初めて女の子と二人で映画館に行った話

こんばんは、栗山陽輔です。今日は僕が「初めて女の子と二人で映画館に行った話」をしたいと思います。
お前は突然こんな場で一体何の話をしようとしているんだと思われるかもしれません。よくわかります。しかしですね、別にただの僕の思い出話をしたいわけではないのです。これからの映画作りについて、今後のエンターテイメントを考えるうえで、とても大切なことをお話しするために、あえてここで僕が「初めて女の子と二人で映画館に行った話」をしたいと思っているのです。この記事で僕が伝えたいことは別に真新しいことではなく、何年も前から言われていることですので、もしかしたらこの時点で僕が何の話をしようとしているか、鋭い方は気づいているかもしれませんが、まずは僕が「初めて女の子と二人で映画館に行った話」にお付き合いください。

あれは高校二年の冬だったかなぁ。冬が終わり、春が訪れかけていた頃の話だったと思います。
僕の住んでいた町は地方都市ではありますが、なかなかの田舎で、映画館というものは近所にはありませんでした。昔からなかったわけではないですが、子供の頃に行った記憶のあるいくつかの映画館は閉館していて、いざ映画を観に行こうものなら、隣町の、かなり遠くのショッピングモールまで行かねばならない。僕の家から電車を乗り継いで30分近く、さらにそこからバスに乗って行かなければならないような場所でした。
相手の子は一つ年下で、違う高校に通っている子でした。
年も違うし学校も違う女の子とどうやって知り合ったかと言えば、ものすごく長い物語があるのですが、僕と彼女との最初の会話は、スーパーの野菜売り場で、並べられているキャベツを見つめていた彼女に僕が「すいません、連絡先教えてください」と声を掛けたのが始まりです(ナンパじゃないよ)。ここに至る経緯を知りたい方はいつか僕に直接聞いてください。

さてさて、それからなんだかんだあって、映画を観に行く約束を彼女としました。二人で遊ぶのは今回が初めてで、集合場所に行くと彼女は制服姿で待っていました。僕も制服でした。違う学校なのに、どうして日曜にお互い制服だったのかよく思い出せませんが、おそらくお互いに私服を見せるのが恥ずかしいからというような理由だったかと思います。若いね。
しどろもどろな会話を繰り広げながらバスに乗り込み、ショッピングモールへと向かいます。
観る映画は事前に相談して決めていました。当時公開していた「ホテルビーナス」という映画です。
主演が草彅剛さんで、全編韓国語の映画でした。当時は草彅さんが役者として注目されていた時期でしたので、僕も彼女も草彅さん主演のテレビドラマが好きだったりして、この映画を選びました。
「ホテルビーナス」はしっとりとして、どこか物悲しい雰囲気の、中々に素敵な映画でした。ほぼ全編モノクロ構成で、味のある映画でした。ちょっとうるっとくるような物語で、僕は今でもこの「ホテルビーナス」は好きな映画の一つです。
いい映画だったし、僕も彼女も楽しめて、本当に印象に残っている一日でした。僕が三十三歳のおっさんになった今でも、中々鮮明に思い出せます。帰る前に彼女の提案でプリクラとか撮ったなぁ。今でもプリクラってあるのかな。
余談ですが、その後の僕は彼女と付き合ったりなんかはしてません。まぁ色々あってですね。うん、まぁそんなことはどうでもよくて。

この長い話の中で、僕が言いたかったのは単純です。「ホテルビーナス」という映画に対して抱く、僕の思いについて。
僕はこの作品を今でも大好きですし、挿入歌であった「Desperado」でEaglesの存在を知り、何枚もCDを購入するほどのファンになりました。(この映画では他の方がカバーしたものでしたが)
「ホテルビーナス」という映画自体も素晴らしい映画です。僕にとって大切な作品の一つです。
「そんなのお前が女の子と一緒に観に行ったから印象に残っているだけだろ!」という声が聞こえてきそうですね。はっきり言いましょう。

その通りなんです。
これが今日の本題です。

誤解なきよう改めて言っておきますが、「ホテルビーナス」という映画はとても素敵な映画です。それは間違いない。
しかしここで考えてみたいのが、もしもこの映画を、今の僕が、過去に観た経験なしに初めて、動画配信サービスで家で一人で観たとしたら、僕の心にこれほど深く残る作品になっていたでしょうか。
いい作品だな。結構面白い映画だったなとは思うだろうと思います。しかし、現実の今の僕が抱いている程の思いには絶対に及ばない。それは当然ながら「初めて女の子と二人で映画館に行って観た映画」だからです。
つまり、これは僕にとって圧倒的な体験価値なんです。

今の時代、モノ消費の時代は終わり、コト消費になっていると言われます。物よりも、体験が大事ってことですね。それ自体はもう何年も前から言われ続けているのですが、実生活に落とし込んだときに、僕の中ではこれほどの差が生まれるのです。
もちろん、僕がしたような体験はたまたまそうだっただけであり、このような体験をクリエイター側が提供することは不可能に近い。しかしながら、観客の体験を意識した提供の仕方はあると思うんです。
エンターテイメントは人を楽しませるために存在します。もちろん作品自体の内容、コンテンツクオリティは重要です。
でも僕の中では「ホテルビーナス」の価値はコンテンツクオリティだけではない。
観客の方自身の物語に介入することは難しいけれど、もしかしたら提供する側自体を物語として提供する方法も体験価値を生む手段になるのではと考えている今日この頃です。
そしてあの子は今どうしているのかなと考えている今日この頃です。

文章の比率の大半が思い出話になってしまっている事実は反省しつつ、今日も最後まで読んでいただきありがとうございました。
皆さんにも、映画に関する思い出ってあったりしませんか?

それでは皆さん、よい夢を。

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