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2022年9月 郡上八幡へ

母の七回忌にあたり、少々早めながらお経をあげてもらうために、名古屋の東別院へ出向いた。新幹線で名古屋へ行き、駅近くのレンタカー屋で車を借りた。雨が降っていなくてよかった。車はスズキのスイフト。3日間で7000円。
東別院は、いつもながら、デカイお寺だなあと感心する。

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境内の左手に保育園があり、お父さんお母さんらに迎えに来てもらった園児たちが
帰っていくところだった。
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このお坊さんのお経のあげ方が独特で、ホーミーみたいに体の中で共鳴するような
ウィ~ン、ウィ~ンという響きが心地よかった。

一仕事終えて、近くのイタリアンでパスタランチ。

ひとつ向こうの窓際のテーブルではご近所マダムらが、高校受験の話を
けっこう大声でずうっっと喋りっぱなしだった。もちろんノーマスクで。勘弁してよ。

さて、高速に乗って、一路、郡上八幡へ。岐阜市で18歳まで過ごしていながら、郡上へは一度も行ったことがない。高校の同級生にも郡上出身者は何人もいたし、仕事でずいぶんお世話になった写真家の小澤忠恭氏は郡上生まれ、と非常に近しい思いを抱いてきた町にも関わらず。
とにかく、初訪問、期待一杯。高速は途中、前が見えないほどの土砂降り区間もあったが、郡上に近づく頃には小降りになってくれた。
まずは、高台の上の郡上八幡城へ。一方通行の細い道をくねくねと登っていく。城自体は明治になって廃城となり、一度壊されたが、昭和8年に大垣城を参考に木造で復元された。

石垣は昔のままで歴史を感じさせる。
なかなか立派な構えの郡上八幡城。冒頭の写真のように天守閣からは郡上の町が見渡せる。入場券売り場にいたのは、最後の城主青山氏の子孫。雑誌ノジュール最新号に彼のことが紹介されていたので分かった。ノジュール、見たよと声をかけると嬉しそうに笑っていた。

城から下って、郡上八幡博覧館へ。城と共通券を買った。土日なら郡上踊りの実演があるが、今日はなし。コロナのために休止されていた郡上踊り、今年は3年ぶりに行われ、明後日の夜は踊り納め。賑わうことだろう。実演はなかったが、ビデオで幾種類かの踊りを見せてもらった。

郡上八幡博覧館は大正時代に建てられた旧税務署の建物。
なんで館内に食品サンプルがあるのかと思ったら、この町出身の岩崎さんという方、
食品サンプル王と呼ばれた人物だったというではないですか。
今もその会社は世界一の食品サンプルの会社であり続けているそうだ。
昔、この土地のひな飾りは土雛だったという。

今夜のお宿は、備前屋。今は1日3組しか泊めない宿。行ってみると、それなりに大きい。かつての藩校跡のようでお庭も広そう。その宿の離れ。部屋の中は今風にリフォーム済みで快適。

備前屋の門の脇には大きな百日紅。
離れの玄関を入るとこんな感じ。
ちゃんとした床の間があった。ふだんは安宿ばかりなので、珍しい。

一服した後、雨が小止みなってきたようなので、町を歩くことにした。吉田川を渡ると、これまでの豪雨のため、水かさを増した濁流がごうごうと流れていた。橋にはここから飛び込むなと注意書きがあったが、こんな濁った急流じゃ、とてもそんな気にはなれないだろう。橋の向こうには旧郡上八幡庁舎。ここも洋館。明後日の踊り納めはこの前の広場で行われるようだ。その先は、鯉が泳ぐ、いがわ小径。

吉田川はこわいぐらいの濁流が溢れていた。
旧郡上八幡庁舎は観光案内所と土産物屋、食事処などになっている。
裏手の駐車場は町歩きの際の貴重な駐車場。
伊勢と同じように、このあたりでも1年中注連飾りをかけるようだ。
本当は美しいせせらぎが見られるはずの、いがわ小径。ご覧のようにここも
濁流となっていて今にも溢れ出しそう。鯉が泳いでるのを見るどころではない。

しばらく、古い建物が連なる町の中を歩いてみた。

町中には小川や水路も多いが、井戸も非常に多い。押してみたら、ちゃんと水が出た。
小学生が集団下校してきた。絵になる風景。マスクがかわいそうだが。
井戸と同じく、下駄屋も町のあちこちに見かけた。踊りに欠かせないからね。
提灯が似合う町並み。千羽鶴もあちこちの軒先に吊ってあった。
やなか水のこみち。

野田軒製菓舗という店で、とちの実せんべいを土産に買い求めた。

こういう店で売っているだけで、せんべいが美味しそうに思える。
せんべいを売る奥に、福助が鎮座していた。
乗りはしなかったが、町の中をかわいい小さなバスが走っていた。
風格のある酒屋の前はたぶん踊りの輪ができるのであろう。
郡上踊りの大きな提灯もぶら下がっている。
吉田川に流れ込む小駄良川も濁った水が激しく流れていた。
小駄良川沿いの名勝、宗祇水。生活用水として大切に使われてきたことが分かる。

さらりと一回りしただけだが、それでもいい街であると分かる。住んでいる皆さんがきちんと美観を保とうと努力している。今回は踊りは見られないが、いずれ踊りも見に来たい。いや、見るのではなく踊れと言われるのだろうな。
宿に戻り、そこだけは今風のバスに浸かって汗を流し、夕食は本館2階の和室へ。床の間に大きな陶器の壺が置かれていた。畳の部屋だが、食事はテーブルと椅子で。これがありがたい。順番に運ばれた料理は、それぞれ味も質も良く、気に入った。

前菜盛合せ。酒の肴がたくさん並ぶとそれだけで嬉しい。
飛騨牛のすき焼きも。上等な肉は柔らかく旨かった。
地酒、母情の生酒。すっきり美味しい。
久しぶりにしっかり苔の香りがするアユを食べさせてもらった。満足なり。

揚げ物も煮物も上々で、〆のご飯もいい米で旨いのだが一口二口しか食べられなかった。離れに戻り、寝酒は母情のカップにごりを。

あまりこってりしていないスムージーなにごり酒だった。

さて、翌朝、雨は止んでいる様子。ひとり早起きして、町を散策。

山には霧がかかっているが、上がっていくので、天気は良くなるだろう。
吉田川も水量は多いが、昨日のような濁流ではなく普通の川の水色をしていた。
早朝、灯がまだ残る通りに人の姿はない。
職人町の家々の軒下には防火用のバケツが下げられていた。
昔の町並みをなんとか留めようとしている職人町。
じいさんがひとり、軒下でタバコを旨そうに吸っていた。
いがわ小径のせせらぎも、泳ぐ鯉の姿が見えるほどには回復していた。

部屋の床の間のユリの花が一夜明けてきれいに咲いていた。匂うかと思いきや、そうでもなかった。

大きなユリの花が開いていた。

夕食と同じ部屋で朝食。窓の外は庭の木々が美しい。

朝食もとても充実していて美味しかった。このほかに豆乳鍋が。
本館の廊下は大きなトチの木の板が張られている。

しっとりした町並みと、いいお宿、郡上は好印象を与えてくれた。再訪の機会があるかもしれない。


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