2020年2月 広島県北広島町大朝、福光酒造へ

画像1 友人に誘われて、広島県の山の中、北広島町大朝でいったん廃業された日本酒蔵を復活させようとがんばっている人の所を訪ねた。蔵ではちょうど、どぶろくを仕込んでいて、米が発酵するいい香りが漂っていた。
画像2 蔵は福光酒造。大朝の中心街は山陰と山陽を結ぶ石見街道を挟んで昔から商店街が作られており、その中心は旧国鉄バスの大朝駅。今でもJRバスの拠点で、その車庫前に蔵は立っている。
画像3 四代目福光さんが酒蔵復活を目指しているが、その第一歩として、大朝が特区に指定されていることもあり、どぶろくを作っている。米は飯用コシヒカリだが、大朝米と呼ばれるブランド米。どぶろく特区の条件は地場産原料使用。
画像4 裏手には仕込みに使う水を汲み上げる深い井戸がある。年間通じて15℃、口当たりのいい軟水。
画像5 昔、搾り機を置いていた場所を活用して、底を少し浅くして再活用しようというのが福光さんのプラン。
画像6 福光さんの曾祖父がすぐ近くで医院をやっていて、この場所で酒蔵をやっていた家がやめるというので、なくなると村の人が困るからと、酒蔵を買い取って引き継いだのが始まり。2代目も医者をやりながら酒蔵を続けた。
画像7 酒造りの古い道具がたくさん保存されている。角樽の裏には、福光酒造になる前の高杉酒場(しゅじょう)の名前が書かれていた。
画像8 前の蔵の時代の酒壺もいくつか並んでいた。左はその当時のものだろうか、古い滑車。
画像9 昭和12年の古地図には、大朝酒場の名前が記載されている。高杉酒造から地域のために酒蔵を買い取った創業者、すなわち福光さんの曾祖父が村の名を冠したのだろうか。
画像10 4年前に福光さんが大朝に来た時は、蔵の中は相当荒れていたというが、粘り強く片付け、残すものはきちんと残してきれいに磨き上げた。2階も案内していただいた。
画像11 2階の洋間はいずれサロンとしたいそうだが、漆喰を塗り直した壁に創業者の曾祖父の肖像画が置かれていた。
画像12 2階の和室の襖の下張には、昔の大福帳を破った紙が使われていたことも片付けをする中で分かった。奥の和室には大谷光雲はじめ政財界のお偉方も宿泊したとのこと。
画像13 飲食業が始められるように、すでに保健所の営業許可は取得済みで左上に掲示されている。カウンターは酒樽の板を使い、酒のブランド名、朝光の布も板で額のように飾っている。
画像14 こちらは酒袋を暖簾に仕立ててあるが、パッチワークがお洒落。
画像15 昔の前掛けは、他の酒蔵の前掛けも使って、ジーンズ風に加工。バッグなども試作しており、いずれ物販も手がけたいと夢は膨らむ。
画像16 土間に置かれたオーディオセットは、スピーカーが目を惹く。すぐ近くのメーカーで開発された無指向性のスピーカー。エグレッタ。ショールームへ見学に寄ったら、海外から買いに来るお客さんもいるそうな。
画像17 1階土間の左、板の間には立派なグランドピアノが置いてあり、福光さんが蔵にいる時間であれば、自由に弾いて下さいと開放されている。
画像18 1階奥のスペースはコンサートなどに使われている。訪れた日の数日後にも東京のギタリストのコンサートが組まれていた。
画像19 どぶろくだけでなく、ワイン造りにも挑戦する福光さん。雑木林を伐り開くには、知人が破格の安値で請け負ってくれた。山葡萄とカベルネソービニヨンの掛け合わせ、ヤマソービニヨンやリースリングなどの苗が植えられている。
画像20 3年前、4年前から少しずつ苗を植えてきた。どぶろくとワイン、ひとりで両方やるのは思った以上に大変だと福光さんは笑う。
画像21 昔、杜氏さんたちが寝泊まりしていた板の間を畳の部屋に改造してあり、そこで近所の方々と懇親会。蔵の向かいに立つ人気店、かあちゃん餃子からケータリング。名物の餃子は美味しかった。
画像22 一昨年からどぶろくを作っている。銘柄は、かつて福光酒造のメイン商品であった「朝光」。大朝と福光のそれぞれ2字目をとったもの。大福という銘柄もかつて使用していたそうだが、現在は商標をよそで使われているためすぐには使えないそうだ。
画像23 どぶろく朝光はアルコール度数12度と軽め。2019BYの2タンク目を開栓してもらったが、上澄みを吞めば、日本酒かと思うほどのできばえ。お燗をしてもさらに旨い。
画像24 こちらは新発売されたばかりのニューフェイスどぶろく、鬼吉川(きっかわ)。この地を治めていた領主で、勇猛果敢なことで鬼の吉川と称された吉川経基没後500年のタイミングに合わせてリリースした。
画像25 こちらはアルコール度数14度。朝光より辛口で、さらに一層日本酒かと思うほどのいいできばえ。
画像26 この夜、同席された地元の方のひとりKさんは、60歳過ぎてワイン造りを始められたお方。深山紫紅はヤマソービニヨンで仕込んだ赤ワインだが、鮮烈で深い深紅の色としっかりした味わいで、とても個人の自家製とは思えないできばえ。特区として許認されるのは2000リットル以下だと地元消費のみ。他地域での販売は不可とのこと。
画像27 いずれ大朝名物にしたいと福光さんが考案した、どぶ塩鍋。豚肉と野菜をどぶろくと塩だけで味付けした鍋で、いや大変美味しくてびっくり。
画像28 長い間、福光さんは岩国の金冠黒松で杜氏を務めながら、いずれ福光酒造を継ごうとがんばっていた。なかなか現代では使われる機会が少ない8号酵母を使った日本酒を金冠黒松で醸造してきたが、退職時に蔵にあった売れ残りを自らの責任と買い取ってきたという。8年熟成だったが、きれいに熟成し、燗したら悶絶ものの絶品だった。どぶろく2種類とこの八號酵母を買わせてもらった。
画像29 蔵の表に立ててある、どぶろく朝光の幟が朝陽を浴びて輝いて見えた。
画像30 お世話になった福光寛泰さん。とにかくアイデア豊富で、あれもやりたい、これもやりたいと夢は膨らむ。彼の周りには、そんな彼を支えようとする人の輪が確実に出来始めている。

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