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202012 ホーチミンシティの夜、大騒ぎするバイクの大群

 昨年12月上旬、初めてベトナムを訪れた。かつてのサイゴン、現在のホーチミンシティ。滞在先は開高健がベトナム戦争取材時に滞在したことで知られるホテルマジェスティック。町一番の繁華街ドンコイ通りがサイゴン川に突き当たる角地に、昔ながらの貫禄を漂わせて立っていた。

 散歩しようと表へ出たが、バイクが非常に多く、広い道路を渡るのは勇気がいる。戸惑っていたら、地元の人が先導してくれて無事に横断できた。寒かった日本と比べると暖かくて気持ちいい。ちょうどこの日、ユニクロが新規開店して、長蛇の列ができていた。

 旅先一食目は、日本人が経営するベトナム料理店へ。オーナーは現地の孤児達をスタッフとして採用して支援している。ベトナムのビールを飲みながらいただいた料理は、エビとハスの実サラダ、揚げ春巻き、活きエビココナッツジュース蒸しなど。どれも優しい味付けで素材の旨味を堪能した。

 翌日は、フルーツたっぷりの朝食後、ベンタイン市場まで散策。高島屋の前には大きなクリスマスツリー。暑い中で見ると、少々違和感がある。賑わう市場では、ドリアンやマンゴー、パッションフルーツなどを売る果物店が目を惹いた。外の通りにはドリアンを荷台に山積みしたバイクが走っていた。

 昼前、ホテルに戻ると、半年ほど前から単身赴任している友人が、ビンズオンという隣町から来てくれた。日本政府から派遣され、現地日本語教師の助手を務めている。車で1時間弱だが、グラブという配車サービスを利用すれば安いらしい。

 案内してくれたフォーの店で昼食。仕事ぶりを聞くと、小中学校で日本語授業の際、自前のキーボードを持参して、日本語で歌を教えているという。生徒達は意外に日本の歌を知っているそうだ。

 午後は一緒に町歩き。ブランド店やレストランが連なるドンコイ通りには、フランス統治時代のコロニアル建築が残っている。市民劇場(オペラハウス)、中央郵便局、サイゴン大聖堂。そして統一大会堂、ここは昔の宮殿跡。庭には戦車が、屋上には軍用ヘリが置かれていた。さらにホーチミン市博物館へ。長い歴史の中でもやはりベトナム戦争が最も重要な出来事。戦争関係の陳列が圧倒的に多い。庭のガジュマルの樹下には戦闘機を展示していた。

 夕食は、NHKの「世界入りにくい居酒屋」という番組で紹介された古い住居ビル屋上の店へ。階段を延々登って入り口に辿り着くと、予約してるかと訊かれた。ないと言うと、19時までという条件付きで席を用意してくれた。友人も知らなかった店だが、旅行者の口コミで有名になったようだ。あれこれ食べたが、ナマズの土鍋煮、オクラ豆腐ソースなどが美味しかった。

 まだ早いと、日本人街へ。牛丼屋の店内奥の階段を登ると、日本酒バー。仕事で来ている日本人で賑わう立ち飲みの店。日本から蔵元が来ることもある。鍋島、仙禽など、ベトナムで飲む日本の美酒はひと味違う趣だった。

 精算後、友人が配車サービスを手配した。ホテル経由で帰ってくれるというが、大渋滞。バイクが道路を文字通り埋め尽くしている。国旗を手にしたり、鳴り物を鳴らしたり、実に騒々しい。この夜、サッカーの東南アジア競技大会があり、ベトナムが勝って決勝進出を決めたとは、後で知った。歩道まで走るバイク、1台に一家5名が乗ったり…。忘れられない光景となった。

 付記。新型コロナウィルスの影響で、友人は任期途中で帰国命令が出た。やっと生徒達とも打ち解けられたのにと残念そうだった。そして、初日のレストラン、気に入って最後の夜も再訪したのだが、お客が激減して先頃閉店したとのニュース。再開を期待したい。

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