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昭和

パタパタ

トントン

ガタッ

ジュー

パチパチ

そろそろお客さんも増えてくるころだ。
奥さん方のつっかけの音がする。
アーケード付きの商店街に夏の湿気た風がゆるゆる抜けていく。

「コロッケ八つ、くださいな。」

むっとするような、しかしほんのり懐かしさのある揚げ油のにおいの中、転がるように注文の声が響いた。

「すぐに揚げますからちょっとその椅子にかけて待っててくださいよ。」

転がる声の主はチラッと私を確認すると、持っていた買いものカゴを膝に抱え、そっと私の上に座り、小さく鼻歌を歌いはじめた。

私は転がる声の主の鼻歌と揚げ油のパチパチという音に合わせながら、ゆらゆらと体を揺らし、この時間が長く続くことを願っている。



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昭和というお題で書きました。

2020年6月

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