疑問と答えの連鎖 その2
こんばんは、今日数年ぶりにカリオストロの城を観たら、面白すぎて変な声が出てしまった栗山陽輔です。
クラリスやばい。
さて、今日は昨夜に続き「疑問と答えの連鎖 その2」と題しましてお話しさせていただきます。
疑問と答えの連鎖。それが指すこと自体は、物語上において、観客が疑問を抱くことと、その答えが、連鎖的に続いているかどうか、とそのままの意味になってしまうのですが、なんだか文字で伝えるのはとても難しい。というか、直接言葉でお話ししていても、きちんと伝えられるか疑問です。
頑張ります。
映画通っぽい人が、こんなことを言っているのをきいたことありませんか?
「面白い映画かどうかは、5分観ればわかる」
結構極端な意見ですし、場によっては炎上してしまうかもしれないような発言ですが、僕自身はある程度はこの言葉も的を射ている部分もあると思っています。
面白いかどうかの判断というものではなくて、開始から5分経っても、映画として、物語がどういった方向で進んでいくのかを感じさせる疑問(謎)の提示と、結末の暗示がない映画は、観ていると結構しんどいことが多いと個人的には思っています。
今日、僕が観たカリオストロの城を例に出して少し考えてみたいと思います。
言わずと知れた名作と名高いこの作品ですが、こういった視点で考えてみたりするのも、映画を作るものとしては楽しくて好きだったりします。
さて、この映画はまず、ルパンと次元がカジノから大金を盗んで逃げていくシーンから始まります。コミカルで大胆で、見事逃げ切るルパン達。が、すぐに、大金に囲まれているルパンの顔色が曇る(最初の疑問)。その大金がゴート札と言われる偽札であることを説明するルパン(答え)。同時ににこやかな表情に戻り、次の仕事が決まったというセリフ。ここで物語の進むべき方向の提示ですね。(ルパン達は次の仕事でどうなるのかという疑問)国営カジノに出回るほどの偽札をつくる巨大な組織との対決の方向で物語が進むことがここまでで表現される。ここでタイトルが出てOP。タイトルが出るまで2分少々です。信じられない情報量。
その後OPを含めて6分という時間で、ドレスを着た女性が運転する車が猛スピードでルパン達の脇を通り過ぎ、(謎)その女性を追う怪しい男。(謎)すぐさまルパンは女性を追いかける(答えと、映画の結末の暗示)。
という具合にこの映画は情報量がものすごく整理されて作りこまれていて、それでいて観客を疲れさせたりしない構成になっているのです。5、6分観たら、もう観客は夢中です。次はどうなる、次は何が起こる、それをどう解決する、どんな敵がやってくる、誰が何を。と疑問と答えの連鎖が続きます。
そしてそれらのタイミングが絶妙なのですね。観客が疲れないよう、置いていかれないよう、緩急も存在しているのです。
疑問を出し、答えを出しというのが基本ではありますが、観客の好奇心が最も高まると個人的に思っているのは、一つの疑問に対する答え自体が新たな疑問になっているパターンです。これがうまく表現されている作品はここ数年のものだと「進撃の巨人」。
マンガでもアニメでも、おそらく初めてこの物語に触れた時、多くの人は続きが気になって気になって仕方なかっただろうと思います。謎に次ぐ謎に次ぐ謎の連続。でも、謎ばかり並べ立てても本来ならば観客はちんぷんかんぷんになって混乱するだけです。ですが、次々に現れる謎は、これまでの疑問の答えになっていることが多々見受けられます。答えがわかってすっきりしたはずなのに、そこに新たな謎が生まれて、さらに深く興味を抱く。そんな物語の構造になっているのですね。
さてさて、この「疑問と答えの連鎖」というのは、当たり前ですが僕が考えた言葉ではありません。攻殻機動隊シリーズで有名な神山健治監督の著作で語られていることです。
「映画はまだ撮ったことがない」という名著です。ご興味あれば是非。
僕は「なかよくなれたらいいな」の脚本を書いている時期にこの本と出会い、何度も何度も読み返した僕にとってのバイブルのような本です。「疑問と答えの連鎖」のほかにも、映画における「秘密の共有」や「誤解」による「構造の獲得」の話など、目からうろこです。
今でも数か月に一度は読み返しています。
映画というのはもしかしたら感覚的なものかもしれません。
ですが、技術のようなものというのは確実に存在します。
全てのことに理由があり、理由が存在しない瞬間は一瞬たりともないのだと肝に銘じていきたい今日この頃です。
もちろん、僕はそうやって映画を作っていきたいというだけの話です。それぞれの方法があるとは思いますが。
今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは皆さん、よい夢を。
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