見出し画像

周囲を巻きこむ力 ~「Dead end」MVを観て【櫻坂46】~

 3作連続で30万枚を超えるセールスとなり、櫻坂46の勢いに陰りがないことが証明された。
 どの楽曲も、聞き込むほどに新たな魅力に気がつく。ふとした時に、歌詞を口ずさんでいる自分に驚くことも度々である。

 歌詞をしっかりと確認しながら、MVを見返していると、欅坂46時代と異なる部分を、いろいろと考えてしまう。

 今回は、「Dead end」のMVを鑑賞しながら、思いつくままに話してみたい。
(完全に主観的な意見なので、軽く読みとばしていただけるとありがたい。)

冒頭~壁に囲まれている場面まで(屋内シーン)

 雑踏の中、センターの森田さんが信号の上に座っている。
 登場するメンバーの中で、唯一、派手な色の服を着て、外套を羽織ることもなく、行き交う人々を見下ろしている。
 人々から指をさされているが、それを気にすることもなく、不敵な笑みを浮かべている姿は、どこか羨ましい。
 ここでつい、「黒い羊」のライブパフォーマンスで、全員から指をさされる平手さんのことを思い出してしまう。世間からの白い目、批難を浴びる様子を描くシーンとして、今回のMVでも「指さし」が登場する。
 「黒い羊」の時には、この他人からの批判を全身で受け止め、苦しみもがく様子が描かれているが、「Dead end」の場合は、上から俯瞰し、どこか馬鹿にしている様子である。
 「まだ、世間のしがらみから解放されていないの?」と言わんばかりの森田さんの表情が、印象的だ。
 感情のままに自分らしく振る舞う彼女に対して、批判がましく、少し嫉妬が混ざったようなメンバーたちのアップが続く。彼女を鋭い目で見ているメンバーたちは、この間もずっとコートを着ている。
 社会のルールに縛られて、窮屈な生活を送っている様子を表しているのだろう。森田さん以外のメンバーの振りは、どこか画一的かつ機械的であり、ただただ繰り返される日常を表しているかのようだ。
 森田さんは、一貫して生き方を変えない。
 そんな彼女の様子が、段々と周りのメンバーたちにも伝搬していく。
 ダイナミックな森田さんのダンスに呼応するように、コートを着たまま激しく踊るシーンから、光の方に駆けだしていく。まるで、光の中に希望を見つけたかのように、全速力で走り出す。

草原の場面(屋外シーン)

 走り出した先は、広い草原である。
 ここでも、「黒い羊」との違いを感じてしまう。「黒い羊」の時は、暗い建物の中から、なぜか屋上に向かって走って行く。苦しい日常という現実から逃げ出したいのであれば、どこか別の場所に行くのが普通であろう。
 しかしながら、黒い羊の主人公は、屋上に向かうことを選択する。
 屋上こそ、まさに行き止まり(Dead end)である。もう、空に向かって飛び出すくらいしか、選択肢がなくなってしまうからだ。
 それに比べると、今回は、かなり健全な解決策を選択している。
 広い別天地ともいえる大草原で、着ていたコートを脱ぎすて、全力で踊る彼女たちの表情や姿は、とても清々しい。
 一見、絶望的に思える日常も、視点を変えて、自分から動くことで、新たに切り拓いていけることを示しているのかもしれない。

 この草原のシーン。メンバーが脱ぎすてたコートが、真横に飛ばされている様子からも、ものすごい風が吹いていることがわかる。
 突風をもろともせず、激しくダンスをする彼女たちの姿は、とても力強い。
 ドローンによる上からの撮影で、広い草原の中で踊っている様子が映し出されているが、同様の画を撮るために、人工的に風を起こしたりするのは難しいだろう。
 ドラマチックなエンディングとして、このシーンは欠かせない。
 MV撮影という大事な場面で、大自然の風すらも味方につけてしまう彼女たち。
 櫻坂46の勢いは、天地あめつちも味方するレベルまで、到達しているのかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?