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照準合わせ ~【櫻坂46】3rdシングル『流れ弾』の仕上がりが意味するもの~

 『うたコン』(NHK)で、3rdシングル「流れ弾」が披露された。
 全国ツアーを終えたばかりということもあり、ビジュアル、パフォーマンスともに、とてつもない仕上がりである。
 この番組の売りでもある生演奏との親和性も高く、彼女たちの熱量が画面からも感じることができた。
 「むき出しの感情を表現するために、裸足でのダンスに挑戦しています」というキャプテンの解説が加わったことで、彼女たちの野性的な魅力がより一層増していたのではないだろうか。
 元々、衣服や靴などは、社会のモラルや規範を象徴するものであり、それを脱ぎ捨てることで、非日常性が強調される。
 SNS上にある虚像の日常を離れて、生身で交流することが大切であるという「流れ弾」で訴えたいメッセージが、彼女たちのパフォーマンスからストレートに感じられ、観ている側にも大きく響いたのではないだろうか。

 「流れ弾」がラジオで初解禁された時は、正直、歌詞がよく聞き取れなかったのだが、MVや音楽番組、ライブでのパフォーマンスなどを繰り返し観ているうちに、不思議と、歌だけを聴いても、歌詞が判別できるようになっている。
 以前読んだ論文に、このようなテーマのものがあったことを思い出し、探してみた。

 詳細は、上記に譲るが、要約すると、以下のような結論となるらしい。

脳は「意味のある情報」だけを選別して
効率的に感覚野から知覚野へ受け渡す

 人間がもつ不思議な能力の一つであるが、今回の音源がこのような作りになっているのは、「流れ弾」というタイトルと関係しているのではないだろうか。
 「不明瞭な歌詞が段々と聞き取れるようになる」という現象が、何かに似ているという感覚がずっとあり、その答えを探していた。
 意外にも、その答えは、全国ツアーのライブ配信の中にあった。
 2曲目の「Prastic regret」から「半信半疑」の間にあったダンストラック。メンバーたちが、一糸乱れぬ激しいダンスをしている背景に、メンバーを狙う「照準スコープ」が動いている様子が映し出されていた。
 今回のライブが、サスペンス要素満載の映像から始まった流れだと思うのだが、この照準が動いている様子が、歌詞に意識のピントが合う感じに似ていることに気がついた。
 そうか、これかぁ・・・と思いつつ、もしかしたら、今回の音源も、この感覚を表現したくて、あえて、聞き取りにくくしているのでは?・・・などと勘ぐってしまったのだが、これは考えすぎだろうか。
 本来、表題曲である「流れ弾」には、初めて触れる人にも馴染みが良いように、もっとキャッチーな演出が施されるはずである。それにも関わらず、このような味付けでリリースされていることに、制作側の何らかの意図を感じていたのだが、「照準」を表現するためというのであれば、何故か納得できるような気がする。
 どちらにしても、ずっと考えていた疑問が解けたことで、何かスッキリとした自分がいることだけは確かである。

 25人による最後のライブ『1st YEAR ANNIVERSARY LIVE』が、日本武道館で開催される。
 スーパーエースである小林さんの復帰によって、「ジャマイカビール」の初パフォーマンスが観られることが、今から楽しみで仕方が無い。


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