欧州地域における新型コロナウイルス患者数再拡大と同地域での企業活動の停滞が意識されるなかで外国人投資家の投資資金が消去法的に日本株市場へ向かいやすい。
③アクティビスト天国といわれるほど我が国の株主権は強く、海外アクティビストの活動が目立ってきている。その結果、割安に放置されてきた株価が親会社による子会社の買収・売却(NTTによるNTTドコモのTOB(株式公開買い付け)が代表例)などを通じて妥当水準まで上昇するケースが増えてきている。

最後に、投資環境とするとFRBの金融政策が最大の焦点となります。12月中旬の金融政策決定会合では量的緩和拡充が検討される見通しで、金利については低下圧力が強まりそうです。米国議会上院・下院のねじれ現象も想定されることから、米国の景気対策としてはFRB金融政策に頼らざるを得ないことになりそうです。次期バイデン政権ではイエレン前FRB議長が米国財務長官の最有力候補にあげられていることは、その証左なのではないでしょうか。

今回のnoteでは、ドル建て日経平均株価の見方とその重要性を取り上げてみました。日経平均2万8000円、ドル/円相場・100円/ドルを前提とするとドル建て日経平均株価は280ドルとなります。この数値からすると、直近株価は天井が意識され易い水準にあります。それだけに、個別銘柄に注視すべき時節が到来しているとの判断ができます。外国人投資家が注目しそうな投資先は世界的に高い競争力を持つ企業群(半導体製造装置や工作機械等)、成長性の高いIT関連銘柄、M&Aや親子上場の解消を通じて株価水準のが上昇しやすい割安に放置されてきたバリュー銘柄です。こうした外国人投資家の売買動向は今後の銘柄選択にも役立つものと考えます。

外国人投資家の動向については、菊池正俊氏の「日本株を動かす外国人投資家の儲け方と発想法」(日本実業出版社)、「外国人投資家が日本株を買う条件」(日本経済新聞出版社)が参考になります。購読をお勧めします。

Malon, 11. 30. 2020

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