見出し画像

皐月賞 有力馬血統考察

シンエンペラー

 母のスターレッツシスターが送りだした産駒は、シスターチャーリー(北米GⅠ7勝)、マイシスターナット(仏米で重賞3勝)。ソットサス(凱旋門賞などGⅠ3勝)、そして本馬。大物を何頭も輩出した、超優秀な繁殖牝馬です。ミスワキ3×3という強烈なクロスを内包。これが繁殖能力の源泉となっています。本馬は父がシユーニなので、ソットサスの全弟になりますね。
 全体の血統構成が非常に重厚。日本のスピード競馬に対応できるのか心配になる字面です。ただし実馬は脚さばきがしなやか。走法は父のシユーニに似ており、コジーン由来の柔軟性が伝わっています。競走能力は母のおかげ、日本競馬への適性は父のおかげでしょう。なおシユーニ産駒は16頭がJRAで出走。牡馬は本馬やヴィズサクセス(モルガナイトS)など10頭中7頭が勝ち馬で、合計17勝を挙げています。それに対して牝馬は6頭が出走して、勝利はゼロ。傾向が極端ですね。
 前走の弥生賞は勝負どころでもたつき、コスモキュランダを捕らえきれず2着。心身ともに幼さがあり、いまは器の大きさだけで戦っている状況でしょう。本当に良くなるのは先だと思います。ただしホープフルSのときも書いたのですが、今年の3歳牡馬は完成度と素質の両方を高く兼ね備えた馬が少ない印象です。これなら現状でも勝負なりそうな、そんな雰囲気すらあります。この世代はちょっと難しいです。


ジャンタルマンタル

 父のパレスマリスは現役時代にベルモントS(ダ12F)を勝った馬。その弟にはアイアンバローズ(ステイヤーズS)、ジャスティンパレス(天皇賞・春)がいます。この血統の最大の長所がスタミナにあることは間違いないでしょう。それだけに本馬がデイリー杯、朝日杯とマイルで強い勝ち方をしたことに驚きはあります。
 ただしパレスマリスはベルモントSのほかにも、メトロポリタンH(ダ8F)を勝っており、スタミナ一辺倒というタイプではありません。また本馬は上半身こそ筋肉質ですが、脚先の捌きはしなやか。走りの雰囲気が3代父のスマートストライクに似ているように感じます。配合をみると、ミスタープロスペクター4×5、シアン6×6のクロスを内包。スマートストライクの構成要素を強めに刺激しています。この部分が表面化しやすいかたちであることはたしかです。スマートストライクはマイラーとして活躍した馬。この影響が強い競走馬だと考えれば、マイルでのパフォーマンスについても納得できます。
 前走の共同通信杯は超スローの瞬発力勝負。2番手の馬が32秒6の脚を使う、かなり特殊なレースでした。本馬は序盤で折り合いを欠き、そこで我慢させる必要があったぶん、積極的な競馬ができず。 位置取りの差が響いての2着でした。本質的には瞬発型ではなく、ペースはもっと流れてほしかったですね。血統的にパワーはあるはずなので、中山は大丈夫だと思います。2000mも対応範囲でしょう。


メイショウタバル

 父のゴールドシップは欧州血統の影響が強い種牡馬。スタミナと持続力を持ち味とします。その反面、動きが緩慢な産駒が多く、後方からもっさりと追走するタイプも少なくありません。しかし本馬はその欠点が薄く、逃げる競馬もできる競走馬。タフさはそのままなのに、先行力も兼備しているってチートじゃないですか(笑)
 前走・毎日杯のパフォーマンスはすごかったですね。道中の緩みは少なく、芝も重馬場。スムーズに逃げられたとはいえ、楽な展開だったわけではありません。そうであるにもかかわらず、最後まで脚色が衰えることなく逃げ切り勝ち。上がり3ハロンは本馬が最速。しかも2位の馬より0秒7も速い脚を使っています。能力の絶対値はかなり高いのではないでしょうか。おもしろい個性派がでてきた予感がします。
 父のゴールドシップにくわえて、2代母の父がダンスインザダークなので、距離が伸びたほうがよさそうに思える字面です。しかし個人的には、案外と距離はもたないタイプではないかと考えています。例えばガイアフォースも父がキタサンブラック、2代母父がダンスインザダークなのにマイラーじゃないですか。それに近いイメージです。


レガレイラ

 母の父のハービンジャー、2代母の父のダンスインザダークがともにスタミナ寄りの血統。牝馬らしい先天的な素軽さと、ウインドインハーヘア牝系がもつ特有のスピードでカバーしており、バランスは悪くありません。それでも少し重厚さ勝っている印象です。
 前走のホープフルSはスタートこそ速くはありませんでしたが、直線だけで前の馬たちをまるごとのみ込んでしまいました。仕掛けたときの反応も良く、文句なしの内容です。デビュー時よりも胸筋にたくましさが増し、雰囲気も一変。全身を使ったど迫力の走りが目を引きます。馬自身の成長にくわえ、状態の良さも伴って、充実した様子が伺えます。
 年始の時点で、日本ダービーへの挑戦もあると陣営はコメントしています。ダービーというのは、将来の種牡馬候補の価値を高める意味で、もっとも重要なレースといっても過言ではありません。そんな貴重な機会を潰す可能性が生じるにもかかわらず、それでもノーザンファームが牝馬を送り込もうとしている。その意図をどう考えるべきでしょうか。あくまでも個人的な推測ですが、もしかしたら今年は3歳牡馬よりも、種牡馬・スワーヴリチャードに箔をつけることを優先したのかな? と思うところはあります。
 ストライド幅が広く、本質的には中山向きの器用さに欠けたタイプ。最大出力のレベルが相当高い次元にあるだけに、簡単に御せるような馬ではありません。急遽乗り替わりになったことについては、正直大きな不安はあるでしょう。実際にダービーに挑むかどうかはさておき、まずは皐月賞をどう戦うかが最優先事項ですね。


ジャスティンミラノ

 キズナ×母の父イクシードアンドエクセルの配合は、該当する3頭すべてが勝ち馬。「ストームキャット≒パトローナ」3×3によって、スピードを引き出していることがポイントでしょう。またイクシードアンドエクセル内に含まれる『ロモンド』の血はキズナと好相性。これも親和性の高さを生み出す大きな一因となっているように思います。先週の桜花賞で鬼脚を使って3着になったライトバックも、おなじキズナ×イクシード配合ですね。
 キズナは牡駒に対して重厚なスタミナを伝えやすい種牡馬です。ところが本馬はキビキビとした脚の回転と、しなやかな捌きが目につきます。父の重厚感はあまり感じません。脚の回転を生み出しているのは、母の父イクシードアンドエクセルが伝えるデインヒル的な要素でしょうか。しなやかな捌きについては、祖母がもつシャリーフダンサーと、ダルシャーン、そしてサーゲイロード4×3の影響だと思われます。デインヒルのパワーとシャリーフダンサーの切れ味を源泉にしているという点で、どこかハービンジャー産駒のような雰囲気をまとった競走馬です。
 前走の共同通信杯は2番手で先行しながら、上がり3ハロン32秒6の瞬発力を使って完勝。高い決め手性能をもつことを証明しました。ただし超スローペースという特殊条件であった点は考慮すべきでしょう。タフな流れになったとき、おなじ脚を使えるかはわかりません。個人的な印象としては、厳しい展開ほど決め手が削がれやすいタイプではないかと思っています。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?