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NHKマイルC 3ステップ考察(予想から回顧まで)

 この投稿はNHKマイルCを考察した記事です。有力馬考察・馬券予想・レース回顧の3ステップにわけて更新していきます。
 

※その他の重賞については、InstagramおよびFans’に投稿予定です
https://www.instagram.com/kurigasila_keiba(考察)
https://www.fansnet.jp/kurigasila-kaz(回顧)


 

1:有力馬考察
 

★セリフォス

 母の父のルアーヴル、2代母の父のフリーダムクライ、どちらも現役時代に欧州の中距離を走った馬。重厚な底力がダイワメジャーの突進力を支えています。ダイワメジャー産駒といえば、メジャーエンブレムやレシステンシアなど、タフな消耗戦で後続をふるい落とす競馬が持ち味。ただ本馬の場合、配合の真の良さはまだ眠った状態です。その代わりに祖母がもつボールドビダー、セクレタリアトの「ボールドルーラー×プリンスキロ」的な軽さが表面化しています。
 前走の朝日杯FSは、スタートでポジションを取りに行ったことで掛かってしまいました。包まれる危険性が高い枠だっただけに、この選択は仕方がありません。2着は悔しい結果ではあるものの、完成しきっていない馬がここまでの競馬をしたことに対して、正直驚いたところもあります。若駒の仕上げが上手い中内田厩舎による育成の賜物でしょうね。
 ダイワメジャーの子としては未完成ですが、今回においては一概にマイナスとは限りません。柔らかみを残す今だからこその、しなやかなフットワーク。東京の決め手勝負ではむしろ強みになり得ます。


★ダノンスコーピオン

 母の血統内には主張力の高い血が希薄。ロードカナロアとの組み合わせでも、唯一「ヌレイエフ≒サドラーズウェルズ」の近親クロスが発生しているくらいで、それ以外は目立つ要素がありません。そのぶん「ヌレ≒サド」の効果がダイレクトに反映された競走馬と言えます。
 エンジンの掛かりが遅く、急坂でやや空回りする印象があります。これは祖母の部分に2本もつラウンドテーブルの影響がありそうです。フットワークに緩さを纏っており、それがスピードの乗りを悪くしているのでしょう。ただサドラーのパワーがしっかりと効いているおかげで、坂を上りきってから更に一伸びできるのが強みです。新馬戦を勝ったときも、萩Sでキラーアビリティを交わしたときも、そして前走のアーリントンCもすべておなじパターンで仕留めています。
 今回の東京も直線に坂が待ち構えるコース。ただゴール直前の残り200mに坂がある阪神と比べ、東京の坂は残り460m地点。余力があるうちに坂を迎えるためスピードが落ちづらく、上がりきってから再加速して、ラウンドテーブルの惰性走行を活かすことができます。共同通信杯で大敗したとはいえ、あれは体調の問題でしょう。本質的には得意なコースではないかと見ています。


★インダストリア

 リオンディーズが伝えるハビタット的なしなやかさと、ハーツクライが伝えるトニービンの柔軟性が融合。体を大きく使ったフットワークが目を引きます。また父方のセックスアピールと母方のマイビューパーズによる米血の同調、さらには2代母の父・アレミロードによるパワーがしっかりと根づいており、非力さは感じません。均整の取れた走りは好感がもてます。
 血統的に見て、マイル適性が高いようには感じません。本来は1800~2000くらいがちょうど良いのではないでしょうか。ただ前進気勢が強く、折り合い面が課題となります。前走の弥生賞はそろっとスタートさせる慎重な競馬。しかし1コーナー手前でふらついたマテンロウレオに驚いたのか、スイッチが入ってしまいました。かなり行きたがっており、上手な競馬ができたとは言えません。結局後方から大外をぶん回して上がり最速の脚を使うも、スローペースで前が残る展開に泣いて5着。いろいろな不運が重なったレースでした。気性的なことを考えると、速い流れに自然と身を任せられるマイルが、現状はベストなのかもしれません。


★ジャングロ

 父のモアザンレディはキングスビショップS(ダート7F)を勝つなど短距離で活躍した馬。本馬のスピードに大きな影響を与えています。母の父・ブロードブラッシュは突進力が持ち味。極端な競馬が嵌まりやすい血という印象があります。本馬の場合は“逃げ”として表現されたわけですが、このあたりは森厩舎の馬らしいですね。
 血統表を4分割して見ると、父父・サザンヘイローが「ロイヤルチャージャー≒ナスルーラ」4×5。父の母・ウッドマンズガールも同5・5×4・5。そして母の父・ブロードブラッシュもまた同4×4・5。血統の4分の3にロイヤルチャージャー≒ナスルーラの血がたっぷりと詰まっています。それに対して、祖母・プライムインヴェスターのところだけはロイヤルチャージャーもナスルーラもゼロ。代わりにハイペリオン6×5・5になっており、欧州のスタミナが主体です。メリハリのきかせかたにも好感がもてます。
 前走のニュージランドTは後続が大人しいのをいいことに、中盤で12秒1、12秒0とラップを緩める楽なかたち。余力を残して直線へ向かい、そのまま逃げ切りました。正直、レースレベル的に物足りなさを覚えます。


