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阪神JF 有力馬血統考察

ボンドガール

 ダイワメジャー牝駒は一般的に、ヨーロッパ血統基調の配合馬が活躍しやすい傾向があります。ところが本馬の母は、シアトルスルー5×4、ミスタープロスペクター5×4などアメリカ血統が豊富。これまでのセオリーとは少し違うタイプです。もっと言うと、アメリカ血統であれば馬格に恵まれたほうが筋肉の質を活かしやすいのですが、本馬は前走時で454キロ。大柄でもありません。この馬が活躍するようだと、ダイワメジャー牝駒としてはいろいろな意味で珍しい存在になりそうです。
 走りにはしなやかさがあります。大柄でないことの副次効果とも言えるでしょうか。ただセリフォスの登場あたりから感じていたことですが、ダイワメジャーは種牡馬の晩年になって、以前とは違うタイプの活躍馬を多くだしますね。今回のレースに一緒に出走するアスコリピチェーノもおなじようなところがあります。
 前走のサウジアラビアRCはスタートで出遅れ。道中も終始折り合いを欠いてしまいました。溜めれば鋭い切れ味を使えますが、そのためにはいかに前進気勢をなだめられるかが重要になりそうです。そういう点でもセリフォスと良く似ています。


コラソンビート

 父のスワーヴリチャードは、ゆったりと柔らかみのあるストライド走法が持ち味でした。ただ本馬は小気味よく脚を回転させるピッチ走法。父には似ていません。おそらく本馬は、母の父・オルフェーヴルの特徴を受け継いでいるのでしょう。東京の重賞勝ち馬ではありますが、中山で機動力をいかす走りも見てみたいタイプです。
 母の血統内には、サンデーサイレンス、デヴィルズバッグ、フサイチペガサスという3本のヘイロー内包血統が存在します。本馬はそれをサンデーサイレンス3×4によって継承。素軽いスピードを主軸に据えています。小柄な牝馬ということもあり、オルフェーヴル特有の鈍重な面が悪目立ちしていないのが好印象です。そのぶんオルフェの底力は表面化しておらず、それほどタフなタイプではないかもしれません。前走はレコードタイムで決まる高速馬場。本馬の強みがいかしやすかったのではないでしょうか。
 ちなみに母の父オルフェーヴル産駒で、オープン以上で結果を出しているのはドゥラエレーデ(ホープフルS)、本馬、ナナオ(もみじS)の3頭。いずれも祖母の部分に『デヴィルズバッグ』の血を併せもつという共通点があります。とても興味深い傾向ですね。


サフィラ

 デインヒルが伝える強靭な筋肉で、ハーツクライの緩さ引き締めた配合。本馬の場合、母のサロミナが「ニニスキ≒デインヒル」2×3で増幅しているため、上記の特徴を強めています。その傾向が顕著にでていたのが全兄のサリオスでした。体幹の強さを得ることで、競走馬としてのバランスを高め、成長曲線の上がり幅を前倒し。若駒のころから完成度が高く、2歳時は同世代を完全に圧倒していました。ただし本馬はそこまで兄に似ていません。兄のような馬格はなく、非力さを残す肉体。このきょうだいは、どちらかと言えば古馬になって本格化する馬が多い印象です。むしろサリオスだけが特殊だったのかもしれません(笑)
 前走のアルテミスSは、2歳戦らしい直線の決め手勝負。良い走りでしたが、チェルヴィニアには完敗でした。まだ線が細く、パワーを推進力に昇華しきれていません。現状でだせる精一杯の力は見せましたが、血統の良さを真に発揮できるようになるのは、まだ先のよう思います。ただ先週の1週前追い切りは良く映りました。状態は前走より上向いていそうです。


アスコリピチェーノ

 ダイワメジャーはノーザンテーストの影響を受けた種牡馬。サンデー系のなかでもパワーに優れたマイラー型です。一方、母の父のデインヒルダンサーは、現役時代に6~7FのGⅠを勝ったスプリンター。パワーで突進力を生み出すことで、スピードに昇華させる屈強な血統です。父のパワーを、母の父のパワーによってさらに後押しした、とてもタフな配合と言えます。またダイワメジャーらしいタフな競馬をするうえで、底力のサポートが欠かせません。その点で、2代母の父にサドラーズウェルズがあることにも大きな意味があります。母方にデインヒルダンサーとサドラーをセットで併せもつダイワメジャー産駒といえば、4年前にこのレースを勝ったレシステンシアとおなじ。そういえばどっちも騎手が“北村”ですね(笑)
 母のアスコルティは、現役時代に1200~1400mで2勝を挙げた馬。8戦中4戦で逃げる競馬をしています。血統の字面も加味すると、レシステンシアのような後続をふるい落とすスタイルが似合うタイプです。しかし実馬の走りは、想像していたものとは違いました。むしろ柔軟性があり、しなやかなフットワークが目を引きます。また良い意味で前進気勢が薄く、気負って走るところがありません。将来の完成図はさておき、現状は決め手をいかす競馬ができます。これは阪神・外回りを戦ううえでは好都合でしょう。ボンドガールの考察でも書きましたが、最近のダイワメジャー産駒は底力特化というより、切れ味を兼備した上品なタイプの頑張りが目立ちます。


ステレンボッシュ

 シーザリオ、エアグルーヴ、ウインドインハーヘア、ダンシングキイ・・・。歴史的な名繁殖がずらりと並ぶ血統表は、なかなか壮観です。エピファネイア×母の父ルーラーシップの組み合わせは、5頭中4頭が勝ち馬。該当馬は多くないですが、今のところ安定した成績を残しています。本馬が最初の活躍馬になるかもしれませんね。
 エピファもルーラーも、長めの中距離を得意とするスタミナ寄りの血統です。また本馬の場合は、2代母の父のダンスインザダークもスタミナ型。字面だけみたらかなり重厚です。牝馬らしい素軽さと、牝祖であるウインドインハーヘアのしなやかさのおかげで、鈍重さは薄めではあります。とはいえ本質的にマイルでガツンと弾けるタイプではないでしょう。速い流れを無理に追いかけるよりは、自分なりのペースで脚を温存して、中距離馬としての切れ味をいかしたいところ。前走の赤松賞のような、中盤で少し緩むくらいの流れが理想です。


そのほかの重賞レースはInstagramで考察しています


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