与えられた楽曲の意味 ~【櫻坂46】センターの人柄による違い~
先日の『1st TOUR 2021』の余韻がまだ残っている。
ライブのセットリスト通りに楽曲を聴くことで、あの感動と興奮を思い出す。ライブの感覚がまた味わいたくて、円盤化されている過去のライブにまで手を伸ばしてしまうのは、自然な流れだろう。
櫻坂46の原点ということもあり、『櫻坂46 デビューカウントダウンライブ!!』(『BAN』type-A特典映像)を改めて鑑賞してみることにした。
ライブのオープニング。森田さんの朗読で始まる。
これは何度観ても素晴らしい。森田さんの肩肘張らないナチュラルな言葉が、MVやCDジャケットの制作場面の映像と共に、どんどんと、こちらの心に染みわたってくる感じが、とても心地よい。
森田さんが演じる、飄々とした自然体の主人公は、坂道合同ドラマ『ボーダレス』でも評判であった。数々のドラマや映画に出演している宮川一朗太さんも、彼女の演技を絶賛している。
元々の性格なのかもしれないが、自然体のまま、自分の気持ちや感情をのせてくることが出来るところが、本当に素晴らしい。
これから始まる「櫻坂46」という物語のある種の「決意表明」でもあるオープニング。
内に秘めた夢と希望、情熱や決意を感じさせつつ、暑苦しくなりすぎない、ちょうどいい塩梅であるところが、上質なオードブルを堪能しているような気分にさせてくれる。
森田さんに与えられる楽曲には、不思議と、何気ない日常を感じさせるものが多い。
日常生活を送っている中で、ふとした瞬間、これからの人生や未来について考えてしまうことは、誰しも経験したことがあるだろう。そんな思いや感情が、森田さんがセンターをしている楽曲に多く描かれている。そのことが、聴き手に共感を抱かせることにつながり、歌詞の中にあるメッセージに素直に耳を傾けるきっかけになっているのではないだろうか。
そんな曲の主人公に、森田さんはふさわしい。彼女の自然な佇まいが、ぴったりと楽曲の世界観にマッチするからだ。
藤吉さんはどうだろう。
彼女は、捉えどころのない不思議な魅力の持ち主である。
教室の片隅で、窓の外を眺めている彼女を見かけたら、つい気になってしまう存在だろう。「何を見てるの?」「何を考えているの?」と思ってしまうような『気になる彼女』というイメージを一番まとっているのが、藤吉さんである。
「欅って、書けない?」の二期生・楽屋隠し撮り回でも、メンバーの輪に入ることなく、一人で目を閉じたまま座っている様子が紹介されていた。
仲間から離れているようでいて、周りの様子を観察しているのが楽しいという心理状態を虹彦先生にプロファイリングされていた。
自分から動くことはないが、いろいろなことに興味があり、実際に行動している人を観察するのが好きというのが、彼女の行動パターンであるのかもしれない。
そんな彼女に与えられた楽曲には、「自分から動くことでしか知ることができないことがたくさんあるよ」「人生の主人公になろう」というメッセージが込められている。
藤吉さんがラジオ番組に出演したとき、「ラジオの仕事がしたいんです」と言いながら、「ラジオ聴いたことないです」という支離滅裂とも思える発言をしたことがあった。ふだんの彼女は、消極的な性格というより、本当の意味で動かないのだろう。本当のところはわからないが、少なくとも、そのようなイメージが藤吉さんにあることは確かである。
そんな彼女が歌うことで、楽曲に込められた「人生の主人公になろう」というメッセージが、真に活きてくるように感じるのだが、いかがだろうか。
グループ最年少である山﨑さんには、「信頼」「愛」「仲間」というテーマが与えられている。
大人が歌ってしまうと、大げさになったり、白々しい感じがしてしまうような壮大なテーマでも、山﨑さんが歌うと、なぜか素直に聞けるから不思議だ。
これは、山﨑さんが、歌っているテーマを、本当に信じているからではないだろうか。このようなピュアな素直さが彼女の魅力であろう。
何かを学んだり、吸収しようとする時、素直であるという性質は重要である。
手本となる相手の動きや表情をそのまま受入れ、自分の身体を使って表現しようとする時、自我や自分の考えなどは邪魔なものでしかない。達人の所作を真似るくらいでちょうどいいのだ。
山﨑さんのダンススキルが、あっと言う間に高いレベルになっていることは、彼女のパフォーマンスからも一目瞭然である。この吸収力の高さが、彼女の素直さを証明していると言えるだろう。
彼女の担当楽曲の中には、男女間の恋愛をテーマにしたものもあるのだが、彼女の年齢と天真爛漫さによって、アンマッチなイメージが強くなり、歌詞の中にある生々しさを薄める効果があるように感じる。これは、女性アイドルが歌うのに、ちょうどいいバランスだと言えるだろう。
秋元氏の歌詞は、メンバーの存在が前提となって生み出される。
このような視点から見たとき、田村さんに「流れ弾」が与えられている意味を考えてみたい。
ふだんの彼女の様子については、メンバーの発言から「ほわほわしてる」「他人の話を聞いていない」などがあがっていた。
本人も、「プーさんになりたい」「プリンセスになりたい」と言っていることから、「ほわっとした大らかな雰囲気」という部分は本当なのだろう。
また、アイドルが好きで、卒業式にAKB風の服装で参加していたことも「そこさく」で紹介されていた。バレーボール部に在籍しながら、推し活をするために、アルバイトをしていたことも、以前のインタビューで話している。
田村さんの人柄を前提として想像してみたとき、なんだかよくわからない間にSNSの渦の中に巻き込まれる「流れ弾」の主人公として、彼女は適任であると言えるだろう。
「美しきNervous」については、一目惚れをしてしまった主人公がテーマであるが、その感情はアイドルに憧れる気持ちにも近い。関さんと並んで、生粋のアイドルファンである田村さんであれば、この歌詞が表現している世界を存分に聴衆に届けることが出来るだろう。
最後は、一期生初のセンター=理佐さんである。
秋元氏にとって、理佐さんは、「ものを言わない」というイメージなのだろうか。彼女のファースト写真集にも、「無口」というタイトルが与えられている。写真集につけられた帯のコメントも、
となっている。これは、「無言の宇宙」の世界と同じものであると言えるだろう。
グループの中で信頼も厚く、メンバー人気も高い理佐さんにふさわしい曲である。
彼女は、決して口数は多くないが、自分の気持ちを伝える能力が高い。「KEYABINGO2」のドッキリ企画で、志田さんと出演していた際、彼女の気持ちを込めて泣く姿が、メンバーたちの涙を誘ってしまうことがあった。
また、メンバーの様子をさりげなく観察しながら、やさしく気遣っている様子もよく耳にする。周囲にいる人たちの気持ちをキャッチする能力も高いのだろう。
そんな理佐さんの様子は、歌詞の中にも描かれている。
理佐さんが好きな四字熟語である「以心伝心」の世界を描いているとも言える「無言の宇宙」は、理佐さんが歌うことで、その説得力が増してくる。
やはり、秋元氏が与える楽曲には、メンバーの存在が不可欠であるということは事実なのであろう。
彼女たちの歌を真に理解するためには、ライブに行って、全身に浴びるように受け止めるのが一番だろう。
来月、日本武道館で開催される『1st YEAR ANNIVERSARY LIVE』で、存分に彼女たちの魅力を堪能したい。
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