★マテンロウオリオン

 母がキングカメハメハ×トニービンによるホーンビームのクロス。柔らかさが主体となっています。この影響で、ダイワメジャー産駒ではあるものの、あまり突進力には秀でていません。気性的には前向きさがあり、先行することはできます。ただタフな競馬でしのげるほど、まだ体は出来上がっていない印象です。このあたりはセリフォスと似たところがありますね。勝利したシンザン記念も、前走のニュージランドTもマイル戦としては穏やかな流れ。本馬にとっては力を出しやすい条件だったと思います。
 ただ前走に関してはジャングロの楽逃げが嵌まり、中団から差す競馬が裏目に。しかも仕掛けどころで前のデルマグレムリンの手応えが悪く、大きく外を回してスパートせざるを得ませんでした。気性面を考えて積極的な競馬はさせたくなかったにしても、乱暴だったように感じます。展開に恵まなかったことを考えれば、内容自体は勝ちに等しいものでしょう。


2:馬券予想


◎ソリタリオ
 前走の敗因がいまいち掴めませんが、道中の行きっぷりが良く見えなかったので、渋った馬場の影響があったのかもしれません。モーリス×母父キンカメは好相性の組み合わせ。母系にフランシスエスを内包するのはピクシーナイトやジャックドールとおなじ。GⅠを勝ってもまったく驚かない好配合なので、一発に期待してみます。

○インダストリア
 ハーツクライを母の父として上手く活用した配合。スピード寄りのエフフォーリアと見ることもできます。前走はロスの大きい競馬で力を出し切れませんでした。気性的にマイルのほうが走りやすそうですし、スムーズな競馬なら好勝負でしょう。 


3:レース回顧
 


 ジャングロがまさかの出遅れ。押し出されるようにトウシンマカオが先頭に立ちました。そこにキングエルメス、オタルエバーが意欲的に並走したことで、ペースを緩めることができない状態。前半の1000mのタイムは57秒4。これは過去10年において、昨年に次ぐ2位の速さです。絶対的な先導役を失ったことが、このペースを生み出してしまったのでしょう。

 先行馬は脚色が鈍り、中団~後方にいた差し馬で決着しています。もうひとつの見方として、純度の高いマイル戦になったことで、強いマイラーだけが残ったという捉え方もできるでしょうか。内を通った馬は総じて伸びあぐねていた印象です。


ダノンスコーピオン(1着)
 スタートを決めて中団から追走。前の馬で壁を作りつつ、闘争心を溜め込みました。直線は外から力強い脚どりで先頭に立つと、追い込むマテンロウオリオンを凌いで勝利しています。
 考察でも書いたのですが、ラウンドテーブルの影響で緩さがあり、坂でやや空回りするところがあります。しかしこの馬の良いところは、サドラーズウェルズのパワーが効いているおかげで、坂を上りきってからもうひと伸びできるところ。東京の坂がゴールから遠くにあり、余力があるうちに坂を迎えることができます。そのためスピードが落ちづらく、上がりきってからの再加速、ラウンドテーブルの惰性走行を最大限活かすことができるのでしょう。

マテンロウオリオン(2着)
 スタートがあまり上手くいかなかったこともあるでしょうが、無理に付いて行かずに後方2番手から。ちょっと極端ではありますが、大きく下げて外に出し、直線の切れ味に賭けました。ダイワメジャー産駒に適したかたちとは言えませんが、この馬は母方の柔かさがあり、あまりダイワメジャーらしくないタイプ。将来的な完成形はさておき、現状はこういう競馬が合っている印象です。

セリフォス(4着)
 体質面よりも先に気性面がダイワメジャーになりつつありますね。タフな競馬で踏ん張りきれない現状のなか、掛かり気味に先行。やや噛み合いませんでした。外が伸びるなか、この馬だけラチ沿いを攻めたわけですが、どうだったのでしょうね。福永騎手のコメントによると「芝は外か最内が良かった」とのこと。馬場的な影響はなかったのかもしれません。ただ「最後は周りに馬がいなくて伸びあぐねていました」とも。この馬以外はみな外へ外へと誘導したことで、併せるかたちになれなかったことは痛かったです。

インダストリア(5着)
 弥生賞は前半1000mが61秒1。それに対して今回は57秒4。気性的にマイルのほうが走りやすいとはいえ、対応に苦労したのではないでしょうか。
 そう考えると、昨年のシュネルマイスターが、62秒6の弥生賞から56秒9のNHKマイルCを勝ったことはすごいなと思いますね。

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