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【POG考察】フルオブサクセス

父:Almanzor
母:Full of Beauty
母父:Motivator


緻密な相似配合

 5代血統内で発生しているクロスは3種類。一番濃いものでゴーンウェスト5×4ですから、それほどアクの強い配合ではありません。ただ6代目以降の奥まで眺めると、いろいろなクロスが詰まっていることがわかります。
 

ゴーンウェスト5×4
アンコミッティド5×5
ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ4×5(※ニアリークロス)
カロ5×5
ザイザフォン=マリアコヴァ5×5(※全きょうだいクロス)
シャーペンアップ6×5
アホヌーラ6×6
タムレット7×6・6


 血統表の奥まで探ることで、たくさんの魅力的なクロスが見つかる緻密な構成。全体的にみれば主要な血のほとんどを押さえた、父母相似配合馬です。

 父母相似配合の一番の利点は、父と母の優れた能力をシンプルに引き出せること。血統全体をクロスでまんべんなく刺激するため、両親の資質を受け継がせやすいのです。本馬は海外で生産された競走馬。父と母がどれくらい優れているのかピンとこない方もいるでしょう。細かいことはいいんです。わざわざ海外から連れてくる馬が、三流の雑草血統ってことはないはずですから大丈夫ですよ・・・たぶん(笑)


たくさんの牝馬クロス

 本馬は牝馬クロスを豊富に抱えています。具体的に言うと、アンコミッティド5×5、モフィダ6×6、スペシャル6×6、タムレット7×6・6などです。僕のなかのイメージとして、一般的な種牡馬のクロス(例:ゴーンウェスト5×4など)に比べて、牝馬クロスはより恩恵が大きいと考えています。理由をざっくりと書くと・・・
 

①繁殖牝馬が送り出す仔は生涯でも多くて10頭前後。そこから実績を残す子孫が現れて、血統表に名前を残せること自体が、偉大な牝馬であることを意味する。

②種牡馬のクロスは、それ単体が実績を残して血統表に広まれば、容易にクロスを成立させることができる。それに対して牝馬クロスは、異なる複数の子孫が実績を残して、それぞれ血統表に広まっていないかぎり実現しない。複数の枝葉を作れる牝馬は、それだけ繁殖能力が高いことの証左と言える。

※僕個人のイメージです


 近年はヌレイエフとサドラーズウェルズを通じて、スペシャルの血をクロスさせるパターンは珍しくありません。ただ本馬のように、牝馬クロスがこれだけ多く詰まった配合は貴重です。個々の効果がどんなものか、細かいことはいいんです。なんかとんでもない一発を出しそうな配合だなって、それだけを考えて、一撃必殺がでることに期待しましょう。


ボトムライン上の牝馬クロス

 先に挙げた牝馬クロスのうち、モフィダ6×6については特に意味のある仕掛けとなっています。というのも、この牝馬クロスは“ボトムライン上”でクロスしているからです。ボトムラインとは、母→祖母→曾祖母・・・とつづく直牝系のラインのこと。本馬は6代母にモフィダをもち、それを牝馬クロスで増幅しています。

 先ほどのお話と重複しますが、繁殖牝馬というのは種牡馬と違って、生涯で多くの仔を残せるわけではありません。そのなかで代々牝系を繋ぐということは、それ自体がとても尊いことです。本馬の場合、母のフルオブビューティーがイタリアオークスの2着馬ですから、活力もちゃんと備わっています。それを支える牝祖(モフィダ)をクロスで増幅することが、マイナスになることはないでしょう。


モティヴェイターの増幅

 母の父にモティヴェイターをもつ産駒は、17頭がJRAでデビューして、そのうちの10頭が勝ち馬。タイトルホルダー(GⅠ3勝)、ソールオリエンス(皐月賞)、ヴァンドギャルド(富士S)、ステラリア(福島牝馬S)、メロディーレーン(4勝)などがでています。いまの日本において、モティヴェイターの血はトレンドのような存在と言っていいでしょう。本馬も母の父にモティヴェイターをもつ競走馬です。

 しかもそれだけではありません。本馬は「ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ」、ゴーンウェスト、シャーペンアップ、アンコミッティドの血をクロスしており、モティヴェイターの構成要素のほとんどを刺激した構成なのです。モティヴェイターの効果がどんなものか、細かいことはいいんです。トレンド血統を増幅した配合、それだけでいけそうな気がするじゃないですか。


 血統表をみて久しぶりにゾクゾクっとさせる馬と出会いましたね。木を見て森を見ず人間にとっては、たまらない配合です。熱く語ってしまいましたが、みなさんは「なんかよくわからんけど凄そうな血統」だと感じてもらえればじゅうぶんです。僕もそんな感じでしか理解してないので(笑)


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