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ここにない足跡 ~【櫻坂46】「1st YEAR ANNIV. LIVE 」感想② 卒業セレモニーに参加して~

 12月10日に行われた「1st YEAR ANNIVERSARY LIVE」の中で、守屋茜さん、渡辺梨加さんの卒業セレモニーが開催された。乃木坂46などでは、卒業ライブが何度も開かれているが、欅坂46から櫻坂46となった現在まで、ライブの中でこのようなセレモニーが行われたのは、初めてのことである。
 お二人が、長い間グループの中で大きな役割を果たしてきたことへの感謝の気持ちが、このようなセレモニーとなったのだろう。
 「流れ弾」でライブ自体は一旦幕を閉じ、普通であればアンコールとなるタイミングで開催されることになる。櫻坂46のお祝いライブと、きちんと区別した形で実施されることが、お二人らしいファンへの配慮であるのだろう。このような気遣いが出来るところに、彼女たちが人気メンバーである理由の一端を垣間見ることができる。

 櫻坂46の1周年をしっかりとやり切った後に、そこから旅立つことをメンバーやファンの前で、力強く宣言する姿を見せてくれたことで、こちらも気持ちを切り替えて、卒業をお祝いすることができた。

 菅井さんがセレモニーのMCをつとめる中、お二人がそれぞれドレスアップした姿で、ファンへのメッセージが書かれた手紙を読んでいく。
 途中、涙で手紙を読む声が震える場面もあり、観ているこちらも「おめでとう」と思いながらも、寂しさが募り、胸がいっぱいになりながら、お二人の一挙手一投足を見守っていた。
 お二人のコメントが終わった後、理佐さんが舞台の上に呼ばれる。
 この4人が揃ったところを見てしまうと、もうファンの中では、『青空とMARRY』の曲が聴きたいと思ってしまうのは仕方がないことだろう。
 そんなファンの気持ちを察したかのように、菅井さんから「2人が最後ということで、聴いていただきたい歌があります」という言葉があり、『青空とMARRY』の曲が披露されることになる。
 櫻坂46となってから、長らく封印されてきた欅坂46の曲。中でも人気ユニットであった『青空とMARRY』の曲である。この状況で、それを断るファンはいないだろう。
 そんな中「ここにない足跡」のイントロが流れる。2017年の全国ツアー以来の楽曲披露ということもあり、久しぶりにこの曲の歌詞に触れることになる。以前、ライブで披露された様子を観ていた時には、メンバーのビジュアルの素晴らしさばかりに目が奪われてしまい、「余り歌詞について意識していなかった」というのが正直なところである。
 今回、歌詞が画面に流れる中、心新たに彼女たちのパフォーマンスを観ていたのだが、その内容が、彼女たちの歩んできた道のりや旅立つ様子を描いていることに気づかされる。

砂浜の上の足跡を
さざ波が寄せて
すべて消してしまった
でも確かに僕はここまで
自分の足で歩いて来た

もしもこの世界の
多くの人から
存在を忘れられても
落胆しないよ
 
君と出会い愛を知って
やっと大事なことわかったんだ
今日までどうやって
生きて来たかじゃない
次はどこへと
行きたいか 強く願うこと
未来に続くのは
ここにない足跡さ
(中略)
君と別れすべて失くし
ずっと 抱えていた痛みの場所
心の空洞が
泣いていたんじゃない
過去を探して
下向いた首が重くなる
いつかはそこにいた
そして今はここにいる
(中略)
生きてるその重さ
砂浜に踏みしめる

「ここにない足跡」(青空とMARRY)より抜粋

 「二人セゾン」などもそうだが、欅坂46の歌は、リリースされた時には、その楽曲が与えられた意味がピンとこないものであったとしても、時が経つにつれて、その意味がひしひしと感じられるようになることが多い。
 このあたりに、未来を予見しているかのような秋元氏の「天才的な作詞能力」を感じることができる。
 今回の「ここにない足跡」の歌詞をみても、欅坂46(櫻坂46)・・・特に『青空とMARRY』から旅立つ状況に合わせるかのように、何年も前から、この歌詞が準備されていたように思えてくるから不思議である。

 2曲目に「青空が違う」が披露される。
 欅共和国をはじめ、今までのライブでは、会場全体が盛り上がり、ファンとメンバーの一体感を増すという役目を担ってきたのが、この曲である。
 今回も、会場全体に拡がるブルーのサイリウムに包まれながら、これまでのライブの様子が背景のスクリーンに流され、ファンはもちろん、彼女たちも思わず涙ぐむ瞬間がいくつもあった。映像の中の彼女たちが、明るく輝くような笑顔を見せていればいるほど、こちらはどんどんと涙が溢れてきてしまう。お二人がいない欅坂46(櫻坂46)は想像だにしてこなかっただけに、改めて淋しさを覚えるひとときであったと言えるだろう。

 『青空とMARRY』の曲披露が終わると、再び、メンバー全員が舞台に呼ばれる。お二人を中心にして一列になったまま、メンバーからお二人に向けたコメントが続く。一期生の上村さん、二期生の松田さん、そして守屋さんと本当の姉妹のような間柄となっていた増本さんから、思いがこもった素敵な言葉が捧げられた。
 ここで「櫻坂の詩」が流れ、メンバー全員で歌い始める。歌の途中で、お二人へのサプライズとして、一人ずつ花を渡しながら、言葉をかけていく場が設けられる。「櫻坂の詩」のオフボーカルが流れる中、送る方も、送られる側もお互いに感謝の気持ちを言葉にしながら、花を渡していく姿が美しい。最後に菅井さんが花を渡した後、ふたたび歌に戻る。

 すべての歌が終わり、一人ずつ退場していく間も、ステージの中央に大きな花の束を手にして佇む二人。
 今回も幸阪さんが最後に退場した後、中央のお二人が、観客席に背を向けて、後ろにあるLEDスクリーンの間に入っていく。観客席に向かって深々とお辞儀をした後、笑顔で手を振るお二人。左右から、スクリーンがゆっくりと閉じる中、隙間が細くなるのを名残惜しそうに覗いている二人の晴れやかな笑顔がとても印象的であった。

 卒業後の活動については、まだ詳細が発表されていないが、ライブ後に急遽開始されたSHOWROOM配信で、梨加さんのインスタグラムが開設されたことが発表された。少し前からインスタを始めていた守屋さんと共に、お二人の姿がこれからも見られることに、ホッとしているファンも多いことだろう。

 欅坂46や櫻坂46として活動してきた様々なことを糧に、お二人が大きく羽ばたいていく姿をこれからもしっかりと応援していきたい。






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