マイナスの欲求とマイナスの積み重ね その2

こんにちは、今日は昨日の続き、マイナスの積み重ねに関してお話しします。

「Ghost of Tsushima」に触れる中で、こういったマイナスに関する話をしているのは、もちろん「Ghost of Tsushima」がマイナスの物語だからです。
昨日の記事の中で、マイナスの欲求には負けてはならない、基本的に常にプラスであるべきだという話をしていたのですが、当然のことながら、例外は存在します。

その一つがこの「マイナスの積み重ね」。
つまりどこまでも落ち続ける、どこまでも人間性を失い続ける、常にマイナスの物語です。
この常にマイナスの物語というのは、常にプラスの物語と同様に人の心を惹きつけます。物語中にある目的を果たすため、ただただ人間性を失い続け、落ち続けていく主人公の姿に、観客は惹きつけられるのです。

「Ghost of Tsushima」は、誇りある武士が蒙古襲来によって多くの家族や友や名誉、ふるさとを失った一人の男が、対馬を蒙古から取り戻すために武士の誇りを捨ててでも蒙古に立ち向かっていく姿が描かれています。強靭な力を持つ相手に対抗するため、武士であることを捨て続け、冥人と呼ばれる存在に落ちていく。その主人公の姿が描かれているのです。

マイナスの積み重ねにより描かれている物語は実は多く存在し、観客の心に深く残る作品となっていることも多いのです。
問題作、邪道と言われることもあります。

マンガで言えば、「デスノート」とかもそうですね。
主人公の夜神月はどこまでもマイナスを積み重ねていく。

海外ドラマで言えば、代表的なのは「ウォーキングデッド」や「ブレイキングバッド」。

映画で言えば、「シャイニング」なども実はマイナスの積み重ねだと僕は思っています。去年の「ジョーカー」は、予告編のコピーが「心優しい男はなぜ悪のカリスマになったのか」と秀逸なものになっていますが、これは完全なるマイナスの物語の示唆となっていますね。

とまぁこういった名作も多いのですが、当然ながらマイナスの積み重ねにも弱点のようなものは存在します。
プラスの欲求です。つまり、昨日書いた、常にプラスとしたものと、完全に反対の構成になるので、同様にプラスの欲求が迫ってくることが多く、ちょっとでもプラスの流れを持ってくると、途端に中途半端な時間が流れてしまうのですね。

個人的には、少し前に話題だったゲームの「ラストオブアス2」はマイナスの積み重ねの物語のはずなのに、ところどころでプラスの展開に運んでしまい、中途半端な印象をうけたユーザーが多かったのではないかと思っています。


そして、このマイナスの積み重ねは、現代社会においては絶対に守らなければならない宿命があります。

ハッピーエンドが許されないのです。

当然なのですが、マイナスの行為というのは社会においては許されることではありません。多くの場合は客観的に観れば単なる犯罪行為です。犯罪行為だからこそ、犯罪を犯してまでも達成しなければならない目的とその思いが描かれ、胸を打つことも多いでし、社会派的なメッセージを持たせられることもあるかもしれない。
けれども、人間性や尊厳を捨ててまで行動した主人公は、完全なるハッピーエンドを迎えることは許されないのです。
しかるべき報いを受けなければならない。それは物語上であっても、宿命のようなものなのであります。

マイナスの積み重ねの結末は悲劇です。

ですが読者は、観客は、その主人公たちが、一体どんな最後を迎えてしまうのか。それに興味をもち、見守っているのですね。

というわけで、僕は先週から毎日「Ghost of Tsushima」の世界に浸り、主人公の境井仁が、一体どんな結末を迎えることになるのか、そこに惹きつけられているのでございます。


そんなこんなで、昨日から物語のプラスとマイナスについて書いてきました。

こんなこと、センスのある人なら感覚で理解しているんだろうなと考えている今日この頃です。

才能のない僕は、ひとつひとつ吟味して、くみ取っていくしかないなぁ。この話も別に絶対正しいわけでもないでしょうが、何かの折にどこかで役に立つかもしれないと信じ。

それでは皆さん、よい夢を。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?