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201709 台風予報の加計呂麻島、海で遊び美酒に酔う

昨年9月初め、奄美大島の南、加計呂麻(かけろま)島へまた出かけた。LCCが就航したおかげで毎年奄美に通っている。

 前日に発生した台風12号が南大東島に接近しており、飛行機が飛ぶかどうか心配だった。朝7時には予約していたフェリーが欠航するとの電話も入っていた。バニラエアは成田空港を30分遅れの12時に条件付きで出発し、結果的には無事14時に奄美空港に着陸した。現地では雨すら降っておらず拍子抜け。風も穏やかだった。

 レンタカーを借りて古仁屋(こにや)港を目指す。成田から同じ飛行機に乗ってきた知人夫妻も同乗。夫妻は東京荒木町で居酒屋をやっているが、まだ若い主のお母さんが奄美大島出身、叔父さんが加計呂麻で民宿を経営している。夏休みはそこに常連客も招いて滞在するというので1泊だけ合流する事にした。

 古仁屋港に着くと、海は凪いでいるが一度欠航と決めたフェリーは出ない。海上タクシーをチャーターする。車は港の駐車場に置いていく。今夜泊まるのは馴染みの宿、ゆきむら。同宿する5名の若者達がいると女将から聞いていたので、彼らの到着を待ってから出航。

 宿で女将とおしゃべりしていると、明日は台風直撃で海で遊べない可能性が高いから今日のうちに潜ってくると言って、若者達は暮れ始めて雨もぱらつく中、海へ出て行った。あたりがすっかり暗くなってから戻ってきた。

 夕食は、女将自らが海で獲ってきたノコギリダイの焼き魚、モズク、ソデイカの刺身、そして野菜たっぷりの鶏鍋。鍋の味付けは、なり味噌とこちらで呼ぶソテツの味噌と、豆味噌をブレンドした味噌。黒糖焼酎、浜千鳥乃詩原酒が料理の味を一層引き立ててくれる。

 庭にサガリバナが咲いているというので、酔客一同、外へ。細い糸状の花が花火のように広がる。初めて見た。妖しげな甘い香りが漂う。一夜で散るらしい。月下美人も咲く不思議な庭。

 翌朝、てっきり暴風雨のただ中かと思って目覚めたら、穏やかな空。青空も少し見える。台風はどこへ行ったのか。散歩に出かける。海は波も立たず。真っ赤なハイビスカスの花にナガサキアゲハがひらひら舞っていた。

 朝食後、女将は郷土料理を作り始めた。テレビ局の取材チームから依頼されたそうだ。カシキャ、という。ハナフノリという海藻を洗って洗って干して冷凍。解凍後また洗う。砂を除去する手間が面倒で誰も作らなくなったそうだ。赤茶色の海藻はニンジンのみじん切りと炒めると薄緑色に変色。そこにサバ味噌煮缶を加え、味付けしてバットにとって冷蔵して完成。

 シュノーケルセットを用意して宿の目の前の海に潜った。サンゴと色とりどりの熱帯魚。楽しくて夢中になる。

 今夜は湾の向こう側に位置する知人夫妻やその店の常連客が泊まっている民宿5マイルへ移動する。カシキャを食べさせてあげてと女将が持たせてくれた。

 こちらの民宿は規模が大きい。コテージみたいな部屋が数室、それとは別にスタジオ付きの合宿可能な大部屋があり、知人達はそこで1週間ほど合宿スタイルで滞在していた。

 今夜食べる魚を獲ってくると出かけたが、結果は坊主。だが、用意してあった食材で次々料理を作り出す。さすがプロ。タイの煮付け、キビナゴ唐揚げ、ゴーヤ炒め、焼きナス、砂ズリ炒めなどに加えてカシキャ。酒は各自が持参した選りすぐりの日本酒。熟成タイプから濃厚タイプ、様々だが、どれも旨口で上等。都心の店で見慣れたメンバーだが、主夫妻を含めて皆いきいきとしていい顔付き。美味しい料理に旨い酒。それ自体はいつもと同じだが、一歩外へ出れば穏やかな湾内に打ち寄せるさざ波。不思議な酔い心地のまま、離島の夜は更けていった。

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