ロードカナロア考察(6) ~ヌレイエフをクロスした馬がしてはいけないこと~

★特別な恩恵をもたらす血

 ロードカナロアの体幹を引き締め、アーモンドアイの能力に大きく寄与している『ヌレイエフ』。実はこのクロスをもつ活躍馬はアーモンドアイだけではありません。ジョーカナチャン(アイビスSD)、レッドルゼル(コーラルS)、エイシンデネブ(オパールS2着)、ルガールカルム(アネモネS)なども出ています。

 また直接クロスだけでなく、ヌレイエフと血統構成が4分の3一緒のおじにあたる『サドラーズウェルズ』や、『フェアリーキング』を母方からもってきて、近親クロスを作るパターンにも注目。前者にはサートゥルナーリア(GⅠ2勝)やキングオブコージ(目黒記念)が、後者からはステルヴィオ(マイルCS)、ミッキーワイルド(霜月S)が出ています。どうやらロードカナロアにおいてヌレイエフを増幅することは、柔と剛のバランスを整える以上の、特別な影響をもっているようです。

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★個別パターンの短評

 ここからはいくつかの増幅例を取り上げ、簡単に考察します。

・ヌレイエフの直接クロス
 前述のとおり、アーモンドアイ、ジョーカナチャン、レッドルゼル、エイシンデネブ、ルガールカルムなどの活躍馬がいます。パワーを伝える血ではありますが、それを長く維持させる持続力にも長けているため、イメージとしては「重厚で力強い切れ味」という表現のほうが近いかもしれません。アーモンドアイの豪快なフットワークは、まさにヌレイエフ的といえるでしょう。直接クロスではこの資質を大きく引き出す効果が期待できます。活躍馬のほとんどが牝駒であることは覚えておきたいところです。
・サドラーズウェルズ
 ヌレイエフのおじにあたります。母の父にボールドリーズンを挟んでいることがヌレイエフとの違いで、それ以外の4分の3はおなじ構成。この血を用いて近親クロスを作ることでも、ヌレイエフの資質を増幅することができます。
 ヌレイエフのような持続力(重厚な切れ味)はなく、そのぶんパワーとスタミナが濃いタイプです。そのためヌレイエフを直接クロスするパターンと比べると、もっと重々しいスタミナが発現しやすくなります。ロードカナロア牡駒で2400mを超える長距離重賞を勝っている馬は、サートゥルナーリア(神戸新聞杯)とキングオブコージ(目黒記念)の2頭いますが、どちらもこの血をもっているの興味深い点でしょう。
 ただ、その重々しさがカナロア本来の切れ味を打ち消してしまうこともあり、実は相性自体はさほど目立ちません。
・フェアリーキング
 ヌレイエフのおじであり、サドラーズウェルズと同血の全弟です。こちらはサドラーとは違い、軽量級ボクサーのような機敏さをもっています。瞬発的なパワーで加速力やギアチェンジ能力を向上させることができるため、スピードにも影響を与えます。
 この血をもつカナロア牡駒は、9頭中5頭が勝ち馬。ステルヴィオやミッキーワイルドを出すなど好成績を残しています。一方、牝駒の勝ち馬は7頭中3頭にとどまっており、2勝馬が1頭いるだけで目立った成績は残していません。性別によって相性の良さは変わるようです。


★ヌレイエフをクロスした牝駒がしてはいけないこと

 アーモンドアイをはじめとする、ヌレイエフを直接クロスしたロードカナロア牝駒の活躍馬たち。じつは血統表をみると、ひとつの共通点があることがわかります。


 それは「ミスタープロスペクターの血をクロス “していない”」ということ。ヌレイエフをクロスしたカナロア牝駒のうち、オープンクラスで実績がある馬はみな、ミスタープロスペクターのクロスをもっていないのです。

 下記の成績データは、ヌレイエフをクロスしたカナロア牝駒を「同時にミスタープロスペクターのクロスをもつ」かどうかで分けたもの。いずれの成績もミスプロをクロスしていないほうが優秀です。

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 芝の一走当賞金がバグったような数値になっているのはアーモンドアイ1頭の影響です😅 そこは考慮する必要はありますが、それを差し引いても大きな違いが出ています。逆にミスプロを同時にクロスしている馬は、ダートで2勝を挙げた馬が2頭いるだけ。これは一体どういうことでしょうか。


★ミスプロのクロスが及ぼす影響

 おなじヌレイエフのクロスもちなのに、ミスプロのクロスを併用するかどうかで、ここまで違いがあらわれる理由。それはおそらく、ミスプロを絡めることが「キングマンボの増幅」に繋がるからでしょう。キングマンボは父ミスタープロスペクター×母の父ヌレイエフという構成。つまり両方の血を同時にクロスすると、キングマンボの包括的な増幅へと変わってしまうのです。


★ヌレイエフとキングマンボの違い

 ヌレイエフはパワーとともに持続力を兼備しており、重厚な切れ味を伝えます。一方、そのヌレイエフを母の父にもつキングマンボは、パワーを伝える点こそ共通するものの、父のミスプロからアメリカ血統らしい淡白なスピードも受け継いでいます。その影響で、ヌレイエフの持続力の要素は薄れ、突進的なパワースピード色が濃くなっています。


★カナロア牝駒が求める資質

 このことから考えるに、ロードカナロア牝駒がヌレイエフの補強で求めているのは、持続的な切れ味なのでしょう。ヌレイエフだけをクロスして、それを引き出すことができれば大きな恩恵となる。しかしミスプロを同時にクロスして、キングマンボの増幅にすり替えてしまうと、欲しかったヌレイエフの要素が薄れてしまい効果半減。このような作用がミスプロの有無によって起こっているようです。

 ただ、そこさえ注意すれば、ヌレイエフのクロスは大きな恩恵をもたらします。ポイントをしっかりと押さえたうえで活用したいところです。


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