マイナスの欲求とマイナスの積み重ね

こんばんは、最近は「Ghost of Tsushima」というゲームを毎日遊んでいるため、この作品に触れているなかで、今日は物語のマイナスについて考えていきます。
「マイナスの欲求とマイナスの積み重ね」というテーマです。

さて、突然マイナスと言っても何が何だか伝わるわけがないと思うのですが、物語におけるプラスとマイナスという話になると、よく言われるのが「感情曲線」というものです。

ここはサクサク敵を倒してカタルシスを得るからプラス、そうこうしている間に自分の家族が誘拐されていてマイナス、それを取り返して敵も倒してプラス、みたいに横軸に経過時間、縦軸に感情の上がり下がりをグラフ的に示したものが感情曲線です。
今日の話は、その感情曲線とは少し違って、いい言葉が思いつかないのですが、言うならば、物語における根幹、主軸のグラフのようなものだと言えばいいでしょうか。ざっくりと簡単に言えば、物語の根幹、主軸は多くの場合主人公にあたりますので、縦軸に主人公の気持ちや、置かれている状況が上がっているか、下がっているかを示したグラフです。

わかりやすくいうと、主人公(もしくはそれに相当するもの)が人間的に上昇しているか下降しているかを示したものですね。

少し補足的な話になりますが、物語について考察した話の中には、こういったグラフがいくつも存在します。それに応じてグラフの曲線は当然ながらまちまちであり、至極わかりづらいです。何についてのグラフなのかをしっかりと判断することが大切ですね。

さてさて、ここからが本題。マイナスの欲求とマイナスの積み重ねについて。

マイナスの話になっていますが、この物語の主軸、根幹のグラフは基本的に常にプラスになっていなければいけないと僕は思っています。絶対ではありませんが、基本は常にプラスです。これはマンガで考えるとわかりやすい。

ルフィは常に「海賊王になる」という動機を抱いて、どんな困難にぶつかっても挑み続けていますね。
悟空は常に「もっと強い奴と戦いたい」から、宇宙まで飛び出すし、破壊神とだって戦うし、最近では別の宇宙へでも行きます。

もしルフィが、「もう海賊王はいいや。なんか強い奴ばかりで怖いし、俺はこの島で平和に暮らすよ」とかなったら物語は進みませんし、読者の心は離れてしまうかもしれません。悟空が「戦いなんてやってられねぇよ」となっても同様ですね。
だから主人公は常にプラス。ですが、ここにマイナスの欲求が迫ってくるのです。

悟空はフリーザ戦で伝説のスーパーサイヤ人になることで格段に強くなり(プラス)、フリーザを倒した。その後、悟空はスーパーサイヤ人になることが当たり前になり、さらなるプラスを求められるのですね。だからスーパーサイヤ人2なんていうちょっと作者の投げやりっぽい感じも含んでいるかもしれないネーミングのものが登場するのです。その後も3、GTでは4、超ではゴッドとかブルーとか当初のスーパーサイヤ人なんてもう全然強くないところにまでプラスを積み重ねているのです。

これがドラゴンボールの凄いところなんですが、もし鳥山先生が物語の「マイナスの欲求」に負けていたとしたら、次のような展開になっていたかもしれません。

フリーザ戦の後、悟空がスーパーサイヤ人になれなくなる展開です。
つまり、一度得た力を失う展開。これは所謂マイナスなのですね。
何故こういった展開にしたくなる欲求が生まれるかというと、フリーザとの戦いで悟空がスーパーサイヤ人になったあの高ぶりを、あのカタルシスを、もう一度得ようという思いがやってくるのです。だから、一度力を失うことによって…という展開が頭に浮かんでしまうのですね。

しかしながら、このマイナスの欲求には負けてはいけないと僕は思っています。

少年マンガの中でも、人気作だったのに、主人公が力を失う、もしくは物語の方向性がマイナスに移ってしまう事によって、読者が離れてしまったケースというのは多く存在します。これはマンガに限らず、映画においても同じです。

最近はちょっと少なくなった気もしますが、人気作の続編が面白くないという場合、このマイナスの欲求に負けているケースがあります。ヒーロー映画だったのに、続編が始めった瞬間にヒーローの力を失っている、もしくはヒーローを辞めてしまっている、というものですね。

最初の作品で、平凡な主人公がヒーローになるというようなプラスを描いていた作品に多いです。ヒーローになるというカタルシスをもう一度得ようとするのですね。

しかしそうなると観客の心は離れてしまいます。
何故なら、もう観客は、その主人公がヒーローになることを知っているからです。一度マイナスを持ってきてプラスを仕掛けても、ただフラストレーションが溜まるだけでプラスにはならない。だから人気作の続編を作るのは難しいのですが…

ここまでをまとめますと、作り手は「マイナスの欲求には負けてはならない」ということです。

ちょっとここまでで結構長くなってしまったので、「マイナスの積み重ね」については明日また書いていきたいと思っている今日この頃です。

色々難しいですね。

それでは皆さん、よい夢を。


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