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天皇賞・春 有力馬血統考察


ドゥレッツァ

 ドゥラメンテと『サザンヘイロー』の血は好相性の関係。この組み合わせをもつ牡駒は、10頭中7頭が勝ち馬になっています。これまでの代表産駒はホープフルSを勝ったドゥラエレーデでしたが、本馬が菊花賞を勝ってトップに立ちました。
 母の父のモアザンレディと、2代母の父のデインヒルが馬力に長けた血統。豊富なパワーで肉体の消耗に耐えるような、タフさで勝負する構成です。配合のかたちとしてはタイトルホルダーに近いかもしれません。ただしタイトルホルダーほど無骨ではなく、切れ味も兼備した上品な雰囲気をまとっています。このあたりはノーザンファームの生産馬らしさと言えるでしょうか。
 牝系の奥は底力に長けた血脈が豊富。潜在的なスタミナ値に優れています。ただし前進気勢が旺盛なほうで、マラソンランナーのような燃費の良さはありません。道中でしっかりとリラックスさせてあげないと、スタミナの消費量が大きくなってしまいます。菊花賞の勝利については、ルメール騎手の神業によるところが大きかったのは間違いないでしょう。戸崎騎手の折り合い技術をうたぐるわけではありませんが、この馬を3200mで操るのは簡単ではないと思います。


テーオーロイヤル

 前走出走時の馬体重が458キロ。牡馬としては小柄な部類です。しかも見た目は数字以上に細身に映ります。無駄肉を削ぎ落としたマラソンランナー体型。いかにもステイヤーというタイプです。
 母の父のマンハッタンカフェは、現役時代に菊花賞、天皇賞・春を勝った馬。テーオーロイヤルの長距離適性は、ここに由来するという見方もできます。ただし種牡馬としてのマンカフェは、突進的なスピードを伝えやすく、スタミナ血統というイメージはありません。個人的な見解として、本馬の場合はマンカフェの影響より、2代母の父・クリスエスの恩恵が大きいのだろうと考えています。本馬のおじにあたるメイショウカドマツも、ダイワメジャー産駒ながら中・長距離を主戦場にしていました。この一族はクリスエスのロベルト的なスタミナが伝わりやすい血統なのでしょう。
 前走の阪神大賞典は圧巻の内容。このメンバーとなら何度戦っても負けないと思わせるくらいの勝ち方でした。その一方で、思った以上にしっかりと勝ちにきたなという印象も受けます。GⅠを見据えた余裕残しの仕上げという雰囲気には感じませんでした。ステイヤーズS、ダイヤモンドS、阪神大賞典と転戦。3000mを超えるレースへの出走は、今回の天皇賞で4走連続となります。大一番でどこまで状態をキープできているのか。そこが一番のポイントになりそうです。


タスティエーラ

 「ナスルーラ×プリンスキロ」血脈や「ロイヤルチャージャー×プリンスキロ」血脈のような、柔軟性を伝える血が豊富。父方には5本(ミルリーフ、サーゲイロード×2、ローズバウワー、ナタシュカ)、母方にも3本(ローソサエティ、ミッテラン、セクレタリアト)あります。おもしろいのは、父方は欧州血統の柔軟性が中心であるのに対し、母方は北米・ボールドルーラー系の柔軟性であること。全体の色合いは柔軟性で統一されていながら、使っている血は微妙に違うのです。このおかげで血の煮詰まりがありません。
 また父・サトノクラウンと祖母・フォルテピアノは、ノーザンダンサー系の血を濃く内包。その一方で母の父・マンハッタンカフェの部分だけは、ノーザンダンサーが1滴もありません。詰め込むところと抜くところのメリハリがきいており、マンカフェをとても上手く使った配合だとも思います。
 脚さばきが少し淡白で、スピードはワンペース。どちらかと言えば母方の米血気質が濃くでています。3ハロンの切れ味勝負ではなく、早めにエンジンを掛けていき、4ハロンのスピードの持続戦に持ち込むかたちが理想です。
 前走の大阪杯は前有利の流れを4番手で先行。理想的な競馬をしていたと思います。そうであるにもかかわらず、何の見どころもなく惨敗。敗因がまったく読めない不可解な負け方でした。先週みたニュースによると「輸送後のカイ食いが悪く、前日の朝夕ともに8割は残していた」とのこと(記事はこちら)。考えられるとしたらこれでしょうか。


サリエラ

 母のサロミナが「ニニスキ≒デインヒル」2×3のニアリークロスを内包。増幅されたパワーで、体幹に芯を通す構成です。前脚を掻き込んでピッチを上げる仕草に、その特徴が見て取れます。また父のディープインパクトはニニスキの血と好相性。24年4月現在、該当馬の77.3%(17/22頭)が勝ち馬になる、非常に信頼度の高いニックスです。母の血統内でニニスキを増幅していることが、単なる個性にとどまらず、ディープの配合的な起爆剤としても機能している点が魅力です。
 前述のようにパワーは根づいているものの、馬体重が430キロ前後の細身体型。筋肉量が豊富な馬ではありません。走りの雰囲気から、ステイヤー型のタイプではないかと感じます。肉体面の負担を抑える意味でも、長めの距離をゆったりと運ぶほうが向いているのかもしれません。
 前走のダイヤモンドSは、長距離界のトップホースであるテーオーロイヤルに肉薄する好内容でした。ただし相手は東京のスピード勝負に向いたキャラではありません。また斤量も実質こちらが1キロぶん恵まれた状態。着差こそクビですが、まだまだ力の差を感じる結果だったとは思います。しかしテーオーロイヤルはそこから稍重の阪神大賞典を使ったうえで、ここへ向かってきました。一方の本馬はしっかりと間隔を開けて、本番に備えています。お互いの状態次第では、逆転の可能性もじゅうぶんに考えられるのではないでしょうか。エンジンの掛かりが遅い馬なので、4コーナーの下り坂を利用してスピードに乗せていける京都外回りはベストです。


ブローザホーン

 父のエピファネイアは牡駒に対してスタミナを色濃く伝える種牡馬。また3代母のアサーティンも、母としてダイヤモンドS2着のジョーヤマトをだすなど、スタミナに優れた牝祖です。要所となる部分にしっかりとスタミナが入ることで、長めの距離で強いタイプにでました。母の父のデュランダルは現役時代に短距離~マイルで活躍した馬ですが、血統自体はパワーとスタミナを豊富に含んだ構成。本馬においてはエピファや牝系のスタミナを支える“底力”として機能しているようです。母方は全体的にハイペリオンやサンインローの影響が強く、かなり重厚な血統構成となっています。
 前走は初めて3000mに挑戦。序盤で折り合いを欠く場面はありましたが、なんとかやり過ごして3着に好走しました。向正面でワープスピードに内から潜られ、ラチ沿いのポジションを譲らなければ2着もあったでしょうか。ステイヤー適性は高いと思います。脚さばきはエピファネイアらしい しなやかさを兼備。直線が平坦のほうが、能力を発揮しやすい馬かもしれません。渋った馬場で4勝を挙げているように、過酷な環境は大歓迎です。力のいる洋芝や、時計の掛かる京都などが理想です。


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